表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/27

27

「ふふ、隆司さま。そこにいらっしゃいますか?」


「うん。ここにいるよ」


俺たちは今、北欧のメイベルの故郷で暮らしていた。


ベッドに横たわっているメイベルの手を握る。メイベルは瞳を開けることはない。


「そこにいるのはファティですか?」


「…メイベル、ファティはもう三十年も前に…ここにいるのはリーゼ。ファティとマームの子供だよ」


「ク~ン」


リーゼがメイベルの頬を舐めると、メイベルは重くなった腕でリーゼを撫でた。


「まぁ…それではマームは?」


「マームも既に…」


メイベルと出会って六十年。俺たちは既によぼよぼの老人だった。子供が生まれ、孫も生まれた。今はメイベルと俺の周りに子孫が集まって最期の瞬間を看取ろうとしていた。


色々なことがあった。常に順風満帆とはいかなかった。とてつもない喧嘩もしたし、離れて暮らすようなこともあった。それでも、俺たちは幸せだったと思う。


「ク~ン…」


「リーゼ…」


ファティもマームは犬にしてはかなり長く生きた方だ。それでも最期は老衰で空に旅立った。


そして、ファティの子犬たちも立派に成長した。


三匹は野生に戻った。やっぱり人間社会で生きていくにはどうしても窮屈に感じてしまったそうだ。


それでも、今でも俺たちの傍で支えてくれているリーゼのような子もいる。昔は俺をガジガジと噛んできたリーゼも立派になった。


俺はリーゼの頭を撫でる。


「そうですか。私の長かった旅ももうすぐ終わるのですね…」


「メイベル…」


「隆司さま。私は貴方に会えてとても幸せでした。数千年の『不老不死』よりも、私は隆司さまと過ごした数十年が一番幸せでした」


「そ、そんなの、俺もだよ!」


メイベルを握る手に力がこもる。メイベルと出会ったおかげで俺は幸せだった。


「ふふ、それでは先に行ってます。ファティとマームにも会いたいですしね…」


「ああ。俺もすぐに行くから…」


「ふふ、愛しています隆司さま。私を殺してくれて、あ…りが…と…う」


メイベルの腕が力無く俺の手からこぼれ落ちた。


「お礼を言うのは俺の方だよ…!」


俺は下を向いて涙を流す。メイベルはそれ以来一度も眼を覚まさなかった。そして、最後は満足そうな表情で空に行った。


━━━


━━



「ク~ン…」


「ああ…リーゼか…」


メイベルの死からどれくらい時間が経ったのだろう。すぐにあっちに行く予定だったのに存外生きてしまったらしい。


「ふふ、結局最期まで一緒にいてくれたね、リーゼ」


「ワン!」


「鳴き声もお父さんそっくりだ…」


もう顔も思い出せないかつての愛犬。名前も出て来なくなった。ベッドに横になる俺に顔を寄せて甘えてくるリーゼを撫でる。リーゼもすっかり老犬だった。


「俺にもやっとお迎えが来たらしい…」


この時をどれだけ待っていただろう。


ようやくメイベルに会えるのだ。


━━━


━━



少しだけ目を開くと、風が心地よい草原の上に立っていた。


「ここは…?」


俺はもう自力で立てるような状態じゃなかったはずだ。


「ふふ、隆司さま。お待ちしておりました」


「ッ」


振り返らずともわかる最愛の人の声。俺は涙を流しながら、振り返り、彼女に抱き着いた。


「会いたかった…!」


「ふふ、私もですよ。お疲れ様でした」


ありったけの力を込めてメイベルに抱き着く。すると、


「ワン!」「ウォン!」


「ファティ!マームまで!」


かつての愛犬たちが俺の元に駆け寄ってきた。懐かしいもふもふに囲まれて涙が止まらない。


「ふふ、また一緒に暮らしましょう」


「ああ…ああ!」


「ワン!」


「ウォン!」


俺たちの物語は終わりだ。それでもこの幸せは永遠に続いていくだろう。

『重要なお願い』

面白い!先が気になる!筆者頑張れ!と思った方はブックマークの追加と広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして評価していただけると嬉しいです!

感想なんか書いていただけたらさらに嬉しいです!

執筆のモチベーションになるので、どうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お疲れ様です
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ