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■■■-■■■-■■の日記3

5月28日


私:こんにちは!


□□□-□□□-□□-02:やぁ、こんにちは


私:今日は何て言うんだっけ、えっと……そう、寡黙! 寡黙なのね


□□□-□□□-□□-02:いつも通りさ。俺は元々、君みたいなお喋りじゃないんだ。


私:ふぅん? そうなの?


□□□-□□□-□□-02:そうだよ


私:そうなの? つまんないの


□□□-□□□-□□-02:そう。もともと、つまらない奴だった。こうなってから、かえって、一人言が多くなったくらいだよ


私:私とお喋りするの、いや?


□□□-□□□-□□-02:……私には弟がいる。弟は君みたいにお喋りで、お節介で、お人好しだ。君と話していると、あいつを思い出す。君と出合ってから、私はおかしい。君とこうしていると、たまに、錯覚するんだ。まるで……こうなる前の私に、戻れたかのように。


私:それって、いけないこと?


□□□-□□□-□□-02:良くはないね。だって、惨めじゃないか。私は、私に相応しい怪物に成り果てた。それなのに、過ぎ去った幻を振り返り、立ち尽くしたまま……あまりにも、未練がましいじゃないか。どうせ、何も変わりはしないのに


私:あんた、こうなる前は、どんな姿をしていたの?


□□□-□□□-□□-02:好奇心は猫をも殺すという諺を知っているかい? 悪戯に詮索はしないことだ。君が相手をしているのは、君を一瞬で噛み殺す怪物だということを、ゆめゆめ忘れずに。認識フィルターを通して見れば、グロテスクなぬいぐるみのようなものだろうが、実際は


私:知ってるよ。今ね、わたしたち、同じ現実を見ているの


□□□-□□□-□□-02:まさか、認識フィルターが作動していないのか?


私:そんなに驚くこと? 博士にお願いしたら、外してくれたよ


□□□-□□□-□□-02:何故


私:目に見えるものが全てじゃない。ママがね、教えてくれたんだ。あんたと出合って、お話ししているうちに、思い出したの。でも、わたしの目に見えるのは、今のあんただけだから。こうなる前のあんたのこと、教えてほしいな。そのうち、気が向いたらで良いから……考えておいて。ね?




□□□-□□□-□□-02はなかなか私を食べようとしませんでした。収容班の作業者が私を次の収容室へ連れて行こうとしたら、やっと、私を食べました。




6月8日


すごい! やっぱり、博士はすごいです! 天才です! ママが言ってた通り!


明後日は□□□-□□□-□□-02に会う日です。□□□-□□□-□□-02にも教えてあげたいな。あんたのおかげで、不死の研究は目覚ましい進歩を遂げたって! あんたは皆の役に立ててる、生きる意味があるんだよって!




6月9日


博士がダメだって言うなら、私は何も言いません。絶対に言いません。ごめんなさい。






6月10日


□□□-□□□-□□-02:やぁ、キャンディーちゃん。調子はどう?


私:まずまずって感じ。そっちは?


□□□-□□□-□□-02:まずまずって感じ。


私:あはは。真似したぁ


□□□-□□□-□□-02:ちょっとした疑問なんだが


私:ん? なになに?


□□□-□□□-□□-02:ここの連中は、君を丁重に扱っているのかい?


私:……どうして?


□□□-□□□-□□-02:……


私:皆、私を大切にしてくれるし、優しくしてくれるよ


□□□-□□□-□□-02:そうか。まぁ、当然だろうな。その成果は、君の苦痛の上に成り立つのだから


私:それでいいの。みんなの役に立てるのは、嬉しいもん。みんなが嬉しいなら、わたしも嬉しい


□□□-□□□-□□-02:君は、真の善人だな。しかし、その宝石のような美徳は、今のところ、何の役にも立ってはいないようだ


私:そうかな


□□□-□□□-□□-02:君は怪物の餌だ。君の苦痛は続く。君は報われず、救われない


私:今はまだ、そうかもね。でも、きっと良い結末をもたらしてくれるって、そう信じてるから。それに、悪いことばかりじゃないよ。良いこともある


□□□-□□□-□□-02:そうか


私:そうなの。なんでだと思う? 気になる?


□□□-□□□-□□-02:興味無いな


私:うそばっかり! 興味津々って顔してる


□□□-□□□-□□-02:私の表情なんて、わかるわけがないだろう


私:わかるもん。わたしには、わかるんだもん。


□□□-□□□-□□-02:インチキ占い師みたいなことを言って。


私:私ね、信じてるの。お母さんが読み聞かせてくれたお話のように、きっと、最後は何もかもうまくいく。知ってる? 王子様のキスが呪いを解くのよ


□□□-□□□-□□-02:それはすごい


私:わたしも、あんたも。お姫様じゃないから、王子様は迎えに来てくれないかもしれないけど。でも、きっと、いつか。真実の愛のキスが呪いを解いてくれるよ


□□□-□□□-□□-02:それが呪いであったとしても、君が、祝福としてそれを愛するなら、それは呪いではないのだろう


私:……ママみたいなこと言う


□□□-□□□-□□-02:君のママはなんて言ったんだ?


私:「あなたの不死は、伯父さんの祝福なのよ」って。これね、ママの最期の言葉。伯父さんは、博士のお兄さんなの。伯父さんは博士のヒーローなんだ。それでね、博士はママのヒーローなの。博士は、わたしのパパなんだけど、パパって呼ぶと嫌がるから、博士って呼んでる。あっ、博士のこと、冷たいだなんて思わないで。博士は恥ずかしがり屋なんだって、ママが言ってた。


わたしの名前、伯父さんがつけてくれたんだよ。あんたには、まだ、教えてなかったよね。わたしの名前、ダイアナっていうの。月の女神の名前よ。良い名前でしょ。すっごく気に入ってるんだ。せっかく教えてあげたんだから、わたしのこと、ダイアナって呼んでね




その後、□□□-□□□-□□-02は一言も喋りませんでした。でも、私が収容班の作業者に連れて行かれそうになると、私をひょいと抱え上げて、作業者を威嚇して、追い払ってしまいました。


その後、制圧班が出動して来て、収容室は大騒ぎになりました。制圧班は私が死なないことを知っているから、制圧班は容赦なく□□□-□□□-□□-02を攻撃しました。□□□-□□□-□□-02は物凄く怒って、激しく抵抗しました。三時間後、□□□-□□□-□□-02は制圧されて、私は収容室から連れ出されました。制圧班の人たちは多かれ少なかれ怪我をしていましたが、皆、生きていました。必死になって私を守ろうとしてくれた□□□-□□□-□□-02は、ぼろぼろになってしまいました。




□□□-□□□-□□-02、どうしちゃったの? どうして? 私のせいなの?






6月12日


今日は□□□-□□□-□□-01の収容室へ連れて行かれました。□□□-□□□-□□-01はその日も、とても混乱していて、とても凶暴でした。□□□-□□□-□□-01はいつも通り、喚いていました。




「これ、なに、これ。この匂い。博士、博士、博士。博士の匂いがする。博士博士博士博士博士博士。オォォォブゥラァァァイィエェェェン博士ぇぇぇ!! なにしてる!? なにしてるんだ!? どうして!? どぉしてぇ!? どうして! まぁだ! 生きてるのォォォ!? お前の人間性! どうして生きていられるのォォォ!? 死んで。死んでください。お願いします。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!! 死んで、私達と同じようになって。死んでよォォォ!!」




□□□-□□□-□□-01は私の全部を切り刻んで、剥ぎ取って、食い散らかします。□□□-□□□-□□-01の叫びは、いつも途中から、私の悲鳴に遮られて、聞き取れなくなります。




痛いのも苦しいのも、慣れたつもりだけど、やっぱり、とても辛いです。博士、□□□-□□□-□□-02は元気になりましたか? また、□□□-□□□-□□-02に会いたいです。










7月7日




今日は七夕っていう、ニホンのお祭りの日なんだって。離れ離れになってしまった恋人たちが、この日、一年に一度だけ、会えるんだって。素敵ね。




私:こんにちは!




□□□-□□□-□□-02:こんにちは




私:ねぇ。何も、食べてないって、本当? どうして、食べないの?




□□□-□□□-□□-02:怪物はごまんといる。なかには食欲不振の怪物だっているさ




私:あんたのそれは「食欲不振って言うより拒食症」だって、博士が言ってた




□□□-□□□-□□-02:なぁ、君……ブランドン……博士は、君を褒めてくれた? 髪を撫でて、抱きしめてくれた?




私:褒めてくれたよ。髪を撫でたり、抱きしめたりは、無いけど……仕方ないよ。ほら、博士は恥ずかしがり屋だから




□□□-□□□-□□-02:そうだな。本当は……君の髪を撫でたり、抱きしめたり、本当は、そうしたいだろうに




私:それはどうかな。ねぇ、そんなことより! 食べないの? お腹、空いてるでしょ?




□□□-□□□-□□-02:空いてない




私:空いてなくても、食べたいでしょ?




□□□-□□□-□□-02:君は、君自身が極上の食材だと自負しているようだが、お生憎さま。私の好物は、怪物なんだ。君みたいな小さな女の子は、私の食欲をそそらない。




私:ダイアナ。わたしの名前は、ダイアナ。この前、教えてあげたでしょ。名前で呼んでよ。




私:わたしを、食べないの? 食べて、くれないの?




□□□-□□□-□□-02:食べる。もちろん、食べるよ。私のキャンディーちゃん。




私:ダイアナだってば




□□□-□□□-□□-02:……ダイアナ




私:うん




□□□-□□□-□□-02:ダイアナ




私:なぁに?




□□□-□□□-□□-02:君の望みを教えてくれ。俺は、君のためなら、何でもする……何だってする……必ず、君の願いを叶えてみせる……




私:ほんと? それじゃあ、ねぇ、お願いがあるんだけど




□□□-□□□-□□-02:何でも言ってくれ




私:……私を抱きしめて、髪を撫でてくれる?






□□□-□□□-□□-02は私を抱きしめて、髪を撫でてくれました。泣かないつもりだったのに、泣いてしまいました。□□□-□□□-□□-02もきっと泣いていました。




パパ、私、パパの役に立てたんだよね。よくやったって、褒めてくれたよね。もう、わたしがいなくても、大丈夫なんだよね。




パパ、頑張った私にご褒美をください。わたし、あのひととずっと一緒にいたい。



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