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偶像隷我 ゼェーナガン  作者: ネビィー
3/4

第三話

 部屋の中だ。

 目の前に会議用の長細いテーブルが二つくっついておかれている。

 木目のタイルや大きな窓が何となくの印象を自分に植え付けた。

 (学校だろうか)

 誰がいる。知らない顔ぶれだ。だが、相手は知っているようで、何度もこちらに話しかけてくる。


 目覚めると、自室のベットだった。そういえばと、服は出かけた時のままで、ジャケットだけが脱がされていた。刺されたわき腹を手で触ると、ガーゼが張られているのがわかった。部屋の時計を見れば、十時を超えたところだった。喉がしょっぱい鮭みたいな味がする。布団にもぐり、十二時まで寝ようと寝返りを打ったが、空腹と尿意に耐えられずすぐに起き上がった。


 手洗いのドアを開けると見たことのない生き物がフワフワと廊下を漂っている。

 推定身長四十センチ、以下略

「なんでそんな色なんだ雲透」

 黒い、いや茶色い

 名が体を表したような透明感のあった身体が、見る影もない。

「インスタント麺ばっか食ってたからだね」

「雲透ってスライムなの?もっと気体寄りの存在かと思ってた」

「君、失礼な事言うね」

 どう言う意味なんだろう、と怜樹は首を傾げた。

 台所に向かうと流しにカップのカラが置かれていた

「多くない?」

 二個飛ばしで数えて、九個。

 家族用非常食をぱっくりだった。

「失礼だなー。しっかり一食一個だよ」

「え?今日何曜日?」

「火曜日」

 怜樹の口からは?

「え、あの日が土曜日だったから、自分が三日も寝てたのか」

「そうなるね」

 怜樹は思わず頭を抱えた。

 人間、三日も寝られるとは驚きだった。

「親に会った?」

「留守電、入ってはよ」

「そう、またか」

 いつものことだったので怜樹は気にしなかった。

「なんか残ってる?」

 冷凍庫の引き出しを開けた。


「どうなったの」

 早めの昼食を一通り並べて、席に着くと怜樹から話を切り出した。

「始まったよ、火蓋を切るってやつだね」

 対面に座った雲透は、小物を取り出しテーブルに置いた。

 それはまるで

「砂時計?」

「そうだね」

 雲透は確かめるように答えた。

 砂時計といえばそうだが、どちらかと言えば、モノリスに近いものだろう。三角柱の一面に円い装飾と砂時計が埋め込まれていた。

「まさか10カウント制採用かよ」

 だが、手に持って傾けてみても砂は落ちなかった。不思議なものだ。

「これ、何か入ってる」

 砂の中に黒いものが見えた。

「それは先代、王の黒羽だよ」

 言われた通り、そこには埋まった羽根が一本だけ入っていたが、羽根の付け根まで埋まっていて全容まではわからなかった。


「なんで羽根なんて」

「それは僕らの参加証さ。それを破いたり、焼かれたりしたら、失格」

「取り出せるの?」

「同じ参加者が砂時計の円い所に触れれば出てくる」

「やったの?」

「やったよ。サソリのやつにね。まあ、それは置いといて」

 そこは問題ではないように流し、雲透は話を続けた。

「話では正規軍がこっちに来たらしい」

「急いでた理由はそれか。で、その情報は誰から」

「あの日、夕方にリノから連絡が来てね」

 リノはあの牛角だよと雲透は補足した。

 この場合『ずいぶんツラの皮が厚いな』という感想は雲透とあいつ、どちらに使うものなのだろうと怜樹は考えた。

「で、君が目覚めたから戻るよ」

 あそこまでの仲違いが起こっても平気なんだと驚いた。

「そう…どうしようか」

「また来るつもりなの?やめときなよ」

「絶対に一つ聞きたい事があるんだ」

「危険だよ」

 雲透の口調は意見の否定ではなく、覚悟の確認であった。

「大丈夫だよ雲透、時間は?」

「16時だよ」

「学校が終わる時間だな」

 あのお嬢さん()が来るのかもしれない

「その前に用事を済ませてしまおう」


 部屋に掃除機をかけ、最寄りのスーパーで買い物をして、一通り用事を済ませた後、怜樹は雲透を連れて隣町の総合病院に向かった。

「検査なんてやだよ」

 雲透は尻尾を体に巻きつけながら言った。

「何恥ずかしがっているんだ雲透。君は他人に見えないだろ。逆に自分が精神科に連れてかれるよ」

「ああ、君のか」

「お見舞い」

 怜樹はそれ以上の説明はせず、建物の中に入った。


 受付を済ませて、目的の部屋へ向かう。横引きのドアを少し開けて中を確認する。カーテンで仕切られているが、声が聞こえ、先客がいる事がわかった。

 怜樹はそっとドアを閉め、雲透に休憩スペースで待ってようと提案した。

 十数分待っていると、さっきのドアが開く音がした。

 先客はレイキに気づくと、声をかけた。先客は女性だった。

「怜樹君も来てたんだ。今日学校は?入ってきてもよかったのに」

「昨日まで熱で寝込んでいた物ですから」

「大丈夫よ、風邪なんか病院ではうつらないから」

「あんまり無理にずっと来なくてもいいからね。じゃあね」

「はい、ありがとうございます。」

 女性の姿が消えるまで見送り、怜樹は病室へ入った。


 病室の一角、カーテンで区切られたベッドに女の子が寝かされていた。肌は白かった、髪は黒く艶があり、肩にかからない程度にカットしてあった。

 雲透は女の子の顔を覗き込んだ。

「きれいな人だね、どういうお知り合い?」

 雲透が聞いた。怜樹は近くにあった椅子に座り答えた。

「知り合ったのは駅のホームだった。彼女は、自分と同じ本を読んでいることに関心を持ったって言──」

 話を区切って雲透が言った。

「馴れ初めを聞いたんじゃなくて付き合ってるか聞いたの」

 怜樹は表情も変えず、淡々と答えた。

「どっちかが何かしたということはなかった。でも──」

 歯切りの悪い答えにをまた雲透が区切った。

「で、どうして()()眠っているの?」

 もう、という言葉はさっきまでの女性(彼女の母親)の話声からの推測だった。

「違うんだ雲透、彼女はもう、2年前からこのままなんだ」

 怜樹は俯き、瞳に影がかかる。

「この子が宝探しに行こうって言ったんだ」

 怜樹は片目を左手で隠すようにして、呆れたような笑みを浮かべた。

「おかしいよな。こて(手持ちシャベル)持って電車乗ってさ」

 今度ばかりは雲透も話を遮らなかった。

「山に入って、木の下に埋まってたタイムカプセル見つけたところまでは良かったんだ」

 過去を思い出すにつれて怜樹の目つきが変わっていった。

「帰り道で奴にあった」

「一体どんな奴」

「身長が190から200、肌が土気色で、全身が黒の衣装だった。

でもそれは警察に言った特徴だ」

「というと?」

 雲透の質問は怜樹には間抜けに聞こえ、また大人しく笑みを浮かべった。

「魔物なんだ、君と同じ」

 雲透は表情が見えない顔で唖然としていた。

「君が黒かったら、殺すまで追ってたよ」

「それはよかった」

 雲透は冗談であるように笑った。

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