□□□-□□□-□□-02収容室、監視カメラの映像
現在、□□□-□□□-□□-02は自主的に収容されている状態であり、公社の研究に対して協力的、指示に対して従順ですが、その潜在的危険性が極めて高いことを留意し、収容を継続してください。
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少女は怪物を喰らう怪物と出会いました。
少女は怪物に食べられてしまいました。何度も何度も繰り返し、食べられました。少女は悪い博士に唆されて、体の一部をとられていたので、どんなに痛くて苦しくても、何度でも生き返ってしまうのです。
怪物は少女を食べました。丸呑みにしました。少女はこれからも、怪物の腹のなかで、死んでは生き返ること繰り返すのでしょう。
ハハッ!
どーも、こんにちは。お久しぶりでーす。ちょっと、匿ってくれないか? 追われてるんだ。お邪魔しますよっと。
ん? なんだよ、俺が何をしでかしたか、気になるのか? そんな姿になっちまっても、変わらないなぁ……兄貴は。
俺、人を殺しちまったんだ。二人も殺した。あー……これは、俺がこの手で殺したって意味。間接的な殺人は含まない。だから、キャシディもダイアナも、父さんも母さんも、含まないよ。
誰と誰だと思う? チッチッチッチ……はい、時間切れ。正解はフレディとナターシャでした。
なんで殺したか? 気になる? やっぱり、赦せなかったんだよ、俺。
兄貴をこんな姿にしたフレディのことも、ダイアナを不死身の化け物にしたナターシャのことも。
これでも、随分、我慢したんだ。兄貴の研究を引き継いで、完成させるまでは、オブライエン博士として頑張らなきゃいけないと思ってさ。
ハハッ! 兄貴の言葉がわからなくても、兄貴の言いたいことはわかる気がする。ダイアナの日記のおかげかな。
この世界はさ、正義とか道徳か、そういう概念を必要としていないんだ。そんなものを振りかざす奴がいたら、そいつは正気じゃない。誰もが皆、悲惨な生き方をしている。方舟に乗れた奴も、乗り損ねた奴も。
こんな世界では、何をしても良いんだよ。フレディとナターシャは、俺に言わせれば、酷いことをしたけど、こんな世界で放し飼いにされた人間だ。何をしたって良いんだ。それが正常なんだよ。
異常なのは、兄貴だよ。
俺のために、なんでもしてくれた。兄貴は皆に怖がられて、魔物にも人にも恨まれて、そうして、俺を守ってくれた。俺はいつも兄貴に手を引かれて、兄貴に付いて歩いて……兄貴に守られながら、安全なところで綺麗言を並べていただけだ。
兄貴はすごい。フレディもナターシャも、俺に騙されていたんだ。
研究、完成したよ。これで、人間は魔物と互角以上に戦える。
褒めては……くれないよな。兄貴、ダイアナのこと、すごく可愛がってたから。
でも、俺、後悔はしてないよ。恨まれても、憎まれても、恐れられても。俺はやった。やり遂げた。
これで、やっと、兄貴の隣に立てたかな。
なぁ、兄貴。俺、頑張ったんだ。もう疲れた。なぁ、兄貴。俺のことも、食ってくれないか?
……ダメか。ハハッ、当たり前か。
それじゃ、おやすみ、兄貴。




