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第2話


「うぅ……吐きそう……」


 落ちる感覚から解放され、くらくらとする頭を押さえる。

暫くして吐き気が収まったからと辺りを見回してみると、洞窟?のような場所だ。洞窟と言っても、そこまで大げさなものじゃない。目の前に見える行き止まりから振り向くと、すぐそこに出口が見える程度の浅いものだ。


 夢でも見ているかと思いたいけど、車酔いのような気持ち悪さと洞窟の中のひんやりした空気が私にここが現実であると突きつけてくる。


あのバニーガールは転生がどうのって言っていたはずだ。ダンジョンマスターがどうのとか。

転生といえば大将が好んで読んでいたラノベのジャンルだった。


『て、転生物のテンプレとして神的存在の手違いで死んだり、依頼で転生するパターンが多いんだな。あと、理由も分からないまま突然転生してしまうパターンも少なからずあるんだな。僕ならその場合はまず周りをよく見るところから始めるんだな。分からないままに行動するのは悪手中の悪手なんだな』


 ってな感じで自分ならどうするか延々と教えてくれたっけ。結局それがなんの役に立つのって聞いたら苦笑いしてたけど、今ならすっごい役に立つ。大将に感謝の合掌。

 大将の助言に従い周りをよく見る……見る。

 

 妙に目立つ台座の上にビー玉がひとつだけちょこんと置いてある。それだけしか見つからない。


 これだけ? 少ない! 情報が少なすぎるよ!



「って、あれ? 私、いつの間に本なんて握ってたんだろ。【誰でもなれるダンジョンマスター】?」


 そういえばあのバニーがなんとか措置法で言葉とダンジョンマスターの知識だけはくれるみたいなことを言っていた気がする。流れに驚いていて聞けなかったけど、恐らくはこれの事だろう。


 パラパラとページをめくってみると……何々? ダンジョンとは塔や地下迷宮の形を取り、リソースを消費することによって成長したりレイアウトすることが出来ます。ダンジョンマスターとはそのダンジョンを運営・拡張する多面の存在、いわばダンジョンの脳のような存在です、と。あー、おおまかな所は大将のうんちくと同じだね。なら、大将との雑談を思い出していけば役に立つかも。続きを読む。


 ダンジョンマスターはダンジョンのコアは一蓮托生であり、コアの破壊はそのままマスターの死を意味する……ちょっと待って?


 私ダンジョンマスターなんだけど!? それじゃあ私、コアってのを壊されたら死んじゃうの!? 

 自分の命が危ないと言われると一気に冷や汗が流れ、同時に大将との会話が走馬灯のようにフラッシュバックする。


『ダンジョンは、人間側からの視点で突き詰めれば駆除の対象でしかないんだな。いくら財宝の利点があると言っても、危険なモンスターが常に供給される場所なんて害でしかないんだな』

『また唐突に話題ぶっこん出来たね。ダンジョンってあれでしょ? ゲームとかで出てくる奴』

『そ、そうなのだな。姫氏の言うゲーム的な観点で見ても、結局はプレイヤーが攻略するという前提で作られているんだな。実際に常設で誰でも入ることが出来るという制約のあるダンジョンはトライ&エラーを繰り返される以上、人間側に都合がよい設定なのはまちがいないんだな』

『えーなにそれ。それじゃあダンジョン側の人がいたらその人めっちゃ不利じゃん』

『そ、そうでもないんだな。初見殺しや誘い罠とか、ダンジョン側も出来る事はいっぱいあるんだな。その方法を捻るのが、ダンジョンマスターが主人公の作品の場合の力の見せ所なんだな。……フヒッ。も、勿論ぼ、僕がダンマスになったら姫氏を絶対にまも__』


 そうだった! ダンジョンってダンジョン側がめっちゃ不利なんだった! しかも恒常的に人に狙われる理由とリスクがある?


 無理無理無理! 詳しく知っている大将なら兎も角、まったくのド素人の私にそんなの勝てっこない!

 たしかこの時の話も、途中で私が他の友達に呼ばれて打ち切りになっちゃたから肝心のダンジョン側の出来る事を聞いてなかった。大将が何か言いかけてたのは覚えてるけど、結局聞けてなかったっけ。あの時の私のバカ! 最後まで聞いておけばよかった!


い、いや、反省とかしてる場合じゃない。命の危険がある以上一刻も早く何か手を打たないと。

 ダンジョンマスターがダンジョンをレイアウトすることが出来るなら、きっと本に何かヒントが掛れている筈。焦る気持ちを必死で抑えてページをめくっていく。

 だけど、捲れども捲れども書いてあるのは大将から聞いたことなのあるような“一般的な設定“のような事ばかりだ。


「な、なにか書いてないの? お願い書いてあって……あった!」


~ダンジョンマスターのレッスン1~

 ダンジョンマスターはリソースを消費することによってダンジョンの内装を自分の思う様に作り替え、レイアウトすることが出来ます。

 まずはダンジョンコアを触って、リソースを確認してみましょう。


「ダ、ダンジョンコア?」


 それってさっき拾ったビー玉の事? 私の命はこんなちっちゃいのと一蓮托生なの? 軽くショックを受けながらビー玉を握りしめる。これが、私の命の形。絶対になくしちゃいけない代物だ。


 すると、ビー玉が熱くなるのを感じ、頭に0.1という数字が浮かんでくる。これがリソース? 随分と少ないような気がするけど、そういえばあのステージのギャラリーの誰かがそんなことを言っていた気がする。私がスロットでハズレを引いたのが原因か……。全部ハズレを引いた私はつまりすっごい弱いってことだよね。ますますダンジョンでどうにかしないといけないことになった。

 気を引き締めて続きを読む。


 また、コアはあなたの心臓のようなものです。とても大事なものなので、安全な場所に隠したり、肌身離さず持っていましょう。

 初期のリソース値はあなた自身の強さから決まります。強ければ強い程初期リソースは豊富で、弱い程貧困です。一種の強さの指標にしましょう。また、一日に一度、その分のリソースが会得されます。侵入者を相手にできるまでは、それで気長にダンジョンを育てましょう。



 つまり私はリソース1にも満たない程に弱いと。現代日本人の貧弱さをなめんなよ! 気長に育てるっていっても限度があるわ!

 ……いや待てよ? 別に育てなくてもいいのでは? 


 私の命はこのちっちゃいビー玉。ってことは簡単に持ち運べる。それならばわざわざダンジョンなんぞやらないで一般ピーポーライフをすればいいのでは? それならば命の危険もないし、異世界の変わった料理を楽しめる。まさに理想の異世界生活だ。


 そうと決まればこんな洞窟にいてやる必要なんてない! いざ! 外の世界へ!


ズラリと広がる地平線!

 辺り一面の荒れ地!

 遮蔽物どころか草木一本もない!

 


…………………………………………………………Uターン。


 うん、やめよう。これは何処か人里にたどり着く前に私が死んじゃう。下手をすればダンジョンで殺されるよりもこっちのが確率高い。学校行事のマラソン大会でも最後の方で歩いてる私に大陸横断なんてできる訳もない。

 結局ダンジョンを育てて生活圏を整えたほうが安全か。



 悩んでいても仕方がないので続きを読む。



~ダンジョンマスターのレッスン2~

 実際にダンジョンをレイアウトしてみましょう。レイアウトはこの本から可能です。【ダンジョンクリエイト】でも【レイアウト】でも、ニュアンスが同じであれば本はレイアウトのページを開いてくれます。




「なんでもいいの? それなら、その【ページを開いて】」


 とりあえず適当にお願いしてみると、本は勝手にペラペラと捲れてページを開いてくれた。さっきパラ読みしたときには見なかったページだから、ちゃんと開く手順を踏まないとダメなんだろう。


保有リソース・・・0.1P


・階層拡張1・・・100P

※レッスン特典により無料【選択制】

・階層増設1F・・・100P

※レッスン得点により無料【選択制】

・階層増設1F・・・100P

※レッスン得点により無料【選択制】

・モンスター配置ガチャ・・・100P

※レッスン得点により無料【選択制】



 必要なリソースが高い! 私のリソースが少なすぎるのもあるけど、それにしても手が出ない。レッスン特典で一つだけならなんとかなりそうだけど、慎重に選ばないと。


 増設の1Fって、上に一階を増やすって事? という事は最初の説明の塔のダンジョンにするってことだよね。見つかりやすくなるからNG。できるだけリスクは避けたい。

 一番下のモンスターのガチャっていうのもNGかな。スロットの時で私のクジ運が最悪なのはわかってる。

 となると……今の階層の拡張かな? 地下一階も惹かれるけれど、今の洞窟の浅さでは一瞬で攻略されちゃうし。


 拡張を選択すると、地震のような揺れとズズズっという地響きと共に洞窟が長くなる。大体長さが倍になって行き止まりが広い部屋になった感じだ。


・階層拡張2・・・200P

・階層増設1F・・・100P

・階層増設1F・・・100P


・モンスター配置コボルト・・・15P

・モンスター配置ゴブリン・・・10P

・モンスター配置スライム・・・5P


 本を確認すると、もう一度階層を拡張をするには200P必要らしい。倍値になっている。それにモンスターの配置はガチャじゃなくなって代わりに三種類のモンスターに変わってる。どれも大将から聞いたことのある名前だ。


 でも、一日に得られるリソースだけで配置するとしたら最低でも50日かかってしまう。流石にコスパが悪いって言うのは私でも分かる。今は別のものを作ったほうが良いだろう。

 階層を増やすのもいつになる事やら……。

 

 


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