私的映像
……えっと……この度は……おめでとうございます。あー、これじゃあ、何のことやらって感じだな。第一子のご懐妊、おめでとうございます? うーん……何か違う。俺は、何が言いたいんだ?
あー……ブランドン。子どもが出来たんだってな。お前とキャシディの子ども。妊娠3ヶ月だって、キャシディから聞いた。おめでとう。本当に、おめでとう。お前、父親になるんだな。あんなに小さかったお前が。
お前が生まれたときのこと、話したことあったっけ? お前は小さな赤ん坊で、2000gちょっとしか無かったんだ。俺はでっかい赤ん坊だったってのに。俺のときは難産で、母さんは死ぬ思いをしたらしい。それにひきかえ、お前はすぽんって生まれたよ。安産のお手本みたいだったって、母さん笑ってたな。俺のときはつわりが酷かったらしいけど、お前のときはぴんぴんしてたって言うし。お前は、生まれる前から優しい奴だよ。俺とは大違いだな。
あー……話が逸れたな。閑話休題。えーと……なんだ、その、つまり、だな。
ブランドン、お前は優しい、良い奴だ。良い夫に、良い父親になれる。絶対になれる。自信をもて。
俺のことで、お前も色々、言われているらしいな。だが、気にするな。俺は色々、何と言うか、まぁ、悪いこともする。もちろん、良いこともするが。どっちかっていうと、悪いことの方が多いかもしれん。
でも、それは俺がひとりでやってることだ。お前は関係ない。それは皆が承知してる。お前に色々言う奴は、お前がお人よしだってわかっていて、それを利用しようとしているだけだ。そんなのいちいち相手にするな。
お前は、悪いことなんざ、なにひとつやっていない。お前は手を汚していない。これからも、汚れ仕事なんざする必要はない。お前は綺麗なままだ。何も後ろめたいことはない。だから、お前は幸せになれ。堂々としていろ。お前とキャシディと、お前達のこどもが幸せに生きられる世界を、俺がつくる。何をしてでも、必ず。
もしも、それで俺が、どうしようもなくなったら、俺のことは忘れてくれ。お前には新しい家族がいる。俺がいなくても、もう大丈夫だ。
あー……なんだ、これ。遺言かよ。暗すぎる。ダメダメ、これは無し。やり直し。……って、オイ! 勝手に保存してんじゃねぇぞ、このポンコツ!