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■■■-■■■-■■の日記1



ふつうのひとには【魔物】の言葉がわからないって、□□□-□□□-□□-02が教えてくれました。私にはわかります。だから、忘れないうちに□□□-□□□-□□-02とお話ししたことを書いておきます。もしかしたら、博士が気にしているかもしれないから。








5月1日


私:えっと……はじめまして、こんにちは。


□□□-□□□-□□-02:やれやれ、新手のおでましか。今日だけで既に四件目の殺処分だ。怪物使いが荒いといったらありはしない。


私:あの……こんにちは……こんにちは! わたしの言っていること、わかる?


□□□-□□□-□□-02:聞こえている。理解もしている。君はどうだ?


私:うん、わかるよ


□□□-□□□-□□-02:なるほど。


私:はじめまして、こんにちは!


□□□-□□□-□□-02:……


私:仏の顔も三度までって諺、知ってる?


□□□-□□□-□□-02:……はじめまして、こんにちは。君は、人並みはずれて物怖じしない、しかし、まともな人間の少女のように見える。ひとはみかけによらぬものという諺があるが、君もそうなのかな?


私:どういう意味?


□□□-□□□-□□-02:君は公社の手に余る怪物には見えないが、そうなのだろうか?


私:違う違う! 私、悪い子じゃないよ。お行儀良く、聞き分け良く、良い子にしてる。皆を困らせたりしないもん。


□□□-□□□-□□-02:怪物であることは否定しないのか


私:あんたは?


□□□-□□□-□□-02:私も君と同じだ。否、君より厄介な存在かもしれない。私は生命と自律性と知性をもつ魔物だからな。


私:うーん……うん。人間には見えないけど……あんた、魔物なの?


□□□-□□□-□□-02:なるほど。君は私を視認しているが、それは正確な認識ではないようだ。


私:えっ? なぁに、どういうこと?


□□□-□□□-□□-02:君の視覚は保護されている。実際の私は、一目見たら吐き気を催すような魔物にさえ、おぞましい怪物と罵られるような見てくれをしている。君が視認している私は、悪趣味なぬいぐるみだろうがね。精神汚染耐性が低ければ、直視するだけでパニックを起こすだろう。もしかしたら、発狂するかもしれない。


私:そうなの?


□□□-□□□-□□-02:君は先天性の異常存在なのか?


私:せんてんせい?


□□□-□□□-□□-02:異常存在として生まれたのなら先天性の異常存在、人間として生まれて異常存在に変異したのなら後天性の異常存在とすると、君はどちらだ。


私:うーんと、わたしは生まれつきおかしかったから、先天性になるのかな?


□□□-□□□-□□-02:なるほど。これは、単なる殺処分ではないようだ。しかし、この収容室に放り込まれたということは、私に期待されるのは、いつも通りの役割りなんだろう


私:いつも通りの役割って、なに?


□□□-□□□-□□-02:君は、何も知らされていないのか。知らないのなら、教えてあげよう。私は、怪物を喰らう怪物だ




□□□-□□□-□□-02はわたしを食べました。あっという間に食べられてしまったので、痛みも苦しみもなくて、気がついたら、再生中でした。


□□□-□□□-□□-02の見た目は□□□-□□□-□□-01に似ているけど、□□□-□□□-□□-01みたいな怖い【魔物】じゃありませんでした。□□□-□□□-□□-02は一思いに殺してくれました。びっくりしました。他の【魔物】も□□□-□□□-□□-02みたいに私を殺してくれたら良いのに。


再生はいつも通り、痛くて苦しいです。でも、我慢します。博士が会いに来てくれたら、きっとすぐに元気になります。








5月3日


私:こんにちは


□□□-□□□-□□-02:こんにちは。おや、君は……一昨日の晩餐とそっくりだな。他人の空似? 複製人間? いや、違うね。君は一昨日のお嬢さんだ。なるほど、君はそういう異常存在なのだな。


□□□-□□□-□□-02:右前腕が欠損している。一昨日は右上腕が欠損していた。私の腹を突き破って出てこなかったということは、君は生命活動が停止すると、最も大きな肉塊から再生するのか。


□□□-□□□-□□-02:君をここへ寄越した者へ伝えなさい。あの怪物の味覚及び嗅覚は非常に鋭いが、好き嫌いはせず、何でもよく食べる。だから、麻酔薬の投与を控える必要はない。次からは、眠らせた状態で収容室へ放り込むと良い。その方が効率的だと。


私:こんにちは


□□□-□□□-□□-02:私の言うことは信じられないか? ……無理もないか


私:わたしが伝えなくたって、博士は知ってるよ。博士は全ての映像、音声を管理してるって、ナターシャが言ってた


□□□-□□□-□□-02:まともな人間に私の言葉は通じない。私の声は理解不能の不協和音だ。


私:そうなんだ


□□□-□□□-□□-02:君は、君に全身麻酔を施そうとしない博士に抗議しなかったのか?


私:いつものお薬は投与して貰ったから。博士が必要ないって、そう決めたなら、それが一番、良い方法だから


□□□-□□□-□□-02:余所の収容室ではどうだか知らないが、博士が君をここへ寄越すのは、君の再生能力について正確に把握する為だ。君の意識や五感が、再生能力に干渉するか否か、いずれは検証が必要になるが。まずは睡眠状態と覚醒状態とで、再生能力に差異が生じるか否か、明確にするべきだ。結果次第では、今後の検証を潤滑に進めることが可能になる。君だって、苦痛は少ない方が良いだろう?


私:あんたって、まるで賢い人間みたいに話すんだね。他の怪物たちとは、全然違う。ねぇ、あんたはどうやって賢くなったの? わたし、賢くなりたいの。やっぱり、難しい本をたくさん読まなきゃいけないのかな?


□□□-□□□-□□-02:はぐらかそうとしても、そうはいかないぞ、おチビさん。君は、何を恐れている? 博士の不興を買うことか? 期待を裏切ることか? 君のような子供の当然の要求に腹を立てる程、博士は狭量な小人物ではないだろう。


私:ねぇ、今日は、わたしを食べないの? お腹いっぱい? だったらわたし、次の収容室に移動しなきゃ。


□□□-□□□-□□-02:次とは?


私:うん。あんたがわたしを食べなかったら、次の収容室に移動するように言われてるの。ここを出て、真っ直ぐ進んで、突き当たりにある収容室。あんた知ってる? あそこにいるのは、もしかしたらあんたの




□□□-□□□-□□-02は私を食べました。やっぱり、あっという間でした。気がついたら再生中でした。博士、質問です。□□□-□□□-□□-02は□□□-□□□-□□-01のことを知っているんですか? 次に会うとき、教えてください。それと、次はいつ、会いに来てくれますか? 博士に会えるの日を、楽しみにしています。




5月4日


明日、博士が会いに来てくれるって! フレディがお願いしてくれた! やった! ありがとう、フレディ! 大好き!




5月5日


大丈夫です、博士。博士は大切なお仕事をしているって、ちゃんと分かっています。でも、無理しないでください。ちゃんと休んでください。それで、もしも、ちょっとだけでも時間が出来たら、私に会いに来てくれると、嬉しいです。いつでも良いです。その時を、楽しみに待っています。今晩、フレディが会いに来てくれます。だから、寂しくありません。大丈夫です。

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