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忘却戦記  作者: 一久一茶
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忘却戦記【Ⅰ】第4話〜夢の続きを求めて〜

こんにちは、一久一茶です。


ロウミィはナミとの戦闘の末、何故か北の祠へ通う約束をした。万全の状態のナミを倒すべく始まった村と祠とを往復する生活の中、ロウミィの心境に少しずつ変化が、、、そんな内容です。


 長い時間を経て、ようやく立ち直った巳奈水。すでに大戦から六百年経っていた。妖怪は既に絶滅、魔人族と人類の戦いは膠着し、不安定ながらも均衡の取れた世の中であった。


 それまでと同じように龍神族の末裔、この時代には既にドラニウムと呼ばれていたものたちに育まれ、成長した巳奈水は十六になる年、再び旅に出た。南に下りガードンを抜け、クリシュナ帝国南部、帝都にて冒険者をはじめることとなった彼は、すぐさま武功をあげることとなる。


 クリシュナ帝国の西南、魔族領と国境を接する共和国、トーロウへ向かった巳奈水。大陸南部で最も恐れられる刃虎の長の討伐、これはギルドに残る記録ではあるが、普段群れを成さない刃虎が密林に終結する中、単独で長の討伐を果たしたことで飛び級で銅級から銀級まで昇格したと伝えられている。大戦後対魔人族、魔獣との戦闘に特化した戦士をまとめるべく発足したギルドの歴史の中で、初の上級への飛び級昇格を果たす。



 しかし彼がトーロウへ向かった目的は違うものだった。



 刃虎はかつて妖虎族と呼ばれ大陸を南北に分けて龍神族と争ったものたちの末裔。妖霊大戦では最後まで苛烈にハービィーにて戦い、巳奈水の最期をとった部族でもあった。


 この遠征は巳奈水が唯一最期まで手放さなず、共に戦った四宝、龍神爪を取り戻す戦いであった。父、樹奈水の爪を材料に母の霊力を、共に反発し合う性質を上手く練り合わせた一振であり、巳奈水にとって父の形見。巳奈水の正体と目的を知りトーロウ山脈中の刃虎が、最高峰であるトーポ山へ集結した。


 本来銀級相当、Bランクモンスターである刃虎。集団戦となれば前例はないものの推定で金級相当の難易度の依頼となるであろうこの状況下で、銅級の巳奈水は依頼を受けることなく、単身トーポへ赴き戦った。密林でのゲリラ戦、彼にとっては経験のない戦いではあったが山頂まで一気に敵を薙ぎ倒し、長であるバルと対峙した頃には既に討伐数は三百を超えていた。


 持っていた鉄の長剣は棒切れと化しており、素手による戦闘を余儀なくされる。これも彼にとって初めての経験。勿論、ハービィーで一族と暮らした日々の中で訓練したことはあったが、実戦でそれをしたことはなかった。だが、これにより彼はある能力を開花させる。



 妖怪の血の力のみでただひたすら戦うスタイルである。



 先述の通り、彼は変化を解いた蛇の姿の他、妖怪、半妖、人間の四つの姿を持っている。が、普段安定した力を発揮できるのは半妖の姿であった。ただ、それは単に安定していると言うだけ。素手で戦う場合なら圧倒的に妖怪の姿で戦う方が強い。が、それにはもう一段階上がある。この戦いで、彼は自らの血の力を思い知ることになったわけだ。


 結果的に少年が武器を失いつつも、自らのランクより遥かに強い魔獣を蹂躙したこの戦い。この戦いにて彼は自らの呪いの鍵のひとつ、龍神爪を手に入れ、また自らの戦いの引き出しを増やす結果となった。


 この後の彼は、そのランクを金まで上げ各地で伝説を残していく。彼の活躍の結果、後の世で彼を讃えるため更にその上のランク、白金級が創設された。ギルドカードにあしらわれる、白金級を表すエンブレムが刃虎をモチーフにしているのも、トーポでの戦いが伝説の始まりと位置付けられているためである。


 しかし、ある日突然彼は消息を絶つこととなる。最後に依頼を受けた形跡もない。ただ残るは伝説のみ。


 持て囃される生活に嫌気がさしたか、人々の間ではそう囁かれている。ただ、彼をよく知る冒険者たちはこう残している。


「彼は高ランクの依頼をこなすごとに身体を壊していた。最後の依頼の後も、調子が悪そうで少し里帰りすると残して去っていった」


 この言葉、彼の本性を知らぬ人々からすれば何が起きたか理解は出来ないであろう。






4




 それから、週に二、三度ほど、祠に通う毎日が続いた。


 はじめに訪れたときには妖気など感じなかったが、通うたび日々妖気の濃さが違っていた。濃い日に限ってナミが肉を食べていたところを見ると、どうやら戦いや狩りの時に、それこそ私と戦った時のように妖気を漂わせるやり方のようだ。しかしそれは癖ではなく、わざと血の中の妖気の支配を強めて戦うスタイルのようだ。まぁこれは何故か毎回いるゾーラから聞いた話だけど。


 ナミとすごく仲良く、というわけでには勿論行かないけど、かなり冗談も言える仲になった。それにゾーラとはかなり話すようになった。決定的な、最後の言葉は一応言わない。けれど、ナミが龍天子であることは間違いないこと、ナミがある出来事をきっかけにこの祠にこもって住んでいること、ナミの身体が今のままの生活、戦闘を続けていると良くないこと。ゾーラが口が軽いのはなんとなく初めて会ったときから分かっていたけれど、何かそれ以外の目的があって色々私に話しているのではないかと思えてもくる。どちらにせよ、ナミを案じているのは間違いない。


 ナミもナミで、元来優しい性格が出ている。ことあるごとにあの日の戦いのことを引き合いに出してくるものの、やれあの動き方は身体を壊すだの、やれ刃の摩耗を考えて武器を振っているのかだのとアドバイスをくれる。こちらも初めからそうだったけど一応敵なのに変に抜けている印象だ。余裕があるといえばそこまでだけど、色々聞いているとそういうわけではなく単に性質のようだ。


 ギルドには継続して調査すると言っている。ゾーラの鱗を持っていくと確かにかなり齢を重ねたカメレニウムだと言われた。これで依頼としては達成だ。何せ調査依頼だし。とは言えカメレニウムに苦しめられていたのかと少し疑問を持っている感じだったのでその後も通っているという体だ。


 そんなこんなで今日も祠へ出発する。


「おはようさん、ロウミィ」


「あ、村長。おはようございます!」


 北の門、双霊山へ続く道へ荷物を持って出ようとしたところで、呼び止められた。なんだろうこんなに朝早く。


「最近休んどるかい? ロウミィには夢を叶えてほしいが、そのために身体を壊されたんじゃやりきれんからの。あやつらにも顔向け出来ん。もうすぐ会うのじゃからそれまではちゃんとのう」


 村長は、私の親代わりの人だ。小さい頃、村唯一の戦闘職の冒険者だった両親は、依頼で揃って村を出て以来帰って来なくなった。ギルドに問い合わせても音沙汰なく、銀級だった二人は階級特進、ミスリル級の冒険者になった。ミスリル級、それは認定された冒険者は数多くいる階級。ただ、生きたミスリル級の冒険者はいない。銀級以上の冒険者が、とまぁそういう意味合いの階級だ。


「あ、うん。身体なら大丈夫だよ。元気元気! というか、まだまだピンピンしてるじゃん。そんなこと言わないでよ」


 そんなこともあってか、村長はことあるごとに私を心配してくれる。私が冒険者になると言った時、一番反対したのも、なった後一番応援してくれたのも村長。ことあるごとに手紙を送って来てくれていた。この人のためにも、ここに帰るときには白金級で錦を飾りたかった。私がそう思っているのも気づいていたのだろう。私が不本意に帰ってくるとなってこんなお膳立てまでしてくれている。本当ならば、バービィーの村に落ち着けと言われても仕方なかったのに、依頼まで用意してくれて。お金も労力もかかっただろうに。


 向こうでは調査をしているとは言え、何も戦いをしているわけではない。こんなに心配してもらえると少し心が痛む。


「ならええんじゃ。でも無理だけは駄目じゃぞ」


「分かってるよー。じゃ、行ってきます」


「頑張るんじゃよ」


 もう既に通い慣れた道。この何日間かで季節も進み、頂上付近だけだった双霊山の雪化粧もほとんど真っ白に。村に雪が降るのももうすぐかもしれない。大陸北の海との間に魔人族領、そして双霊山を隔てているため、決してしっかり降るというわけではない。けどやはり北の辺境、ハービィーの冬は厳しい。


 祠へと通うこの数週間で、私の心境にも少しずつ変化があった。ナミのことだ。倒したい目標であることは変わりない。けれどそれ以上に、彼を知りたいと思うようになっていた。


 決してこれは色恋ではない。彼には絶対、隠している何かがある。それに最初から思っていた。伝承で伝わる龍天子は三千年前に息絶え、その後すぐ転生したと。故に未だに生きていると言われている。けれど、見た目が当てにならないのはよく分かるけど、それでも若すぎる。纏う雰囲気から全てが若い。その割に世間知らずというわけではなく、知識の量や戦いの技術なんてところは豊富で、それに裏打ちされた動きなどはあの日の戦いで見た通り。ただ、どうしても違和感が残る。色々話を聞く中ですごい知識や技術を持っているのは間違いない。剣、格闘、魔法に至るまで、今まで出会った剣豪や師範達と遜色ない、むしろ上回るほどの知識はあるのだが、彼らに比べていざ向き合って戦った時の感触が洗練されていないというか、基本に忠実すぎるというか。『青い』という言葉を使えるほど私も経験豊富なわけでは無いけれど、あえて言い表すならそうだろう。


 二時間ほど歩いただろうか。鳥居を抜けて、一本道を歩く。今日は妖気があまり濃くない。


「来たわよー」


 祠に着いた頃には、双霊山に近いだけあって雪がちらついていた。寒いなか戸を叩く。


「来たんだね、今日も」


 そう言って戸を開けたナミを見て、驚いた。いや、正確には祠の中を見てか。


「どうしたの? どこか行くの?」


 ゾーラからよく聞いていた。このナミという男はバービィーで恐れられた伝説の怪物ではもうない。今や伝説の引きこもりだと。外に出る時は近場で狩りをするくらい。それがどうだ。今日は祠の中が片付いているだけでなく、ナミ越しに見える囲炉裏のところには大きなバックが置いてある。パンパンに荷物が入っているようだ。


「まぁね。僕もそろそろここに引きこもってばかりはいられないから」


「その意識は生きてたんだね。てっきりこのままここで一生引きこもってくのかって思ってた。伝説の引きこもりってゾーラも言ってたし」


「ゾーラがそう言ってたのかい? まぁ、あの人にはあとで鉄拳制裁だね、ハハハ。でも、ここを出てちょっと旅をしようと思ってね」


 ふと瞬間的に思った。そして今私は重大な決断をする時だと察した。ナミが笑う顔、それは多少なりとも普段を知っている者なら分かる。いつもと違う、何かを決意した顔だ。


「もうここには戻ってこないつもり?」


 そんな顔を見たからか、咄嗟に思ったことが口に出た。ここは思案して言葉を発していては遅い。具体的ではないけどそう思ったのだ。


「うん・・・・・・まぁ、戻っては来るつもりだよ。ただ何年先になるか分からないし、もしかすれば戻ってこないかもしれないからね。だからロウミィともお別れかもね」


 ほら、やっぱりそうだ。思った通り。でもね、私としても譲れないところがあるんだよ。


「いつ出るの?」


「うーん、とりあえず二日後って思ってるかな。準備にも時間がかかるしね」


「ふーん。なら私もついてくわ」


「・・・・・・え? いやいや君は銅級でしょ? ここから離れるわけにはいかないだろう」


「いや、実はね。ゾーラさんにもらったあの鱗を見せて一応依頼は達成したから、もう鉄なんだよね」


 ギルドガードをポケットから出して見せる。赤茶色だったカードの色は、今や灰色になっていた。狂熊を模したエンブレムがあしらわれた新しいそれは、ここに私を縛りつけていたものがなくなったことを意味している。


「そ、で、でも君が僕に着いてくる理由は何なのさ? 無いだろうよ」


「忘れたの? 私の夢。ナミには初めに何となくだけど言った気がするんだけど」


 そういうと、ナミは少し考えて、はぁとため息をついた。


「本当に君には関係ない旅だよ。それに、多分だけどロウミィが思ってるより過酷なものになる。君の夢は夢で別にいいよ。それで勝手に着いてくるならそれでもいい。けど僕は、君が僕に着いてくるのは反対だ。ゾーラからも聞いてるよ、君が村でどんな立ち位置かを。なら尚更、ここに留まった方がいいと思うんだ」


 ゾーラも顔が広い。というのも色んな顔を持っているから。竜人として、情報屋として、ギルドに顔がある程度知れている商人として、ナミの世話役として。恐らくバービィーのギルドで私のことを聞いたのだろう。確かに、私はあの村で現在唯一の戦闘職の冒険者。それに今は違うけど、金級まで上り詰め、帝都で名の知れた冒険者としての顔もある。みんな私を応援してくれている。私が帰って来て以降、皆私にあまり何も言って来ないのも、私のことを心配しているからだとも分かっている。でも、だからこそだ。


「私には夢があるの。それをみんな知ってるから応援してくれているの。もし私がここであなたについていかなかったら、夢を諦めた私をみんなは見たくないと思うし、私も見せたくない。それにあなただって、ここで引きこもっていたのに世間が分かるの? 私がついていくのも一理あると思うけど、戦力にもなるし」


 世間が分かるのか、いや、博識な彼なら分かるかもしれない。ただこの場だけでもこの言い訳を使いたい。鉄級になった、どこにでも行ける。だからこそ、夢のために旅についていきたい。もう帝都になんて未練はない。昇級にも興味はない。夢、そのためなら少々強引であってもここの問答は突破したい。本心からそう願うからこそ、同行を願いたい。いや、強引にではなく、本心からそう願うなら、自分の心境をしっかり伝えた方がいいかな。


「それにね・・・・・・いや、違うわね。やっぱりあなたは目標なのよ。ここ数日で更にね。もっとあなたを知りたい、そこが私の中で大きいの。だからついていく」


「目標、か」


 そう呟き、黙り込むナミ。祠に吹き込む冷たい風が頬を撫でる。強くなる雪、既に木々は白くなっていた。二人の吐く息も白い。戸を開けたまま、でも寒さは特に気にならない。それだけ私にとっては大事な話題。これまで育てて来た思い、それを伝えた。ここで許してもらえなくとも、無理にでもついていくだろう。でもやっぱり許してもらった上でついていきたい。そうでないと、私の中でしこりが残ったままの旅になりそうで。


「本気みたいだね。まぁ、僕としても助かる部分は多いしね。でも本当にいいのかい? 数年単位での旅になるかも知れないよ?」


「全然、そこが気になるならここまで粘ってないわ」


「そうだね・・・・・・まぁいいか。いいよ、着いてきて」


 良かった。嬉しかった。二人旅、それもナミが何の為に旅するのかもわからない。でもそれをも含めて彼を知っていきたい。今まで一人で冒険者を続けてきた私にとっても未知なことが多いだろう。でもこれでまた成長したい、目標を超えるために。







 巳奈水が帝都の冒険者界隈から姿を消したのと時を同じくして。双霊山以北、現在リングス荒野と呼ばれる岩石地帯にて、魔人族の軍が南下、人間領へと侵攻しようとしていた。


 北限の変、またはリングスの変とも呼ばれているこの出来事は、魔人族と人間族の戦いにおいてはじめての、魔人族が訓練された軍を率いて人間族の領地に攻めてきたというものだった。ギルドの記録では、ガードンで行われたガードナー辺境伯軍の魔力感知でおよそ数千の魔人が整然と進軍する様が観測され、感知を任された魔導士の中には気を失ったものもいたほどだったという。


 それまでの双方の戦いで人間族が優位に立てていたのは、魔人族より人間族の方が緻密な魔力操作を得意とする為魔法が高度であったこともあるが、一番はやはり組織力であった。魔人が数体攻め込んできたとなれば軍、冒険者、どちらにおいても基本数十から数百の人員を割き対処してきた。魔人は高度な魔力操作を行うための霊力を持たないものの、反発する霊力がないことから体内に内包する魔素の量が人間の数十から数千倍にも及ぶ種族。それらを駆使した魔素攻撃、現在でいう魔術は膨大な魔素のエネルギーをロスなくそのままぶつけるもので、とても人間ひとりで太刀打ちできるものではない。故に集団戦をかけて魔法、近接の連携により退けてきたのだ。当時の人間族にとって、そんな彼らが数千の数で、しかも整然とした隊列で進軍してきたとなれば絶望でしかなかったであろう。


 実際観測したガードナー辺境伯は直ぐに帝都をはじめとして国中に救援要請を出し、知らせを受け皇帝は禁軍所属の数千の魔導士を含む五万の兵をガードンへ出立させたと残っている。クリシュナ帝国の歴史において、ガードナー辺境伯は代々帝都にある帝国禁軍に次ぐ軍事力を誇っていた家系。故に誇り高く誰の助けも受けず、誰の味方もしない。言わば帝国中央とは半ば独立した貴族であった。そんなこともあってガードンは辺境にも関わらず一大都市となっている。そんなガードナー家でも対処が出来ないほどの規模感に辺境伯はそれまでの誇りを捨てて即断で帝国中に救援を出したのだ。


 しかし、この出来事はあくまでも「変」。つまり大規模な戦闘に至らなかったという意味だ。これは別に魔人族が兵を引いたわけでも、人間族がバービィー周辺を諦めたわけでもない。実際、現在でもバービィーは人間族の国であるクリシュナ帝国に属している。これだけの規模で双方が兵を集め進軍したのにも関わらず、戦争に至らなかったのは何故なのか。


 ちなみに後世、大陸東のアルミナ公国にて魔人族領奪還作戦が成功したのち、魔人族の歴史書が発見、研究されたのだが、魔人族の間では北限の変を別の呼び名で記録していたことが分かっている。



「水神の怒り」



 この記録が意味するところは未だ帝国、アルミナ公国の研究者たちも明らかに出来ていない。


 明らかなのは、北限の変にて魔人族軍は壊滅、撤退したということ。そしてこの呼び名が北限の変の顛末と微妙にリンクしているということだ。実際、ひと足先にバービィーへ入り、そこで再び魔力感知を行なったガードナー辺境伯軍魔導士のうちのひとりは、後にこう残している。



「双霊山に悪魔が降り立ち、魔人どもを蹴散らし、再び姿を消した。皮肉にも、我らは悪魔に助けられのだ」



 彼が魔力感知で見た光景。勿論気配や魔力の影としてしか分からないものの、既に魔人族の軍勢は双霊山の谷を抜けようとしていたところが見えていた。だが、そこで強い魔人の魔力の影の中にそれらを凌駕する程大きく、濃い魔力の塊が出現し、その周辺の影が次々と消えていく様は、悪魔と表現するのも無理はない。そして逃げ惑う魔人に追いすがり、一際大きな影となり猛攻を仕掛け、そして四分の三以上を撃破したその塊は、徐々に小さく、薄い反応へと変わり、魔人軍がリングスへ抜け、撤退を始めた頃には消えていた。


 あの塊、悪魔とも呼ばれたあれは何なのか。一説にはドラニウムの王、キングドラニウムが本気を出したとも言われているが、本当にそうなのか。真相は未だによく分かっていない。







to be continued

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

切り取り方の問題で、歴史回想の部分が多くなってしまいましたね。次回は大きく物語が進むかも、と私の中の何かが言っております。



ではでは、一久一茶でした。また次回で。


Twitter 一久一茶 @yuske22798218

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