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エッセイ諸々

佐藤書店(仮)の想い出

作者: 山家

 年末が押し迫ってくると、今年は何があったかな、ということが私の頭の中で過ぎります。

 勿論、世間的には色々と大きな出来事がありましたが、個人的な出来事で挙げるならば佐藤書店(仮名)が閉店したのが、最も大きな出来事でした。


 私の記憶の中で、一番、最初に行った本屋が佐藤書店です。

 当時は商店街の中に有って、いつか本を読むのが好きになった私は、今だったら怒られそうですが、小学3、4年生になった頃には、親が商店街で様々な買い物をしている間、佐藤書店で本を探して、立ち読みして時間を潰すのが、月2回程の日曜日の定番でした。

(その頃は、昭和の時代でしたから、土曜日の午前中は学校でしたし、父も土曜日は働いていましたから、親と買い物に行くとなると必然的に日曜日だけでした。

 それに親の日々の買い物は近場で済んでおり、商店街まで行くのは月2回といったところでした)


 そして、私が中学時代に、佐藤書店は商店街の店を閉店して、国道沿いに自前の駐車場を備えたそれなりの地域の大型書店に変わりました。

(今になって考えてみれば、商店街の店が徐々に閉店しだしており、佐藤書店のオーナーは商店街での商売に不安を覚えて、店の移転を決断したようです)


 尚、佐藤書店は親の話によれば、私が産まれる前からある古い本屋で、地元の小中高校には様々な参考書等を卸してきた店だそうで、私が小学校の頃はそうなんだ、としか思っていませんでしたが。

 中学、高校に私がいる頃は、佐藤書店はそういった経緯がある為か、私の地元には当時、小規模な書店まで含めれば4軒程、書店がありましたが、高校受験や大学受験の問題集、参考書は、私やその周囲の面々にしてみれば、佐藤書店で買うのが当然と言った有様で、それこそ大学受験の模試まで、佐藤書店で申し込んだ覚えさえあります。

(今だったら、信じられない話と言われそうですが、私が高校生の頃は、個人で大学模試(だったと覚えています)を申し込む場合は、書店を介して行うというのが、当たり前だったのです)


 更に私が大学に合格した直後の頃まで、他の書店は既にコミックにカバーを掛けていたのに、佐藤書店はコミックにカバーを掛けておらず、問題集や参考書を買う序でに、コミックを拾い読みして気分転換をしたのを懐かしく思い出します。


 ですが、その一方で、主に佐藤書店にお世話になったのは、結果的には高校の頃まででした。

 大学生から社会人になり、私は地元にはいましたが、通っている大学のある市には佐藤書店より大きな本屋が複数あり、社会人になってからも大学のある市で就職して、転勤することはありましたが、基本的に大学のある市内で働き続けたからです。

 そして、仕事の行き帰り等で寄る書店となると、どうしても大きい事とかも相まって、佐藤書店以外の職場のある市の大型書店に行くのが何時か当然になってしまいました。

(序でに言えば、住居と職場の行き帰りの間に寄れる場所に、佐藤書店は無かったのもあります)


 そして、気が付けば、10年余り前に詳しい事情は分かりませんが、佐藤書店は更なる移転をして、かつての店を売り払って処分し、雑居ビルの中に入っていました。

 後継者がおらず、オーナーが高齢化したことから、元気な間はやれるだけ書店をやりたいという事情から、店を小さくしたらしいと友人から噂として聞きました。


 その果てに終に今年、佐藤書店は閉店という事態に。

 友人から聞いた時に本当か、と疑って、確認をしに行き、書店の扉に「長年のご愛顧云々」という張り紙を見た際に、時の流れから仕方ない、と達観した想いが何故か沸いたのを、今、改めて思い起こしてなりません。

 本当に名残惜しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 懐かしいです。昭和の本屋さん。 令和の今、昭和よりゴッソリ減って寂しい物。 ①町の本屋さん。 ②町の喫茶店。 ③町の酒屋さん。 [気になる点] そういえば、地方都市のデパート。その町の象…
[気になる点]  二度も移転しつつ書店を続けていた佐藤書店は店主さんの人生そのものだったのでは(・Д・)一度目の移転で駐車場付きの大型店になったのは高度経済成長期の立身出身の如く本人もさぞや痛快だった…
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