第4話
注意)
米チート批判ではありません。あくまで一個人の意見です。
チート作物という物をご存じだろうか? ヒエやソバ、サツマイモやジャガイモといった、どっこでも育てられる救荒作物も一種のチート作物に該当するだろうが、世の中にはガチのチート作物ってものが存在する。
それは日本人ならば老若男女問わず誰でも絶対に口にしているであろう穀物。
そう。米だ。
今更米がなんでチートって思う人がいるかもしれないから説明すると、現代日本において、10a(1000平方メートル)当たりの収穫量は麦が350kgに対して米は520kg。およそ1.5倍だ。別の説によると、種もみ1つから麦は15~20倍の収穫になることに対し、米は100倍以上にも膨れ上がるって言われている。
つまり土地当たりの農業生産量が非常に優れているのだ。
米がチートと言われる由来はそれだけじゃない。麦が製粉してパンやらパスタに加工が必要なのに対して米は脱穀だけで食べられる。なんなら玄米でも美味しく栄養が取れる。
栄養面でも米は優れていて、エネルギーの源になる炭水化物は勿論のこと、たんぱく質、脂質、ビタミン、といった五大栄養素の殆どを一人で賄えるし、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、食物繊維といった様々な栄養を得られる。日本人なら米食っとけと言われるわけだ。
そうそう。育てる側の利点で言えば連作障害にならない。
や、正確に言えば他の作物同様連作障害自体は存在するよ? でも、水田がずっと新鮮な水で流され続けるという性質上、地質を常にリセットできるのだ。だからこそ、畑作と違い連作障害が起こらない。
以上の、どの穀物よりも数が確保できて、栄養も豊富、その上連作栽培してもなんのそのという点から米はチートと呼ばれているのだ。皆もパンよりご飯食べようね?
でも私が最初に育てると取り出したのは麦だ。ここまで米を褒めておいてなんで麦なんだよって思うよね。米がチートなら中世ヨーロッパをモデルとした異世界転生物でも農耕チートでたくさん出せばいいと思われがちだがそうともいかない。
チートな米ともいえど万能じゃない点が一つある。水田が必要な以上大量な水資源が必要なんだけど、その水量なんと米1kgに対して1t。単位ミスじゃないよ? 本当にそれだけの水が必要なのだ。中世ヨーロッパ……というかヨーロッパの気候状態として、日本と比べて圧倒的に降水量が足りない。大将曰く、中世に至っては飲み水ですら貴重な代物。いくら米の為でもそこまでの水を確保することは難しい。
あと寒さに弱い。
新潟とか寒そうな地域のお米が人気なのに意外でしょ? これは農家さんたちが長い年月をかけて品種改良を地道に続けてきたおかげなんだって。江戸時代においては東北では米栽培なんて持っての他だったくらいらしいよ。
脱線してきたから話を戻そう。なぜ私が麦を育てるかと言うとこの水が関わってくる。
さっきから米栽培には大量の水が必要であるとしつこく言っているから察しのいい人なら分かるだろうけど、この何もないダンジョンの何処にそんな水資源があるのだろうか。いや、ない。
これを無理やりリソースを割いて確保しようとするとこうなる。
・水脈(小)・・・50P
井戸程度の水脈を設置する。水脈の維持に年間100Pのリソースが必要。
・水脈(中)・・・100P
小川程度の水脈を設置する。水脈の維持に年間1000Pのリソースが必要。
・水脈(大)・・・200P
大河並みの水脈を設置する。水脈の維持に年間10000Pのリソースが必要。
川1つ確保するだけで、年間に1000Pもリソースを消費するとは恐れ入る。今の手持ちリソースの5分の1だ。水脈(大)に至っては今の手持ちのリソースでも手が出せないレベル。まぁこれだけの水量が必要になることなんてそうそうないから今は良いんだけど。兎も角、流石に今後のリソースが期待できない以上、この水脈(中)でも手を出すことはできない。
そこで麦の出番だ。麦ならば中世ヨーロッパでも育てられているという実績がある。で、中世ヨーロといえば異世界物の時代設定のテンプレ。つまり、このよく分からん異世界においても育てられる可能性は十二分にある。
チートの米に安心の麦。
多少加工が面倒だけど、時代と環境に合わせるのであれば麦ほど適した作物はないのである!
まぁ、これ全部大将からの受け売りなんだけど、それは気にしないお約束だ。一部大学の農業と環境の関係性とかいう講義に類似する点があるのでセーフセーフ。
で、畑を作るにしてもどうするのって話なんだけど、流石にクワを片手に一人で開墾する度胸はない。そこはダンジョンマスターらしく楽をしようと思う。
ダンジョンブック(仮)__もう仮はいいか。ダンジョンブックの【ページを開いて】ダンジョンのレイアウトを選択。面白い事に、ダンジョンの中を森のようにしたり墓地のようにしたり、色々と弄れる事が分かった。
まぁエリアの環境レイアウトにも相応にリソースをとられるんだけど、私が目を付けたのはその中のふかふか地面っていうレイアウトだ。
説明的には地面を柔らかくすることで侵入者の行動を阻害し疲れさせることが出来ると書いているが、これ、つまりは畑だよね?
他のレイアウトよりかは変化が小さいせいか、必要リソースも比較的ローコストで100P。焼きそばパン6.7個分で畑が得られるなら安いものだ。
って事で、フカフカ地面をレイアウト!
一瞬力が抜けるような感覚がしたものの、すぐに効果は反映された。さっきまではごつごつだった地面がくるぶし所か脛近くまで沈むふっかふかの地面に変わった。このフカフカ加減は前に実習で訪れた農家さん自慢の農地に似ている。これはいい畑だ!
ただ、洞窟内全部がこうもフッカフカだと歩くのにも困る。どうにかならないかと本で試行錯誤していると、レイアウトはちゃんとそこまで出来るらしい。
本に表示されている洞窟内マップを書き書きしたら洞窟の端っこと奥は元の地面に戻せた。奥の方は生活圏としよう。
生活圏側には水もあったほうが便利だよね。って事で水脈(小)を買って井戸を作成する。井戸はちゃんと隣のトト○で見たことがあるような手押しポンプ式だ。大将曰く、滑車式よりもこっちのほうが楽らしい。楽ならという事で採用してみた。
井戸の作成込み、あと水質も飲み水に使えるレベルに引き上げたから100Pもかかってしまった。まぁ、飲み水は安全に越したことはないからね。必要経費と考えよう。
むしろ、安全な飲み水を50P多く払っただけで手に入れる事ができた分得ってものだ。何せ、真水が飲めないからってビールを飲むような時代が実際に会ったっていうからね。大将から聞いた話だからリアルかフィクションかは知らないけど。
試しにポンプを押して水を出してみる。ポンプの先には井戸についてきた桶を置いている。ポンプを上げ下げする事数十秒。透明で不純物の無い水が流れて出てきた。桶がいっぱいになった所で手押しポンプを止め、水を手ですくう。あ、結構冷たい。
すくってじっと見てみても特に濁りや沈殿物は見られない。意を決して口に含んでみる。
「み、ミネラルウォーター!」
普通に買って飲むレベルで美味しい水だ! これならば水で苦をすることはないだろう。あんまり飲むとお腹を壊しそうなので残りは桶に残しておく。後で水瓶でも生成しないと。
で、肝心の畑の方だが、洞窟がそもそもそこまで広くないので、あまり大きくない。1aは確実にあるが、10aまではない程度だ。
これだけでは我が農地経営に不安が残る。仕方がないので、思い切ってダンジョンブックで階層拡大をポチる。階層二回目の拡張だけあって、更に広くなって今度は1ha(10000平方メートル)は余裕である! これなら立派な畑だ!
……管理しきれるかな。
とりあえず、半分に穀物である麦を蒔き、残る半分にダイコン、ニンジン、キャベツと言った野菜系の種を蒔いてみた。
穀物だけだと私が飽きるからね。ちゃんとバランス良い食生活の為にも様々植えてみた訳だ。植えた種類が多い方が、作物のどれかが失敗した時のリスク分散ができるしね。
本当ならば適当な播種時期とかがちゃんとあるんだけど、こっちの季節がどうなってるのか知らないし、とりあえず数撃ちゃ当たるって事で色々植えてみたわけだ。
そんなわけで畑完成! なんだかゲームじみたお手軽さだったけど、これも名も知れぬ天使が補填を寄こしてくれたからだ。天使に合掌。
洞窟の外を見てみると、少し日が落ちて夕日が見える。
寝るには速いけど……やることがない。
ベッドは少し割高だったので、布団を生成してダンジョンの一番奥に敷く。後は今すぐ必要なものと言えば……机と椅子かな? 筆記用具とノートに関しては大学に持ってきていたカバンの中に筆記用具とペンが入っている。後で今日使ったリソースを纏めておこう。
今日は色々あって疲れたのでご飯はコロッケパンだけで済まし、寝る事にした。
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本日のリソース収支
+ :5000.1
- :442
(内訳
・階層拡張1:0P ※レッスン特典により無料
・階層拡張2:200P
・ふかふか地面:100P
・水脈(小):100P
・作物種各種:7P
・お布団セット:10P
・机:5P
・椅子:5P
・コロッケパン:15P
現在のリソース
4558.1P