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東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
緋色の幻想
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天使か悪魔か妖怪か

「きゃははッ!」

フランは狂ったように笑いながら密度の濃い弾幕を速い速度でユイに向かって撃ち出した。

「ほっ!」

ユイは地上でアクロバットを決めながら弾幕を躱し続ける。

「《禁忌「クランベリートラップ」》!」

中弾が連続して展開される。

ユイは剣でいなしながら変わらず地面を走り回る。

「あはははッ!」

「お前さん、頭のねじが10本程外れているんじゃないのか?」

「Ten little Nigger boys went out to dine.One choked his little self and then there were nine.10人の黒人の少年が食事に出かけた、一人がのどを詰まらせて、9人になった。」

「ご丁寧にどうも。」

フランの詩にユイはそっけなく返事をする。

「じゃあ、俺もその10人に入るわけにはいかないな。できれば12人の中に入りたいんだ。」

「貴方みたいな野蛮人が12人に入れるかしら?」

「どうだろうな。案外入れるかもしれないぞ?」

「どうせ、主の使いっ走りでしょ?」

「質問を質問で返すと頭が悪くみられるぞ。」

「それは貴方にも言えてない?」

「あれは自問だから問題なし。《修羅「緋色の色眼」》!」

ユイははじめてスペカを展開した。

蝶弾、米弾がゆったりとした軌道を描きながらフランに向かう。

「まだまだ、《罪符「磔の牢獄」》!」

レーザーの檻がフランを囲う。

そこにばら撒かれたのは楕円弾だ。

「さて、2つのスペカ。お前さんはどうやって凌ぐかな?」

「《秘弾「そして誰もいなくなるか?」》!」

フランはスペカを唱えた。

フランの姿は消え魔法陣が現れる。

「私は守り続けるわ。お姉様も…咲夜も…パチェも…美鈴も!」

フランの声に共振する様に魔法陣から速い速度で弾幕が放たれる。

「まったくだ。こんな化け物の相手は管轄外だっつーの。」

ユイはあえて弾幕を避けるようなことはせず剣で斬り続けた。

(おそらく時間が経てば消えるスペカ。だったらのんびり待つだけさ。)

だからこそ、ユイの方からは一切弾幕は撃たず防御に徹している。

「《QED「495年の波紋」》!」

ユイはあまりの驚きに剣を取り落としそうになった。

(まさか、姿を見せずしてスペカを撃ってくるとはな…一本取られた感じか。)

回避不可能な弾幕が目の前に迫る。

(マズい!!)

次の瞬間、ユイは弾幕に呑み込まれた。

フランはその場に立ち尽くす。

「私…やったの?」

紅魔館の同志が見守る中、フランドールは飛び立った。

ただただ上空に、結界は既に解かれた。

「お姉様、私少し遊んでくるね。」

そういって同志は紅魔館を飛び出した。


………


……



「…あっぶねぇ!」

ユイはボロボロの姿で白玉楼に姿を現した。

その両脇を陰と陽が支えており、更に後ろを紫が心配そうな表情でついて行く。

「…大丈夫?」

「辛うじてだ。まあ、これ以上の深手を負ったことは十、二十はあるからな。比較的軽傷だ。」

ユイは黄金を杖に進んでいた。

一歩踏み出すごとにユイの傷口から血が滴り落ちる。

「にしても助かったぜ。裂け目に入ったはいいもののそれ以上裂け目を作る力が残っていなかったからな。

 隙間を繋いでくれなかったら今頃は向こうの七賢人と酒を呑んでいるところだった。だから感謝こそすれど恨みはせんよ。」

ユイは笑いながら言う。

白玉楼の玄関に入ったとき、妖夢は慌てた様子で出迎えた。

「ユイさん!?ちょっと待っててください! すぐに包帯を…」

「いや、大丈夫だ。それより手ぬぐいと水を持ってきてくれ。」

ユイは付喪神たちの助けを借りて玄関に座り込むと文字を出現させた。

傷口はみるみるうちに消えていき、あとには血だけがユイの体に付着していた。

「こういうことだ。」

「…分かりました。」

妖夢は一言いうと奥へと走っていった。

「付喪神ども、しばらくは自由にしてていいぞ。これからは俺と紫さんの反省会だ。」

ユイは獲物を開放すると紫に向き直った。

「まずは謝らせてくれ。今回の任務は失敗だ。これは俺の慢心故だ。すまん。」

「そうね、でも謝罪はその辺にして今はこれからの状況と対策を考えましょう。」

そういうと紫は隙間を作り、淵に腰かけた。

そうして、しばらくの間沈黙していたがやがて口を開いたのは妖夢が手ぬぐいを持ってきてからだった。

「まずは、紅魔組が力を持つことになるでしょうね。私の手駒を破ったというのは十分な実績になる筈よ。

 そうなってくると…多少厄介だけど博麗の巫女に依頼して鎮圧するしかないわね。それからフランの扱いは魔理沙がよく知ってるはずよ。

 あなたには弱小妖怪の群れを片付けてもらおうかしらね。出来ればあの吸血鬼が祀り上げられる前が望ましいわね。」

そこまで言うと紫は一息吐いた。

「…あの、ひとつよろしいでしょうか?」

口を挟んだのは妖夢だ。

「なにかしら?」

「私がユイさんの代わりに任務の代行を行うことはできませんか? 怪我は治っているのでしょうけど体力はそう簡単に回復するようなものでもないでしょうし…」

「いや、大丈夫だ。」

妖夢の提案をユイは遮った。

「俺だって、ただの役立たずじゃないさ。やるなら俺がけじめを付けないとな。」

「却下ね。」

ユイの意見を今度は紫が遮る。

「妖夢の言う通りだわ。確かに傷は治っても体力までは完全に回復する訳じゃない。だから、あなたたち2人で任務は遂行しなさい。」

そこまで言うと紫はそっぽを向いて「なんで私が恋の天使にならないといけないのよ。」と小声でつぶやいた。

その声を聞き取ったユイは声を押し殺して笑う。

「まぁ、なるべくお前さんの足は引っ張らないようにするよ。」

「いえっ! 私こそユイさんのお役に立てるかどうかは…」

「あぁもう! 腹立たしいわね! そんなに任務に行きたいならいつでも行けばいいじゃないの!

 私の為にも早く成功報告を持ってきなさい!」

そういうと紫は隙間の中へと飛び込んだ。

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