悪役令嬢とヒロインだけの世界
ガールズラブ描写あり
ごきげんよう、私はエミリア・レッドハート、レッドハート公爵家の令嬢です。実は私、転生者でございます。乙女ゲーム「白百合のソナタ」に登場するヒロインのホリー・アージェントを苛める悪役令嬢です。私が前世の記憶を取り戻したのは三歳の時でした。この世界では、同性愛や同性結婚が認められています。私の身近に大叔母様と叔父様が同性婚しています。子供は分家から養子を取り、家を存続させているそうです。そんな私にも婚約者が現れます。相手はこの国の王太子のカルロス・ジークハルト、「白百合のソナタ」に出てくるヒロインの攻略対象者です。ヒロインで平民出身のホリー・アージェントは、エミリアの婚約者であるカルロス・ジークハルトと結ばれ、ヒロインを苛めた悪役令嬢のエミリア・レッドハートは国外追放される物語であります。私も国外追放は嫌なので、カルロス・ジークハルトとの婚約を辞退しヒロインのホリー・アージェントを苛めない方向で行こうと思います
【レッドハート公爵】
「エミリア、王家からカルロス・ジークハルト王太子殿下との婚約話の申し出があったがどうする?」
【エミリア・レッドハート】
「父上、恐れながらお願いしたいことがあります!」
【レッドハート公爵】
「何だい?」
【エミリア・レッドハート】
「はい、この国の有名な易者に私と王太子殿下の婚約の吉凶を占ってほしいのです。」
【レッドハート公爵】
「エミリア、何も易者に頼らなくても・・・」
【エミリア・レッドハート】
「お願いでございます!レッドハート家の行く末に関わる問題なのです!」
【レッドハート公爵】
「そうか、お前はそこまで考えていたのか、分かった。易者に見てもらおう!」
【エミリア・レッドハート】
「ありがとうございます!」
早速、この国で有名な易者を呼び、此度の婚約の吉凶を占ってもらった
【レッドハート公爵】
「それでどうだ。結果の方は!」
【易者】
「恐れながら申し上げます。此度の婚約の運勢は大凶と出ましてございます。」
【レッドハート公爵】
「大凶だと!まことか!」
【易者】
「はい、恐れながら王太子殿下との婚約が決まれば間違いなく大凶になり、御家の不運を招きかねます。」
【レッドハート公爵】
「そうか、分かった。」
易者が帰った後、私は父に呼ばれました
【レッドハート公爵】
「エミリア、どうやら王太子との婚約で運勢は大凶だそうだ。」
【エミリア・レッドハート】
「そうですか、残念です。」
【レッドハート公爵】
「私は決めた。此度の婚約を辞退することにした。」
【エミリア・レッドハート】
「父上、申し訳ございません。私のワガママのせいでこうなってしまって。」
【レッドハート公爵】
「正直に言うと、私も此度の婚約には難色を示していたところだったから、ちょうど良かった。」
【エミリア・レッドハート】
「ありがとうございます!父上!」
私と王太子殿下の婚約話が白紙になり、私は平和に過ごすことができました。次の婚約話はゆっくり探すことにしました。それから歳月が立ち、私はオリエント学園に入学しました。ここでヒロインと悪役令嬢が出会います
【エミリア・レッドハート】
「貴方ね?このオリエント学園に入学した平民と言うのは?」
【ホリー・アージェント】
「はっ、はい、ホリー・アージェントと申します!」
【エミリア・レッドハート】
「ホリー・アージェント、貴方の親御さんは良き名前をつけてもらったのね。」
【ホリー・アージェント】
「あ、ありがとうございます!」
【エミリア・レッドハート】
「私はエミリア・レッドハートよ、よろしくね。」
【ホリー・アージェント】
「えぇ、レッドハートってレッドハート公爵家のご令嬢様ですか!失礼しました!」
【エミリア・レッドハート】
「気にしなくていいわ。同じ一年同士、頑張りましょう。」
【ホリー・アージェント】
「はい!よろしくお願いします!」
よし、まずは好印象を得たわ!本来のエミリアは平民出身のホリーを罵倒するシーンがあり、婚約者だったカルロス・ジークハルト王太子殿下に目撃されてエミリアの態度に失望したのよね。だけど、婚約は白紙になったし、此度のシーンも回避できたわ
【カルロス・ジークハルト】
「ごきげんよう、朝から麗しいご令嬢二人に会えるとは今日はついてるよ。」
【エミリア・レッドハート】
「ごきげんよう、ジークハルト王太子殿下。」
【ホリー・アージェント】
「ジークハルト王太子殿下、お、おはようございます!」
【カルロス・ジークハルト】
「ホリー、君のことは聞いてるよ。一緒に頑張ろうね。」
【ホリー・アージェント】
「はい、ありがとうございます!」
ちなみに私とカルロス王太子殿下は普通の友人として付き合っています。今のところ、私に対しては普通に接しています。そして寮生活が始まり、何とホリーと3年間、同じ部屋で生活することになりました!
【エミリア・レッドハート】
「貴方と同じ部屋だったとはね!3年間、よろしくね。」
【ホリー・アージェント】
「はい、こちらこそよろしくお願いします!」
そして学園生活が始まり、私はホリーにこの学園生活で大事な事を教えた
【エミリア・レッドハート】
「いい、ホリー、ここではマナーが大事なのよ。私が手取り足取り、貴方に教えるわ。どこにいても恥ずかしくない立派な淑女にするわ!」
【ホリー・アージェント】
「はい!右も左も分かりませんが、よろしくお願いします!」
私はホリーに付きっきりでマナーを教えて上げた。食事の作法、行儀見習い、令嬢の嗜み等を叩き込んだ
【エミリア・レッドハート】
「ホリー、貴族の世界では一瞬の隙が命取りになるわ。悠然に構えつつ、隙を逃さない、これが貴族の世界で生き残る道よ!」
【ホリー・アージェント】
「はい、エミリア様!」
ホリーも並々ならぬ努力で学び、私とともに行動し、貴族のマナーを必死になって覚えた。彼女の物覚えの早さには正直、驚いた
【エミリア・レッドハート】
「ホリー、よくぞここまで頑張りました!貴方は立派な淑女よ!」
【ホリー・アージェント】
「全てはエミリア様のおかげでございます!この御恩は一生、忘れません!」
私たちは同じ屋根の下、ともに勉学とスポーツと寝食をともにし、交流を深めた結果・・・・
【エミリア・レッドハート】
「ホリー、今日の貴方は一段と綺麗だわ。」
【ホリー・アージェント】
「エミリア様、ありがとうございます。」
私たちは生まれたままの姿で一緒のベッドで寝ていました。私たちはいつの間にか、同性愛に目覚め、最初はキス、次に愛撫、そして肉体関係を結びました。前世の私はノーマルだったけど、同性愛も悪くなかった
【エミリア・レッドハート】
「愛してるわ、ホリー。」
【ホリー・アージェント】
「私もエミリア様をお慕い申し上げます。」
私たちは熱烈なキスを交わし続けた。そして学年最後の日、今日は卒業パーティーがあります。そう乙女ゲームの世界では悪役令嬢が断罪される場面です。私はこの日が来るのを密かに恐れていました。だが私はこの日のためにカルロス王太子殿下との婚約を辞退し、ホリーと交流を深めたのだ、同性愛の関係を築いたのは計算外だったけど・・・
【ホリー・アージェント】
「エミリア様、早く参りましょう。」
【エミリア・レッドハート】
「あっ、まって、そう急がないで。」
私はホリーと一緒に卒業パーティーに参加した。卒業パーティーは和やかに進み、ホリーと一緒に食事を取っている途中に・・・
【カルロス・ジークハルト】
「エミリア・レッドハート公爵令嬢、君はホリー・アージェントに対し、数々の嫌がらせを行っていたことは明白である!王太子の権限にて君を断罪する!」
おいおい、何だよ!婚約してなくても断罪が起きるのかよ。まぁ、分かってはいたけど、結局起こるんかい!すると・・・
【ホリー・アージェント】
「お待ちください!エミリア様は私に嫌がらせ等はしておりません!」
ホリーが私の前に立ち、カルロス王太子殿下に噛みついたよ!
【カルロス・ジークハルト】
「ホリーよ、無理をしなくてもいい。君はその女に惑わされているんだ。」
【ホリー・アージェント】
「いいえ、エミリア様はこの学園に来てからできた私の大切な御方です。私がこの学園に来てから平民である私にエミリア様は温かく迎えてくれました。エミリア様のおかげで学園生活を楽しく過ごすことができました!恐れながら王太子殿下、エミリア様を断罪するなら、私も一緒に断罪してください!」
ホリー、庇ってくれるのは嬉しいけど、相手は王太子殿下だよ!
【カルロス・ジークハルト】
「君はその女に騙されているんだ!エミリアが君に対して嫌がらせをしているのは明白なんだ。これ以上、庇っても君の立場が危ないよ!」
【ホリー・アージェント】
「それはできません!私はエミリア様を心からお慕い申しております!その御方を侮辱するなら、王太子殿下といえど、許しません!」
ホリー、ヤバイよ。喧嘩売るにも相手が悪すぎるよ!
【カルロス・ジークハルト】
「なぜそこまで庇うんだ!」
【ホリー・アージェント】
「それは決まっております!エミリア様と私は真実の愛を誓いあった仲だからです!」
ホリー、何もここで、カミングアウトしなくていいじゃない!
【カルロス・ジークハルト】
「君とエミリアが真実の愛を誓いあった仲だと!」
あぁ、カルロス王太子殿下はこれは予想外だったようね
【ホリー・アージェント】
「はい、エミリア様と私は毎夜、一緒のベッドで愛し合う仲なんです!あんなことやこんなこともしました!エミリア様と私は一心同体なのです!」
おい、ホリー、そこまでぶっちゃけなくてもいいじゃない。見なさい、周りの人たちはみんな、顔を真っ赤にして照れ臭そうな顔してるよ!一部の人たちは鼻血を出して、尊いと言ってるわ、多分、私たちと同じ同性愛者だわ
【カルロス・ジークハルト】
「あっ、あっ、あっ。」
カルロス王太子殿下は顔を真っ赤にしてるよ。おまけに鼻血出してるし・・・・
【ホリー・アージェント】
「私は全世界を敵に回してもエミリア様をお守りいたします!たとえ相手が国王陛下でも噛みつきます!」
ホリー、駄目だよ!国王陛下に噛みついちゃ!
【カルロス・ジークハルト】
「あ~。」
カルロス王太子殿下はその場で気絶し、すぐに医務室へと運ばれた。そして此度の出来事がカルロス王太子の父である国王陛下に伝わり、国王陛下直々にカルロス王太子に尋問をしたそうです。私の犯した嫌がらせについては、実はカルロス王太子殿下が作った濡れ衣でした。どうやらカルロス王太子殿下は私を恨んでいたそうです。私がカルロス王太子殿下との婚約を辞退したことで、カルロス王太子殿下のプライドが傷付き、いつか復讐してやろうとしたそうです。そして私がホリーと常に一緒にいることで、嫌がらせをしていると思い込み、このような結果を起こしたそうです。国王陛下から謝罪され、おまけにホリーとの仲も応援されました。ちなみにカルロス王太子殿下は王位継承権を剥奪され、男爵に降格され、辺境の領地へと左遷と決まりました。その後、カルロス元王太子は辺境の領地での生活に耐えきれず、自殺したようです。私はというと・・・
【国王陛下】
「いやぁ、公爵令嬢と平民の同性愛は異例中の異例だな!応援しておるぞ!エミリア嬢、ホリー嬢よ!」
【レッド・ハート公爵】
「ホリー嬢、娘のことをよろしく頼むよ。」
【ホリー・アージェント】
「はい、お任せください!国王陛下、お義父様!」
私とホリーは国中では知らない者はいないほど私たちの関係が有名になりました。ホリーのご両親から・・・
【ホリーのご両親】
「エミリア様、どうか娘の事をよろしくお願いします!」
ホリーのご両親からも私たちの関係を認められました!
【ホリー・アージェント】
「ふふふ、エミリア様、私は幸せでございます!これからも末長くよろしくお願いします!」
【エミリア・レッドハート】
「うん、これからもよろしくね。」
まぁ、バッドエンドにならないよりはいいか。こうして私たちは末長く幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし!
結果的に悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを迎えました。派生作品の「恋敵は悪役令嬢」と「私だけの悪役令嬢」と「易者が見た白百合のソナタ」18禁版の男性向け小説「エミリアとホリーだけの世界」を執筆したので是非御覧ください。