私的文章2
ブランドン、ねぇ、聞いて。あなたのお兄さん、アシュリーのことよ。
恐怖をねじ伏せるだけの勇気と好奇心をもったひと。
彼はいつも、自信満々で、不敵な笑みを浮かべている。
彼がいれば大丈夫、彼ならなんとかしてくれる。この壊れた世界で、信じ縋らせてくれる稀有な人。
皆、彼を頼りにしていた。
人類には彼が必要だった。彼は掛け替えのないひとだから。
アシュリーのこと、怖がるひとはいるわ。私も、そのうちの一人だった。
でもね、それは間違いだと気付いたの。
あなたの赤ちゃんを身籠ったことを伝えたとき、彼は泣いていたわ。びっくりした。いつもみたいに、ふーん、それで? なんて鼻先で笑うと思っていたから。
彼は泣いていたの。こんなに感動したのは、あなたが生まれたとき以来だって言って。
はじめてみたわ。いつも笑っている彼が泣いたところ。ねぇ、ブランドン。あなたのお兄さんは、あなたを愛していた。彼はとても素敵なお兄さんだったのね。
ダイアナは死んでしまった。彼が魔物になってまで、守ってくれたのに。
私はあなたの大切なひとを、いっぺんに二人も奪ってしまった。
本当にごめんなさい。
でも、大丈夫よ。必ずダイアナを取り戻す。ナターシャがいいことを教えてくれたの。信頼できるひとよ。彼女、あなたの崇拝者なの。知っていた?
私はどうなっても構わない。あなたの娘を、あなたのもとへ届けるわ。