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【77】ご褒美くれるってよ


『そういえば、女神様にイヴィル・ファミリアを倒したこと伝えないといけないよな?』


『確かに、そうですね。今、伝えておきます』


 ふと思い出してネイアに言えば、すぐに両目を閉じて『交信』スキルを発動してくれた。


 ファミリアを倒したのだから、もうリヴァイアサンを派遣してもらう必要はない。早めに報告しておいた方が良いだろう。


 女神様と『交信』しているネイアを見守っていると、程なくして俺にも声が届いた。『神託』スキルが発動したのだ。


『アクアよ、話は聞いたぞえ』


『女神様』


『まさかイヴィル・ファミリアを倒してしまうとはのう……。正直、妾も予想外じゃったわ』


 どうやら女神様にしてみても、俺がイヴィル・ファミリアを倒したのは予想外だったらしい。女神様の声音には素直に称賛の色があった。


『さすがは妾の使徒じゃ。ようやった』


『ありがとうございます。で、女神様?』


『何じゃ?』


『正直な話、倒すより足止めする方が難しかったんですけど?』


 そこはちょっと文句を言いたい。足止めに拘ってたら、敗北していたのは間違いなく俺だっただろう。


『そうかえ?』


『そうなんです』


『そうか。ならば足止めを命じた時に、倒してしまっても構わんのじゃぞ? とでも付け足しておけば良かったのう』


『それはやめてください!』


 俺を殺す気か! っていうか女神様は天然で言ってんの? ここは死亡フラグという概念のない世界であるはずでしょ?


『ふむ? まあ、何にせよ、じゃ。お主が妾の想像以上に働いたのは事実。使徒になる時の約束でもあるし、何ぞ褒美でもやろうかのう』


『マジっすか!?』


 女神様の言葉に一瞬でテンション上がったわ!


 いったい何をくれるのだろうかとワクワクしてしまう。


『うむ。何ぞ欲しいスキルでもあるかえ?』


 そういえば、給料はスキルでの支給だったな。あの時は金なんか持ってても意味なかったし。ちょっと後悔だぜ。


 今はアトランティスにいるし、金の使い道もありそうなんだよな。「亜空間生成」も覚えて、金の持ち運びの問題も解決しているし、無意味に買い物とかしてみたいからお金はちょっと欲しいぞ。


 となると、楽して簡単に稼げるようなスキルが良いだろうか?


 むむぅ……こいつは悩むぜ。


『……今はちょっと思いつかないから、後で貰っても良いですか?』


『構わんぞ。決まったら、我が巫女を通じて連絡してくると良い』


『はい、ありがとうございます』


『うむ。それから、リヴァイアサンは引き上げさせるからの。ではな』


 という感じで、女神様との会話も終わった。


 再びアリオンたちの状況を千里眼もどきで確認すると、こちらもほぼほぼ戦闘は終わりつつあるようだ。今は逃げ惑うサハギンたちの掃討戦に移っている感じ。


 で、肝心のアリオンはというと――、


『ん? 何してるんだ?』


 一隊を率いて、かなり前の方へ進んでいた。


 場所はファミリアがいた辺りで、何か呆然としながら頭上――海面の方を見渡している。


 そこには今、凍らせて砕いた氷山の欠片たちが無数に浮かんでいた。


 ほら、水より氷の方が軽いから、氷山を粉々に砕いた結果、全部海面に浮いちゃってるんだよね。どうもアリオンたちはそれを見ているらしい。


 何をしているのか聞いてみるために、俺はアリオンに『念話』を繋いだ。


『――アリオン』


『……この声は、使徒、様ですか?』


『そうだよ。んで、アリオンはそこで何してるんだ? 何か上見てたけど』


『いえ……ここにイヴィル・ファミリアがいたと思ったのですが、来てみると何処にも見当たらず……魔力反応も消えていまして……』


 なるほど。そういえばそうだ。


 アリオンたちはファミリアを探していたらしい。俺が倒したってこと知らないもんな。


 俺はアリオンたちを安心させてやるため、得意気な声で教えてあげた。


『ふふんっ! イヴィル・ファミリアなら、俺が倒したから安心して良いぞ!』


『使徒、様が……? イヴィル・ファミリアを、倒した……のですか?』


『そうそう!』


『では……この、上に浮いている氷は……?』


『ああ、イヴィル・ファミリアを凍らせて砕いた破片だな』


『…………そうですか。それは、ありがとうございます、使徒様』


『おう! まあ、気にすんなよ! これでも使徒だからな!』


 実際には海霊石の力を借りたし、一発でもファミリアの攻撃をまともに喰らってたら死んでただろうけどね。


『それで、今、使徒様はどちらに? 監獄の中からイヴィル・ファミリアを倒したのですか?』


『いや、流石に監獄の中から倒すのは無理だ。だから最初は直接戦ってたんだけど、倒せそうになかったから、途中から海霊石の力を借りちまった。あ、そういや悪い』


『どうされたのです?』


『イヴィル・ファミリアを倒すのに海霊石の魔力を使っちまったから、アトランティスの結界が一時的に消えちまったみたいなんだ。それに黙って牢屋を出ちまったし』


『ああ、なるほど。そういうことですか。……ということは今、使徒様は神殿にいらっしゃるので?』


『そうだぞ?』


『でしたら監獄には戻らず、少し、神殿で待っていていただいてもよろしいですか? 私ももうすぐ、アトランティスに戻りますから、その後そちらに出向きます。色々と直接話したいこともありますので。それから使徒様が監獄を勝手に出たと広めるわけにもいきませんので、とりあえず、使徒様がイヴィル・ファミリアを倒したことは話さないでいてくれると助かります』


『ん、そういやそうだな。分かった』


 俺は頷き、念話を切ろうとして――ふと、思い至る。


 警鼓の音が響いてから、俺は転移で直接サハギンたちのところに行ったからすぐに戦闘を開始できたのだが、アリオンたちはそうではないはずである。


 しかし、それにしてはずいぶんと戦場となった海域に辿り着くのが早かったな、と思ったのだ。


 普通、あのように装備も整った軍隊を動かすには時間が掛かると思うのだが。


『そういえば、兵を率いて出てくるのずいぶん早かったな? 演習でもしてたのか?』


『…………ええ、まあ、そんなところです。では』


『ああ、うん』


 アリオンが素っ気ない感じで言う。


 忙しい時に余計な話をしてしまったか?


 俺は後で聞けば良いかと、その時は特に気にすることなく念話を切った。




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