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偶像隷我 ゼェーナガン  作者: ネビィー
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第四話

怜樹と雲透は三日前と同じビルの扉の前に行った。扉を開けると前回と同じ間取りに牛角の魔物が細身で女性らしさのある魔物と部屋の奥で打ち合わせをしていて、 二人は入ってきた雲透と怜樹に気づくと話をやめて、女性の魔物が二人に会釈をして部屋を後にした。

その一方でリノは不機嫌そうに眉間にシワを寄せる。

「人は…学校か。他のは?」

怜樹は魔物の機嫌を気にことなく、質問する。

リノはやれやれといった風に小さく首を振った。

「開けてもらっている。彼らは多少、俗すぎた。君らにも苦労をかけたな」

「へー、そう言うんだ」

怜樹は机を挟んだリノの正面の位置に座り、頬杖をついた。一息ついて雲透が声を出した。

「リノ、最初に言っとくけど、謝る気はないよ」

雲透はこっちの世界に敵が侵入してきてしまったことに対して反省の色を見せなかったが、リノもそれを攻めようとはしなかった

「わかっている。こちらが茶番をやって見せた余裕があった」

「もともとはあんたらが人を洗脳して(使って)――」

 怜樹の言葉の意味を重々承知しているからとリノは話を遮って言った。

「ああ、わかっている、私もこの状況はよく思っていない」

「わかっていると言うのは口だけか。行動には出していないじゃないか」

  前のめり気味になった怜樹を雲透が抑制しながら会話をする。

「僕らはそういうのに関わるつもりはない。人の世では、人の扱いは気を付けた方がいいよ」

「我々も日々苦労している」

「人を見下すプライドがあるから、人からも拒まれる」

 リノの言葉に怜樹は一々突っ込みを入れる。

「部外者は外からでよく語るな」

リノの口調が荒れるにつれ怜樹の口の調子も良くなってくる。

 怜樹の普段は温厚な性格だが、人が変わったように口が悪くなっていた。

「そうなんだよ、三日も寝てれば、声も通るさ」

「それはお前らのせいで寝込んだという皮肉か」

 怜樹はわざとらしく高笑いして言った。

「言語というものをよく学んでいるじゃないか」

「怜樹ちょっといい」

 雲透の尻尾でレイキの首の角度は正面から左に110度を記録した。

 ピキという音とともに冷汗が全身からあふれ出した。

「どうぞ」

 怜樹が声を出し、雲月が尻尾を離すと怜樹の首は魂が抜けたように机に突っ伏した。

「計画より政府の周りが速いよ、彼らにそれだけの甲斐性があるとは思えない」

「伊達に大国ではないということだ、敵の戦力を図らないまま動くのは危険だな」

「彼らに言動のスキを与えてはいけないからね」

「ああ、ここはホームにもアウェーにもなりえるからな」

「こちらは学生運動で後ろ盾もないから、動き方も余計慎重にもなるね」

「まじかよ」

 怜樹が首を手で押さえながら起き上がった。

「おはよう、早かったね」

「他人事な発言だね雲透さん。」

 怜樹の記憶が一瞬途切れたことはこの場面ではさして重要ではなかった。

「それより学生運動とは?」

「僕らに成人した者はほとんどいない。子供でしか王になれないからね。王が死んだら儀式で王を決める。元々は王位継承制だったんだけど、何世代か前に王族とその関係者を全員ブッ殺されてね。」

「それで?」

「さっき言った奴がルールを作った。」

「反逆者がか?君らはその革命の再現をしようというのか」

「ルールを保護にしようとしているのは政府の方だ」

「そう。悪意ある者たちが王が決まるまでの摂政として政治をし始めた。」

「儀式なんてする気もなくね」

「だから我々が動いたのだ。そういう観点でいえば、この儀式を始めた時点で彼らへの妨害は成功している」

「だけど――」

「お話中失礼します、これを」

 怜樹の言葉と同時にドアが勢いよく開き、先ほどの魔物が入ってきてリノのところへ近寄った。

 彼女の腕にはノートパソコンがあった。ノートパソコンをリノの前にあるテーブルの上に置くと、雲透と怜樹は画面が見える位置に移動した。

 画面には雑草と砂利が混ざった野原に一人の青年が立っている映像が流れていた。青年の顔には目の下から涙ラインに紫の線が入っていて、服は獣の皮で作ったような民族衣装をまとっていた。魔物と言われなければ人間の子供と見間違えるようだった。

 画面の青年は淡々と話をしていたが、瞬間、背景遠くで爆炎が上がり、数秒後に空中で爆散した。起こった砂埃が画面を揺らした。

 怜樹は映像の音と遮らない程度の声を出した。

「どんな場所で撮ってるんだ。まるで武器商人のデモンストレーションだな。この映像はリアルタイム?」

 女性の魔物は「ハイ」と答えた。

 怜樹は自前の携帯端末をポケットから出して配信しているサイトを開いて、音が被らないように部屋の隅で冒頭から再生した。


 さっきの魔物が映像が映った。背景はカメラの向きが違っていた。

「皆さん、ごきげんよう。私たちは、こちら側でいうものの魔物や魔族のような者たちだと受け取ってもらって構いません」

「私たちはある目的のためにこの世界に訪れました。」

「この映像でこれからお見せするものは、私たちの能力であり、避難を促す警告です」

 直後、複数の銃声が響いき、映しているカメラの角度が変わった。

 そこには軍人と思わしき人たちと様々な魔物が戦う映像が見せられた。

「といっても、この力は皆さんに向けたりしません。なので、どうか我々を恐れないでください。

私たちは皆さんと友好関係を築きたいと思っています」

「ですから、私たちはここで一切の負傷者を出したりしません」

「失礼」

 そう言うと青年はカメラを手で隠した。するとすぐに手の隙間から手榴弾と思われる閃光が見え、キーンという音が響いた。カメラから手を離すと催涙目的のスモークがあふれていた。だが、魔物に動揺はなく、話を続ける。

「私たちはこの場所にきて、右も左もわかりません。なので私たちに教えを説き、支援していただける人たちを探しています。」

 スモークが収まり始めたころ、さっき見た爆炎が見えた。おそらくは砲塔から発せられたものだが、砲弾は着弾前に撃ち落された。


 ここから先の映像はリノたちが見ていたので、怜樹は打ち込まれたコメントに目を通した。コメント欄は盛り上がっている一方だったがコメントを遡ると一部で場所の特定が進んでいた。

「場所はだいたい分かった」

「軍の演習場だ。ここから行ける距離だ」

 場所がわかると、怜樹の考えは一つになった。

「行くぞ雲透」

「待て、うかつに――」

「今しかないんだ!」

 怜樹は今日一番感情を込めて叫んだ。

「あいつは人間に無害だといった。人間のスポンサーを見つけるまで人類を敵に回せないんだ。だったら自分の知りたいことは今しか掴めない」

 怜樹の言葉に、雲透が付け加える。

「リノ、僕らは先手を打たれたんだ。その映像は人類の敵味方の議論で必ず不利になる。だったら相手を見られるのは同じ理由で今しかない」

「わかった。だが雲透、お前の姿を敵にさらすわけにはいかない」

 雲透と怜樹は向かい合うと、怜樹が思いついたように指示をする。

「雲透、擬態」

 怜樹の掛け声の後に、雲透はカナブンのような甲虫に姿をよせた。

「着色」

 雲透の体の色は薄く透けた乳白色から、完全な白色になり、甲虫の目の部分は赤色になった。

 それが終わると怜樹は雲透を手掴みし、頭に乗せた。

「リノは僕らから連絡がなかったら察して動いて。あと、欲しい情報はある」

「ああ、大まかな敵戦力ぐらいは探ってきてくれ」

「わかった。レポートで提出してやるよ」

 言い終わると怜樹はドアを開け出て行った。

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