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忘却戦記  作者: 一久一茶
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忘却戦記【Ⅰ】第6話〜行方知らずの旅〜

こんにちは、一久一茶です!


ついに始まるナミとの旅を前にして、村人と楽しいひとときを。そんな内容です。

6




 帰ってきてから今日まで、あまり村の人と話せなかった。私も昔のように話すには離れていた期間が長いし、相手も経緯が経緯だけに中々きっかけがなかったのだろう。


 そう思うと、アルコールの力はすごいと思う。今まで遠巻きに見ていた人たちとも、昔の話で盛り上がれる。私自身も楽しくなって、ついついエールが進む。いつもは呑んでもあまり影響がない体質だけど、今日ばかりは酔ってるのかな。


「ロウミィ! 呑んでんなぁお前。おかわりは?」


 ヤコブも出来上がってるな。幼馴染と呑むなんて初めてだから、こんな感じになるのか。初めて知った。


「もう一杯貰おうかな」


「いいねえ、流石業火姫。呑みっぷりまで超一流だなおい」


「や、やめてよその呼び方。結構恥ずかしいんだからね。というかお姉さん、このダル絡みしてくる客どうにかしてよー」


「ふぇ? なんでわたしがこのよっぱらいのことみなくちゃいけらいのよー。わたしはいまこのにく食べるのでいしょがしいの!」


 あ、そういやこの人お酒激弱だった。チクセウ。


「誰が酔っ払いだって? あんたこそ呂律回ってねぇじゃねえか、あ? ロウミィの送別会だぞ、よし、お前にこれもやるよ」


 ドン、とエールのピッチャーがお姉さんの前に。いや、呂律回ってない人にエール勧めてどうするのさ。


「わーい、やこぶくんふとっぱらー! どんどんのむじょー、おー!」


 しかも当の本人も喜んでるし。そろそろ色々出そうだな、上から込み上げるものが。


「おー! 飲めや飲めや! ってか太っ腹ってそこまで腹は出てねぇよ」


「ぶー、そういういみじゃありましぇーん。ばつげーむでやこぶくん、おぬしにこれをしんぜよぉー」


「ちょっと、程々にしないとダメだよ。二人とも明日仕事でしょ? お姉さんも弱いんだから・・・・・・って、聞いてないなこれは」


 ここは早く離れた方がいいかもね。そのうちカオスオブカオスなバカ二人に絡まれる。


「これこれ、ええ加減にせんといかんぞお二人さんや」


 騒がしさがピカイチなテーブルを見かねて、村長がわざわざたしなめにきた。遠いテーブルだったのに悪いな。ただ、エールのジョッキを持ちながらたしなめても説得力がなくならないのは流石です村長。


「それはそうとお二人さんよ、ロウミィをちょいと借りるぞい」


 お、助けにきてくれたのか。流石村長。


「ひっく、いいですよ村長! もっと飲ましてやって下さいよ」


「ちょっとやこぶん、よそみしてるばぁいじゃにゃいよ! わたしのさけがのめないのかぁー!」


 お姉さんに至ってはもはやヤコブをロックオンして村長なんて目に入ってないな。てかヤコブんって、普段仲良いのかなこの二人。


 これ以上賑やかさなどないほどのテーブルを離れ、長老たちのテーブルへ。流石、ここは嗜む感じの飲み方だなぁ。


「お前さんも楽しんでるようで何よりじゃ、ロウミィよ」


「ええ、帰ってきてから昔みたいに話す機会がなかなかなかったから楽しいよ」


 テーブルつく一人ひとりに目を配る。なんだ、みんな手を休めてこっちを見てるな。まぁ、色々気づいた村長から聞いたのだろう。


「そうかい。なにぶん久々だからの。皆もいくらロウミィとはいえ都会の匂いがして話しかけづらかったのじゃろう。それこそギルドのお嬢ちゃんがここにきた時も悩んどったな。何故かギルドマスターは来てすぐ溶け込んでおったがな」


 長老たちは無口なこともあるが、この場でもまだ私に緊張してるのかな。無口のまま。


 そういやギルドマスターを見てないな。執務室を出てから、かれこれ二時間は経っている。もしや寝てるんじゃなかろうか。いや、私の手続きに手を焼いてくれているのだろう、そう信じておこう。


「ワシらもな、お前さんを応援しとる。それに、今回のこと、実は分かっておったのじゃ。早くからの」


 やっぱりバレてたのかな。私の帝都に戻る、もしくはガードンに移るという目標が、全く別のものになったことに。


「まぁ、薄々私も思ってたよ。村長にはバレてるんじゃないかって。でも、早くからっていつから?」


「そうじゃの。時期で言えば三ヶ月前からかの」


 ん? 三ヶ月前でいうとまだ私が帝都での最後の討伐依頼を受けるかどうかってところだ。


「ああ、ちょいと説明せんと分からんじゃろうて。ワシらもな、急に知らせが入ったのじゃよ、龍神様から」


 龍神様の知らせ、占いのことだ。村長は別として、長老たちは龍神信仰の中心であるハービィーで神の声を聞く役を担っている。最近はそうでもないけど、ここ百年ほど前までは村の運営にも占いが大きく関わっていた。


「ワシらとて日々の慣例みたいなもんでな、占いは続けてはいるが、さほど重視しとらんかった。そもそも、『待ち人帰還す』としか来なかったもんでな。だが、程なくしてロウミィが帰ってくると聞いたときにはビックリしたもんじゃよ」


 その後、ギルドに問い合わせたらしい。何があったのか、いつ頃帰ってくるのか、そして私はとんな様子かなどを。でもギルドでは事実関係やスケジュールなんかは分かっても、私がどんな様子か、心が折れていないか、憔悴していないかなんかは分からなかった。


「そこでじゃ、もう一度占ってみたのじゃよ。ロウミィはどうなってるかとな」


 結果は、『炎は消えていない』と。そしてこうも続いたそうだ。


 『祠へ遣わせ』と。


「ワシらとて北の祠のいわくは重々分かっとった。けれどな、ちょうどいいと思ったんじゃ。ランクの話やらもギルドのお嬢ちゃんから聞いとったし、ロウミィのためにもここは知らせを信じようとな」


「そうだったんだ・・・・・・ってことは、今日も?」


「そうじゃ。あれから村を出るたびにお聞きしたわい。まぁ、行くたびに顔が変わっとったからそれもあるがな。どちらにせよ、昨日の夜のお伝えで『村を出ずる』と聞いたもんでな。お前さんの顔を見ても嬉しそうな顔しとったのでな。すぐ分かったわい」


「そっか。そんなに顔に出てた?」


「ほほ、お前さんの顔、十年前を思い出したぞい」


 冒険者になるべく村を出たあの日、夢と希望に満ち溢れていた十二の初夏のこと。あの日に抱いていた夢とはちょっと違う形になったけど、また夢を追いかけることが出来る喜びか、思い切り顔に出てしまっていたみたい。


「今度はどこへ行くんじゃ?」


「決まってない。回遊になるから」


「なんと、回遊か。それはだいぶ大変なことになるぞい」


「ええ、でも決めたから」


「夢のため、じゃな? まぁワシらとてお前さんの邪魔はしとうない、でもな」


 グッとこちらを見据える。村長が時折見せる、空気を変える目。


「必ず守ってほしいことがあるのじゃ」







 さて、ここまで散々語っておいて今更ではあるが、ここで私が何者なのかを説明しておこう。


 名は『世界の記憶』。この世の全ての事象を知る者。神代の時代から今日までを全て記憶する者。目的などない。ただ単に記憶をし、それを天界の神々へ繋げる、それのみの存在。今この時まで、どこで何が起こっているのか、全てを理解し保持し続けるだけの存在である。


 神代の時代、ただその時代に私は人格など持ちあわせていなかった。イグノ神、智の神によって生み出された私であったが、その当時は言わばイグノの目であり耳であり、そしてそれを留めおく紙であったにすぎない。イグノを通し私は主神ディオスやその他の神々へ情報を渡すのみ。故に思考や理解という概念すら持たない存在であった。神々にとっては天界という絶対であり決して変わることのない環境が少し退屈であったのだろう。下界という常に変化し、様々な事象や存在の蠢く場所を私を通して見聞きし、理解する。そんな退屈な日々を彩る単なる娯楽として生み出されたのかも知れない。



 あれはいつ頃であったか。ディオスは下界の生物たちの中に、神々と同じように自らを自覚し思考しうる存在を私から知った。


 単なる気まぐれ、ひとときの興味からディオスは智の神イグノと武の神オクトマにある提案をする。


 それぞれのやり方で、我々に近い生命を作ってみないか、と。そしてその二柱の協力者として愛の神ポレンを含め、下界を使った遊びが始まることとなる。


 オクトマはイグノでいうところの私と同じような、下界と通じ、下界へ介入するための存在を持っていた。天界のすぐ下、二つの山を持った浮遊島に住まう神龍たちである。イグノ、オクトマの両柱は、まず手始めとして私や神龍をヒントに始まりの二つの種を作り出す。


 苗床となる下界の生物には既に自我や思考を可能にする条件、つまり種が各個体の魂に埋まっていた。これをいかに発芽させ、輪廻の中で転生させるか。両柱はそれぞれのやり方を考えた。


 イグノは私の機能の一部を引用して、知恵を持って自我や思考を活性化させ発芽させる種を。


 オクトマは神龍たちのエネルギーの源を元として、力と闘争を持って自我や思考を活性化させ発芽させる種を。


 それぞれ、上手くいった。イグノが発芽させたモノは人族、今でいう古代人の元となった。オクトマが発芽させたモノは妖怪となった。そしてそれぞれにポレンが作った種を植え、愛憎の念を発芽させたところで下界で両者を生活させ、どのようになるかを観察する次の段階へ。


 すぐに、人族は苦しみはじめた。オクトマが植えた種により妖怪が手に入れた妖気が、人族にはとても耐えられるものではなかったからだ。両柱は悩んだ。どのようにすれば両者共に繁栄し、ディオスの考える下界の姿を実現できるのだろうと。


 そこでイグノは考えた。どのようにして妖気に打ち勝つか。そこで私を通して、オクトマが植えた種の研究をはじめ、妖力とは全く逆の力を人族に発芽させようと思いついた。霊力である。


 苦心し、ポレンやオクトマに協力を頼みつつ、遂に霊力を発芽させる種を人族に植えたことで、人族から古代人の祖となる種族が生まれ、妖怪に対抗する存在として広がることとなる。







 宴会は終わりを告げ、夜が明け、ギルドでカードの更新を終えた後、皆に見送られて昼過ぎに出立した。北の祠でナミと待ち合わせ、ついに旅が始まる。


 どこに行くのか、何が目的なのか。ナミからは何も聞いていない。ただ、ゾーラからしきりに聞いていた話を思い出せば、目的はなんとなく分かる。ナミの身体の異変、私があの日感じた違和感、それを解決するための旅であろうと。


 夜が明け、木々の間から朝日の光が差し込む。はじめて祠に向かった日と似た景色。あの日は雪こそなかったものの、鮮明に思い出せる。当たり前だ。ひと月ほど前のことだから。それだけ短い間に、色々劇的に変わったな。ナミと出会い、濃い日々を過ごし、そして共に旅に出る。


 龍天子という存在に対しても、倒したいという夢は変わっていないけれど、それよりも知りたいという欲が、この日々の中で強くなっていた。ついていくことで何かが、言葉にまだ出来ないけれど何かが分かるのではないかと。子どもの頃に読んだ昔話、そこで知った龍天子という存在。その悪の権化というイメージとはかけ離れたナミを見て、そう思うようになった。



 鳥居を抜け、薄ら積もった雪に新しい足跡をつけながら、祠を目指す。



 ナミはもう準備出来ているのかな。私をおいて先に行っているかな。やっぱやめるとか言い出すかな。でもあの日見た顔を思い出せば、何かを強く思う顔だったから流石に先に出てるなんてことはないだろうけど。


 と考えているうちに祠が見えて来た。良かった、戸の前の段に腰掛ける人影が見えた。少なくとも私を置いていくなんてことはしなかったみたいだ。


「遅いよ、もう寒くて寒くてさ。来ないのかなと思ったよ」


「ごめん、でもこれでも急いできたんだから」


 いつも着ていた前開きの白い一枚布みたいな服ではなく、旅人がよく着ているような服装。美形だな、よく見る服を着ているほうがより顔面の良さが引き立つ。


「じゃ、行こうか」


「ええ。でもその前に」


「何?」


「まずどこ行くか教えてくれない? 流石にここまで来てどこ行くのか分かんないんじゃ私も不安だわ」


「あ、そうか言ってなかったね。まずはあっちだよ」


 ふいっと指をさしたその先は大きな二つの山。私は思わずのけぞった。おい、より不安になるじゃないか。


「ちょ、マジで言ってるの? 双霊山? もしかして亜龍狩り?」


 亜龍を狩るなら、いや少なくとも双霊山を通るなら丸腰で鎧も着込んでいないのはマズイと思う。それに亜龍狩りなら力になれないかな。何の目的もなしに狩るなんて、一応私はハービィーの民だそ。


「亜龍なんて狩らないよ。あそこに知り合いが住んでいるからとりあえず寄る感じかな」


「ひ、人じゃないわよね? あんなところ人が住める場所じゃないし。もしかして妖怪仲間?」


 そんなわけはないけれど、ナミの知り合いならありえるかも。


「うーん、一応そうとも言えるし、でも正しくは違うのかな。とりあえず、歩きながら説明するよ」


「わ、分かったわ」


 てっきり私は街へ出るのかと思ったけど。登山か。双霊山は馴染みが深いけど、登ったことはない。そもそも私がハービィーに住んでいた頃は一般人だから、そんな人間が登っても自殺行為だし。


「あそこにはね、昔から世話になってる方が住んでるのさ」


 再び私が来た山道へ続く道を並んで歩きながら、ナミはどこか懐かしそうな顔で語りはじめた。


「君も多分知ってるよ。ハービィーだけじゃなくて多分この国の人なら誰でもね」


「そうなの?」


「うん。キングドラニウムって呼ばれることが多いかな。僕はいつも名前で読んでるからね。イースラって言うんだけど、まず挨拶と預けてたものを取りに行きたいんだ」


 そりゃ誰でも知ってるな。ドラニウムでも冒険者の間で知らないものはいないし、その中でもキングドラニウムは別名、妖霊脈の管理者。この大陸で知らぬ者はいないと言ってもいいだろう。


「あ、そう言えば初めて会った日に言ってたわよね?」


 ゾーラが止めに入ったとき、キングドラニウムに剣は預けていると。あの時は気に留めなかったけど、よくよく考えればただの剣ではなく大切なものなのかな。


「そうだっけ? まぁとにかく大切なモノだから。親父の形見なんだよ」


「へぇ・・・・・・っん? お父さんの形見って、あなた龍天子よね? ってことはお父さんはもしかしてそういうこと?」


「そ、三千年前に死んだあの龍神族の族長だよ。まあ単に形見ってだけじゃなくてね、これからの僕に絶対に必要になってくるモノだから」


 そんな昔からある剣とは・・・・・・ん? 双霊山と剣。なんかギルドの歴史を調べたときに読んだ話を思い出すけど。


「ちょっと待って、ってことはもしかしてそれって妖霊脈の源に刺さってるって噂の剣のこと?」


「ん? ああ、今じゃそんな感じで認識されてるんだね。まぁその剣だよ。でも安心して、厳密に言えば龍脈の源じゃないから抜いても大丈夫だよ」


 ちょっと待て、じゃああの有名な初代白金級冒険者の剣ってことだよね。馬鹿みたいな威力が出るから竜種でも巨大モンスターでもワンパンで倒しまくったっていう。そうか、龍神族に伝わる剣だったのか。そりゃすごい威力がでてもおかしくないな。確か、名前は。


「死神・ミミルスが使ってたっていうあれだよね」


「え、あ、そ、そうだね。彼もあの剣を使っていたね」


「ん? え、会ったことあるの?」


 まあ数千年生きているであろうナミなら会ったことがあってもおかしくないけど。でも数千年生きてるっていうのは私としてはナミの謎のひとつだしな。本当に会ったことあるのかな。


「いや、使っていたらしいね、ってことだよ。ごめんごめん、言い間違えたよ」


「・・・・・・ふーん」


「え、疑ってる? そのミミルスって人、ニ千年以上前の人でしょ。まさか、会ったことあるわけないじゃないか」


 まただ。祠で話をしていた時もたまにあった、何かを隠す感じ。そもそも私はあなたの年齢から根本的に疑っているのであって、隠されようがなかろうが何も分からないんだから意味ないのに。


「二千年以上って、ナミなら会ったことあるでしょ。あなた何歳よ」


 ただ、これから一緒に旅をするなら隠し事は減らしてほしい。流石に全てをってわけには行かなくてもいい。でも知らないとダメなことだってあるわけで。


「え? 僕は今年で十八だけど」


 は? 私より年下?


「は? え、あんた十八? え、でも龍天子って数千年生きてるって話だったわよね?」


「そんなわけないでしょうよ。第一、龍神族は寿命が長いとは言っても二百年も生きれば長生きって言われるレベルだよ。まさか、そんなに生きているわけないじゃないか」


「でもさっき、お父さんは龍神族だって言ってたじゃない。三千年前に死んだって」


「あ、えっとまぁ色々あるんだよ」


 もういい。はっきり言ったほうがいいな、これは。


「その色々が気になるの。隠し事されてたんじゃ旅出来ないじゃん。大人しく白状しなさいよ」


「ちょっと、尋問みたくなってるじゃないか。まぁでも仕方ないか、分かったよもう」


 ナミは諦めて、少しずつ自分の過去を話し出した。

 双霊山で生まれ育ったこと。皆が知る、妖霊大戦で死んだこと。その後、何度も生まれ変わっていること。


「そうだったんだ。昔話だと、ずっと生きながらえてるって聞いてたから知らなかったわ」


「うん、そうらしいね。でもそういうことなんだよ。第一そんな長生きならもう既におじいちゃんじゃないか。あれはフィクションだよ」


「そりゃそうね。でも前世のことを覚えてるってことは、生きてるって意味でもあながち間違いじゃないのかもしれないわね」


「うん・・・・・・そうだね。覚えてるね・・・・・・」


 悲しそうな顔をした。そりゃそうか、前世のこととはいえ、自分が死んだ話とか、お父さんが死んだ話とかまで思い出させたんだ。悪いことしたかな。


「悪いわね、なんか」


「何が?」


「嫌なこと思い出させて」


「ん、あぁ、いやいや、ロウミィが言うことも分かるからね。それにもうだいぶ昔のことだし」


 嘘つけ、まだ暗い顔をしているだろ。とは言えなんとなく感じていた違和感が少し解けた気がした。


「まぁなんだ、久々にお父さんに会えるって考えましょうよ。剣を取りに行くんだし」


「ハハハ、そうだね。気持ちを切り替えないとね」


 もうすぐ山道への道に着く。沈んだ気持ちのまま亜龍の巣窟を抜けるなんてちょっと不安だし。


「あ、でもこれだけは言っておくけど、ドラニウムは襲ってこないから攻撃しないでね?」


「へ? そうなの?」


「さっき言ったじゃないか。イースラは知り合いだって」


 そうだった。つい肩に力が入っていた。それこそ討伐依頼の時みたいに。きっと魔力の流れで感じたのかな、殺気というか戦いにいく感じとかを。知り合いに会いにいくって感じなら、もっとフラットな感じのほうがいいか。


「そうだったわね。でも、暗い感じでいくのもなんだし、景気づけに私の昔話を話すわね。冒険者目指した頃とかの」


「いいね。あ、でも僕を殺すことが夢だって言ってたけど」


「流石、私はそこから冒険者を目指すようになったの、それでね・・・・・・」


「なんか楽しいけど胃が痛くなる話になりそうだよ」


 旅の初日、お互いの親睦を深めることも必要だろうし、隅から隅まで話してやろうじゃないか。胃に穴が開いても知らないよ。




to be continued

ここまで読んでいただき、ありがとうございます♪


大分お待たせしていますけど、そろそろ戦記物として佳境に入ってくる感じになりそうです。次回も楽しみに。一久一茶でした!


(Twitter 一久一茶 @yuske22798218)

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