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忘却戦記  作者: 一久一茶
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忘却戦記【Ⅰ】第10話〜アサガオの意味は何ですか〜

こんにちは、一久一茶です!


前日の傷を癒しながら備える二人・・・


ではどうぞ!

10




 ナミが半妖、半分人間じゃないことは知っていたけど、まさかこれまでだったとはと、改めて思う。


 人間ならばあそこまでの怪我、完治にひと月はかかるもの。もちろんナミはその限りじゃないから早いだろうと思っていたけど、まさか軽症だった私より早く、しかも次目が覚めた頃に外傷が消えてるなんて出鱈目すぎる。私もその能力欲しい。


 朝起きたら、すでに身支度まで終えていたナミは何やら整理をしていた。洞窟の外は昨日ほどの殺気は感じない。私たちの気配をゾーラの匂いで消してくれているのか。私にはなんの匂いも感じないけど。


「何さ、ジロジロこっち見て。何かついてるかい?」


 ふと、目があった。いけないいけない。心配してるのは確かだけど、治りが早いから羨ましく思ってたなんてよくないよね。


「いやいや、何でもないのよ。綺麗に治ってるなぁって」


「まぁね、人間に比べたら治りは早いのは当たり前だよ。・・・・・・にしても、ロウミィは本当にあれだね」


「何よ、あれって」


「本当に頭がイってるよね」


「な、何よいきなり! 喧嘩でも売ってるの?」


「いや、そんなわけではないよ。でもさ、亜龍相手にあの立ち回りを思いつくなんてどこかネジが外れてないとって思うし。それに今も、僕のこと羨ましいって思ってたでしょ」


 むむ、バレてるじゃん。まぁ確かに、そんなに治りが早いなら依頼をいっぱい受けれる、とか思ってたけど。


「今回はそれに助けられたからね。でも、かなりいろんなところに負荷をかけるやり方だから心配になって。それより剣とかは大丈夫かい?」


 そういえば、【緋】の切れ味が心配だな。あれだけ【炎の破砕】を連発したんだ。いいエンチャント剣とはいえど損傷は避けられない。それに昨夜は疲れすぎていて手入れも出来ていないから、血脂がついたまま。


 見ればもうナミは鍛治道具を広げていた。そんなものまで持ってきてたのか。


 脇に置いてあった【緋】を手に取り、ゆっくり抜く。


「うわあ、かなりやってるね」


「ええ、ここまでははじめてね」


 炎を付与するということは、それすなわち振るたびに刀身が赤く変色するほど熱くなるということ。それを踏まえたつくりだから、この剣に出会って五年、私の冒険者人生の中で一番激しく濃い戦いのなかでもほとんど激しい損傷なんてことはなかった。それこそ、帝都で受けた最後の依頼の時に初めて刃が欠ける経験をしたほどに。


 それがどうだ。ナミに修理してもらってからほぼはじめての実戦で、数十もの刃こぼれ。それに表面に刻印された魔法陣もかすれている。


「全く、ああいう戦いは剣でするものじゃないよ。今回はありがたかったけれど、あの様子じゃ、普段からあんな使い方してるでしょ」


 慣れた手つきで手入れを始めるナミ。悪いな。私まだ筋肉痛がひどくて動けないから。


「うん、まぁね。でも仕方ないのよ。私、魔力は多いけど何故か無属性が使えなくてさ」


 無属性魔法といえば、魔法を習う子どもがまず手をつける分野だ。そして魔法剣士なら必須科目。簡単な探知魔法や空中に作る足場、それに咄嗟に作る防御結界まで。勿論極めれば奥が深いけれど、ある程度なら誰でも使える魔法。


「なんかね、教会で調べてもらったら魔力の質が違んだって。私だけ。だからあんな方法しか思いつかなかったのよ」


 本来、空気中にある魔素はどこも同じ。だけど私の体質的に、私の中に入った魔素だけ火属性にしか変換できないようで。だからこそ、昨日使った鎖も魔力を流して熱で形を変えられるように作ってもらったし、その他の武具も全部知り合いの鍛冶屋に作ってもらったもの。お金がかかって仕方ないったらありゃしない。


 ただ、ひとつだけ。この【緋】だけは、村に出入りしていた知り合いの武器商人に帝都でばったり会ったときに譲り受けたもの。聞けば作者不詳、ものはいいけど手入れできないからあげるよって。


 ふと、そんなことを思い出していると、疑問が湧いた。


「ねぇ、そういえばなんだけど」


「どうしたのさ? というかすごい熱もってるから危ないよち近づいちゃ」


 背中から覗き込めば、魔法で刀身を熱しながら、ハンマーで刃の調整をしてくれている。


「今までね、こういう魔法剣って大体さ、作った本人とか弟子じゃないと打ち直しとかしっかりした手入れはできないって聞いてたんだけど、何で出来るの?」


 今まで気づかなかった私も私だけど。


「うーん、まぁ年の功・・・・・・ってものかな。というか、今まで手入れどうしてたのさ?」


「研ぐだけ」


「ちょ、よくやってこれたね」


「だって、誰が作ったのか分からないし。それにこの子も頑丈だったから」


 テキパキ手を動かして、見れば刃こぼれももうなくなっている。かなりの腕前だ。


「そういや欠けた部分って何の素材で補ってるの?」


「・・・・・・内緒だよ」


 一瞬、手が止まった。けれどまたすぐに戻る。背中を向けていて顔が見えない分、何を思っているのかは分からないけど、何故かゾーラとナミが話している時に感じる、あの雰囲気を思い出した。


「え、何それ。それに悪いわよ。ただで出してもらうなんて」


 だからそれ以上聞けなかった。特に訳はない。ただ聞きづらくなっただけ。


「まぁ、気にしないでいいよ。出来栄えは前の時でもう実証済みだから心配いらないさ」


「そ、そう? まぁ分かったわ」


 その雰囲気は、一瞬だったから気のせいかな。すぐに真剣な空気に変わった。結局私の疑問には答えてもらえなかったけど、そりゃ色々あるよね。言えないことくらい、ましてや長い年月を生きてきたなら尚のこと。




 しばらくして、完成品はすごく輝いていた。正直この子と出会った時よりも。


「すごいわね。流石だわ」


「良かったよ・・・・・・ってかごめん、歯をくいしばったから」


「え、ちょっと大丈夫? 血が出てるじゃない」


 口元から血が出ている。そうか。よく思えば、外傷は治っているにしても鍛治なんて繊細さと力のいる作業なんてさせちゃいけなかったな。私から頼んだわけではないけれど、なんてことは口が裂けても言えない。


「いや、本当ごめんなさい」


「いいんだよ、ほんと大丈夫だから」


 そう言ってナミは、水場のある洞窟の奥へと消えていった。


 そういえば一瞬、剣を打つ合間の一瞬だけだけど妖気を感じた。あんな戦いの後、しかも妖力も消耗した状態で剣の手入れは危険だね。私も気をつけないといけない。


「無理させちゃったわね。ごめんなさい」


「本当に大丈夫だから。まぁ僕は水とか氷の魔法が得意な分、火の魔法剣は調整が難しいから。元から負荷はかかるものだしね。それにロウミィは何も頼んでないじゃん。僕が勝手にやったこと。気にしないで」


「そこまで言うならいいけど、でも気をつけてよね。無理なら別に構わないから」


「はは、分かったよ」


 道具を片付けながら、笑う。


「でもあれね、私たちって何から何まで全く違うわね」


「なんだい急に」


「だってね、使える属性まるっきり逆だし、戦い方の癖も。それに種族だって違うじゃない」


「ああ、まぁそうだね。それに使える属性に限りがあるってのも珍しいか」


「え、ナミもそうなの?」


「うーん、使えないことはないけど。身体にすごく負担がかかるかな」


 普通なら、苦手属性の魔法でも発動させるだけなら誰でもできる。苦手というのは、威力が出ないだとか、操作がうまくいかないという意味。私みたいに全く発動しないとか、ナミみたいに身体に負担がかかるというのは聞いたことがない。それこそ私と同じような境遇の人に初めて会ったくらいだ。


「でも、火と水、か・・・・・・朝顔みたいだね」


「へ? あさがお? 何それ?」


「そうか、今の人は知らないよね。僕も双霊山の居城でしか見たことないけど。今でいうところのテングス草に似た花の名前だよ。朝顔には薬効性はないけどね」


 テングス草、魔力回復のポーションの原料にも使われる薬草だ。確か、花は中心は白くて、花弁の端が赤とか青だったっけ。私も乾物のイメージが強いからしっかり思い出せないけど。


「へー・・・・・・あさがおの花も赤とか青なの?」


「そうだね。城の庭で育ててたんだよ。小さい頃にね」


「というか、何でそれ思い出したの? まさか火と水だから赤と青?」


 単純というか、安直な気がするけど。


「・・・・・・どうだろう?」


「え、何よまた」


 またあの空気が流れる。


「はは、まぁ懐かしい気がしただけだよ」


 そう、ナミは訳を話すけど。でも私の立ち入れないあの空気はそのままで。片付けを終えたナミはまた横たわった。「ゾーラが帰ってくるまで僕たちも万全にしないと」だそうだ。


 だから、あさがおの意味も聞けなかった。


 ねぇ、何があさがおみたいだったのか教えてよ。







 イグノの下界への介入。それも私を通じてではなく直接。彼は自らの知識を総動員して、古代人の勢力を削る画策をした。


 全ては、イグノを超える知を生まないように。我こそが知の神であることを知らしめるために。そのために、古代人の文明レベルを下げようと動き出す。


 この頃から、古代人の間で戦争が絶えなくなった。支配の拡充のため、更なる富のため。理由は様々ではあるが常に同じ種族同士で争うようになっていく。イグノの手が入っているのはいうまでもない。その結果、更なる技術革新が生まれるのだが、意外とイグノは怒らなかった記憶がある。まぁ、イグノの狙いは別にあることを後に知るのだが。


 いつしか、無意識な妖怪への対抗として発達した魔道具の技術は、同じ人を殺すためのものへと変わっていく。それにより更なる犠牲が生まれていく。


 そんなイグノの狙いにいち早く気づいたのは、神龍たちであった。妖怪たちを統べる位置にいた彼らだが、同時に一部の古代人の間でも神格化されるようになっていた。実体を持ち、下界で動くことの多かったためである。








to be continued

ここまで読んでいただきありがとうございました!


今回は特に何も起こらなかったですねー


まぁ、僕にとっては大事なシーンなんですけどね


それではまた次回、一久一茶でした!


Twitter 一久一茶 @yuske22798218

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