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第9話 お金がない

「「「 えぇ~~~!! 」」」


 サルバさん達がダイアウルフを倒したのが私だと言うと、一斉に私に視線が集まり驚いた声が上がった。


「おい、嘘だろ」

「そんなことが…」

「冗談だよな」

「可愛い…」

 まあ可愛いだなんて、ここ十年以上言われたことがないわ。

 そういえば私の容姿はどうなっているのかしら?

 生前の様に肩まで黒髪が延びているけど、鏡が無いから顔が分からないわ。


「さあ、レナさん。ダイアウルフの素材を売ってくれるんだろう」

「えぇ、そうです」

「それならこっちへ来てくれ。ワイアット、場所を借りるぞ」

「かまわないさ。使ってくれ」

 小太りの男の人に声を掛けライアンさんに案内されるまま、他の部屋のドアを開け中に入る。

「ここは解体場だ。ここに出してくれ」

「はい、では出しますね」

 そう言うと私はストレージからダイアウルフを取り出す。


〈〈〈〈〈 ドン!! 〉〉〉〉〉


 なぜか私は無意識に軽く、ジャンプした。

 そして周りのみんなも一拍遅れてジャンプする。


「「「 おぉ~~!! 」」」


 後から着いて来た冒険者達が、ダイアウルフを見て歓声を上げる。

「あれがダイアウルフか?!」

「初めて見たぜ」

「見た時点で普通は生きて帰れないからな」

「しかもあんな大容量のマジック・バッグは見たことがない?!」

「それだけで食べていけるぜ」


「ワイアット、素材の解体と買取を頼む」

「ほう、これは立派なダイアウルフだな。もう討伐は終ったということかライアン」

「あぁ、このお嬢ちゃんが倒したそうだ」

「なんだと?!冗談を言え。そんなことは不可能だ」

「しかし事実だからな」

「そうか、まあお前がそう言うなら、そうだろう。しかしこれは…」

「どうした?」

「いや傷口がないのさ」

「傷口がない?」

「あぁ、おかげで毛皮は無傷で極上だ。しかも滅多にダイアウルフなんてお目にかかれないからな」

口から剣が貫きました、なんて普通は思わないからね。

「じゃあ、頼んだぞ」

「あぁ、任せておけ。お前達やるぞ」

「へい、親方!!」

 何人かいた職人さんが声をあげた。


「解体が終わるまでには数時間かかる。それまでに登録や事後処理をしておこうか」

 そうライアンに言われ再びギルドの受付側に戻る。


「パウロさんでしたな。今回のことは迷惑をおかけした。依頼料はお返し致します」

「そんな、いいのでしょうか」

「ギルドにも面子がありますからな」

「冒険者のお二人にも依頼は成功したと言うことで達成報酬を出そう」

「あ、ありがとうございます」

「レナさんだがダイアウルフを倒した功績は大きい。素材買取の他にこの街の領主様から報奨金が出ることになるだろう」

「私は素材を買取って頂ければ…」

 お金が無いんだよ~!!


「そう言う訳には行かないんだ。街を救った英雄だからね」

 ま、まさか馬車に乗ってパレードとかしないよね?


「この街の統治者マドック公爵にお伺いを立ててからになる」

「それはどのくらいかかりますか?」

「時間は掛かるかもしれん」

「それは困ります!!」

「急ぐ用事でもあるのかね?」

「いいえ、そうではなく先立つものがないのです」

「??」

「無一文なんです!!今夜の宿代もありません~~」


 ギルド中にレナの声が響き渡った。


 ぷっ。

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