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村での生活(俺は勇者です)

 

 日の光で目が覚める。

 それは元の世界にいた時にはあまり体験することもなかったことだ。

 俺はいつも部屋のカーテンを閉めっぱなしだったから、日の光は入ってこなかったのだ。


 しかしあまりにもぐっすりと寝てしまった。

 迂闊だったとは思うが、この村には手配書も回っていないから、少し安心はできる。

 門番の人間ですら俺が犯罪者として追われていることを知らなかった。


 しかしこれからは気をつけよう。

 いくら気配察知能力が高いイストがいるとはいえ警戒するに越したことはない。

 例えイストが横のベッドでいまだぐっすり寝ていようと……


 てかこれ本当に気配を察知なんてできるのか?

 この寝顔を見る限りでは信じがたいのだが……

 ちょっと試してみるか。


 俺はベッドから起き上がり、イストに接近する。

 そしてイストに手が届く位置にいき、その肩に触れようとした。そう触れようとしたのだ。(今となってはすごく後悔している)


 そして次の瞬間には、俺は床に押さえつけられ、腕を捻りあげられそして首元に何か冷たいものを当てられていた。

 本当に一瞬の出来事だった。

 自分でも何が起きたのか分からない。


「選べ。切られて死ぬか、刺されて死ぬか………ってアズマ?何してるの?」


「や、やぁおはようイスト。朝だから起こそうとしただけなんだけど……痛いから離してもらえると助かる」


「ふーん、別に私の寝顔が可愛いからつい興奮しちゃったとかじゃないんだ」


「いや、本当に起こそうとしただけでっで!!」


 どうして腕を捻る力を強めるんだ!!

 もげるもげるもげる!!


「ふん、まぁいいわ。でも気をつけなさいよ。前にも言ったと思うけど、私は危機察知能力が高いの。寝ている私に触ろうとしたら危ないんだからね」


 パッと捻る手を離し、俺の上から降りたイストはベッドに腰掛け大きく背伸びをした。

 もう二度と寝ているイストには近づかないでおこう…

 じゃないと俺の身が危険だ。

 処刑される前にイストに処刑されてしまう。

 そう心に決め朝の支度を始めた。


 ◇◆◇◆


「おはよう、お二人さん。朝食は奥に用意してあるから適当につまんでくれや」


 俺たちが部屋から出て入り口へ向かうと、宿の主人が声をかけてくれた。


「おはようございます。ありがたくいただきます」


「いいってことよ!なんたって村長の許可した客人だ!こちらとしてもできる限りでもてなさねぇといけないってわけだしよ。まぁ遠慮することはないさ」


 きまえのいいオヤジさんだこと。

 ここはありがたくお世話になっておこう。


 奥の食堂……とまではいかないが、食事のスペースに行くと、テーブルの上に朝食が用意されていた。

 パンとサラダ、スクランブルエッグにベーコンのようなものが乗せられているザ・洋食チックなものだ。

 家が恋しくなる……

 ああなんで俺はこんな生活をしなければならなくなったんだろうな。


 っと……感傷に浸っている場合じゃない。

 今は飯だ。

 とはいえ流石に無警戒でこの世界の住人が作ったものを口に入れるわけにはいかない。

 なんと言ってもカリドの件がある。

 いつどのようにして情報が入っているかも分からない。


「……おそらく大丈夫だよ。毒の匂いはしないから」


 イストもそれは分かっているみたいで、俺が言うまでもなく調べていた。

 彼女はカリドから毒の見分け方も教わっていたみたいだ。

 なんと万能なのだろうか。

 スペックの高さに少し嫉妬した。


 しかし俺だって勇者だ。

 いつかイストよりも強くなってみせるんだからな!


 と勝手にライバル心を燃やしている俺ではあるが、その実、勝てる気はしていないのが現実である。

 用意された朝飯を食い、しばらく休憩してから森へと向かう。

 俺たちが村に滞在を許されたのは狩りをして肉を村に供給することが条件だ。

 さて今日は何を狩るのだろうか。

 ブラブル?それとも別のやつか?

 まぁ何が来ようとどんとこいだ!


 などと気合を入れていると村の入り口に着いたあたりで


「じゃあアズマ!私は森に行くけど、アズマも村でのお仕事頑張ってね!」


「おう!……ってどゆこと??」


 村でのお仕事?狩りじゃなくて?


「あれ言ってなかったっけ?村長さんと決めた滞在条件で、私は狩りに、アズマは村で村のお仕事をすることになってるって」


 無論聞いていない。

 ……と思ったが、そういえば昨日村長は労働力が手に入ると言っていた気もする。

 あれってもしかして食料を取ってくる労働力じゃなくて、村で働く労働力ってことだったのか!?

 ……俺の気合を返してほしい。


「狩りなら私1人で大丈夫だから!アズマも早く村長のところにいきなよー!じゃあまた後でねー」


 そう言って踵を返し、村の外へとかけて行くイストを俺は呆然と見送り…………

 1人寂しく村長宅へと向かった。


 ◇◆◇◆


「おお来たか。おはよう……ええと……名前なんじゃったかな?そういえばまだ聞いておらんかったな」


 そういえば旅人としか名乗ってなかったな。

 今更な感じもするが、アズマと名乗るのはよろしくないだろう。

 というわけで


「アルマ カンダです。アルマとお呼びください」


「うむ、ではアルマよ。今日は村の草抜きをお願いしたいのじゃが。この村は年寄りばかりでな。草を抜く速度よりも生える速度の方が早うていつまで経っても終わらんのじゃ。そこでお前さんの若さをいかしてパッと終わらせてほしいのじゃ。なにワシらも手伝うから心配はいらんよ。ただしお前さんにはワシらの2倍、いや3倍働いてもらえれば問題ないからのー」


 さてはこのじじい、平気な顔で人を殺せるタイプだな。

 人の3倍働けとか、鬼すぎるだろ。


「なにあんたの力ならすぐ終わるだろう。頑張ってくれ」


 まぁ断るなんてことは出来ないから頑張ろう……

 そう決意した。

 これから1週間毎日草抜きをさせられるとも知らずに。



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