サイト□□□-□、セクター□、第□通路、監視カメラの映像
オブライエン博士:やぁ、ナターシャ。こんなところで、どうした? 今は休憩時間だろ?
エージェント ナターシャ:オブライエン博士。あなたは■■■-■■■-■■をどう思っているのですか?
オブライエン博士:可愛い女の子のふりをした、気色悪い虫けらだ。他に何がある?
エージェント ナターシャ:酷い言い種ですね。それが貴方の本心なのですか?
オブライエン博士:ああ、ナターシャ。【方舟】入り育ちのお嬢さん。想像してご覧よ。深淵の魔物が、そこらじゅうでうじゃうじゃ湧いて出て来て、君の家族や友人をむしゃむしゃ食い散らかしている。どうだい? 異常存在を魔物と同一視し、あれもこれも十把一絡げにして憎しみを募らせる、俺の心理を少しはご理解頂けるかな?
エージェント ナターシャ:貴方にとっては、そうなのかもしれません。しかし、オブライエン博士。■■■-■■■-■■は魔物ではありません。■■■-■■■-■■は魔物ではなく、特殊性を有した人間です。我々同様に様々なことを感じて生きているのです。
オブライエン博士:それは魔物も同じだろう。奴達は生きている。いっちょまえに苦痛も感じるようだ。だから、せいぜい苦しめてやるんだよ。
エージェント ナターシャ:それは、どうかしら? ■■■-■■■-■■は人間に危害を加えてはいません。すくなくとも、現時点で、そのような事態は観測されていません。貴方が【深淵の畔】のご出身だということは存じ上げています。□□□-□□□-□□-01収容違反時に発生した事案□□□□についても。それを踏まえても、貴方の■■■-■■■-■■に対する敵愾心は……逆恨み、なのではありませんか?
オブライエン博士:貴方にとっては、そうなのかもしれません。
エージェント ナターシャ:それは、私の声調を真似ているの?
オブライエン博士:それは、どうかしら?
エージェント ナターシャ:……オブライエン博士。■■■-■■■-■■は、異常な再生力を除けば、ふつうの女の子よ。あどけない、十歳の女の子なのよ。
オブライエン博士:君の目には、異常存在がそのように見えるのか。良くない傾向だ。カウンセリングをお勧めする。……ま、無理にとは言わないよ。カウンセリング・セラピーには、期待する程の効果がない。それは、フレディの件で痛感したからね。なぁ、ナターシャ。君は俺を、無軌道に暴れ回る魔物同然と思っているようだが、それは違う。俺は人類の利益の為に思考し、行動していると断言する。■■■-■■■-■■の特異性は人類に恩恵をもたらす可能性があり、我々はその可能性を可及的速やかに追及する必要に迫られている。我々の実験によって□□□-□□□-□□-01及び□□□-□□-02の補食は■■■-■■■-■■に対して、特別な作用をもたらすことが証明された。補食実験を継続することで、今後も新たな発見、発展があるだろう。いずれ、■■■-■■■-■■の特異性を抽出する糸口が掴める
エージェント ナターシャ:今の発言を、撤回します。ふつうとは言えないわ。ふつうの女の子は、あんなにも凄惨な虐待を繰り返されたら、壊れてしまう。あの子は強い子よ。強くて、優しい子。誰よりも多大な苦痛に晒されているのに、自分より他人の心配をするような。
オブライエン博士:なぁ、ナターシャ。冷静になれ。憐憫、罪悪感、それらはただの感情だ。切り離せ。俺達の仕事は、個人的な感情を、絶対に持ち込んではいけない。元がどうあれ、あれは正真正銘の化け物だ。
エージェント ナターシャ:よくもまあ、そんなことを言えたものね! いいこと!? アシュリーが変異したのも、キャシディが拉致され殺害されたのも、あの娘のせいじゃないのよ! そもそも、キャシディのことは、彼女の自業自得でしょう! アーティファクトに手を出すなんて、正気じゃないわ! 聡明な貴方にそれがわからないわけがない! どうして、あの子に辛く当たるの!? どうして、うわべだけでも、あの子に優しくしてあげられないの!? 貴方はあの子の父親でしょう!?
オブライエン博士:ああ、そうだな。兄貴がああなったのも、キャシディが死んだのも、■■■-■■■-■■のせいではない。
エージェント ナターシャ:……もちろん、貴方のせいでもないのよ、ブランドン。あなたは優しいひと。あなたがアシュリーのいなくなってしまった穴を埋めようと、必死になっているのはわかる。でも、何もかも、アシュリーに倣う必要は無いでしょう。忘れないで。あなたはブランドン・オブライエンなのよ。
オブライエン博士:そうだとしたら、なぁ、ナターシャ。こうなったのは、一体、誰のせいなんだろうな?