異変解決 博麗の巫女
最近、感想を書いてくれる方がいらっしゃって「あぁ、読んでくれている人はいるんだなぁ」なんて他人事の様に感じております。
そもそも、自己満足です故あまり読者の目線には立ってやれんのです。
私の場合、面白そうだと感じたらただ書いてしばらくしたら読み返して終わりですから。
博麗 霊夢はイラついていた。
「あぁもう! 社会主義って何なのよ!?」
境内の中を足音高く歩き回りながら怒鳴る。
「まあまあ落ち着けって。あの『社会主義者』って奴が言ってただろ? 『何処までも平等』って。」
「それが分かれば苦労はしないのよ!」
丁度遊びに来ていた魔理沙に霊夢は当たる。
「分かったから。お前は何を知りたいんだ?」
「そんな前代未聞の思想を誰が言い出したのかって話よ!」
「聖じゃないか? 以前から平等を掲げて布教していたじゃないか。」
「あの生臭坊主なら言い出しそうね…でもパッと新しいものを出すなら守矢神社もあるんじゃない?」
「それとあいつら言ってなかったか? 『ソビエト社会』…なんだっけ?」
魔理沙は首を傾けながら自分の頭を軽く小突く。
「そうね…こうなったらあそこに行くのが一番ね。」
霊夢は決心したように頷くと空に飛びあがった。
「おいおい。どこに行くんだ?」
慌てたように箒にまたがった魔理沙が訊ねる。
「決まっているじゃない。鈴奈庵か香霖堂のどっちかよ。」
決まっているといいながらも決定的に選択を絞り切れていない意見に魔理沙は呆れたように目を細めた。
数分後、鈴奈庵に2人は来ていた。
「小鈴、いるかしら?」
「なんだ、霊夢さんでしたか。」
「『なんだ』って誰だと思っていたのよ?」
「えっと…『あの人』かなぁと。」
(マミゾウの事ね。)
霊夢は渋い顔をしながら「そう。」とだけ返事をした。
「ところで最近話題になっている…」
「『共産主義』ですか?」
小鈴は霊夢の調べたいものをズバリと当てて見せた。
「…えっ、えぇそうなの。それで件の社会主義者が言っていた『ソビエト社会』なんたらっていう物についての本はないかしら?」
霊夢は本題を小鈴に切り出した。
「『ソビエト社会』何たら…ですか。」
小鈴は難しそうな顔をしながら顎に手を当てている。
しばらく考えていたが何か思い出したかのように「あぁ。」と手を打った。
「そういえばなにかの雑誌でそんなものがありましたね。」
ごそごそと裏方を探りながら小鈴は呟く。
「なぁ、それも妖魔本だったりするんじゃないか?」
魔理沙が疑わしそうに霊夢に耳打ちした。
「大丈夫じゃないかしら? だって発音的に外の物でしょうからあまり問題はないと思うけど。」
「そんなもんかねぇ。」
「もっとも新しい宗教だったら私は容赦なく潰しに行くけどね。」
そんなことを囁きあっていると小鈴が本を取り出した。
「ありました! 『ソビエト連邦崩壊』!」
小鈴は古びた雑誌を片手に戻ってきた。
「なんて書いてあるの?」
霊夢は食いつき気味に小鈴に促した。
「ちょっと待ってくださいって…」
そういうと小鈴は本に触りながらぶつぶつと呟いてはページをめくる。
「なるほど。『ソビエト連邦』っていうのは国の事なのね。」
しばらくして本を閉じた小鈴は体を伸ばしながら第一声を発した。
「国?」
「えぇ、『ソビエト連邦』こと『ソビエト社会主義共和国連邦』というのはその名の通り世界初の『社会主義』の国なんだそうです。」
そういうと小鈴は「まだ分からないところもありますけど。」と断ってから説明を始めた。
「社会主義というのは平等というのは神社に来た社会主義者さんたちの話で聞きましたよね?
社会主義というのは外の世界では危険思想とされていてそれに触れるだけでも駄目だったみたいです。
みんなで作ってみんなで分ける。それは優秀な人材を潰すことになるということで外の世界でも実力主義が主流だったみたいですね。
で、何のことなのかは分かりませんけどその国は1991年8月20日に崩壊したそうです。
それが幻想入りするくらい古くなったのでそれに感化された人たちが広めているんじゃないでしょうか?」
説明を聞いた霊夢は考え込んでいた。
「要は危ない思想ってことね。だったら黒幕を退治するまでよ!」
そういって鈴奈庵を出て行こうとする霊夢を魔理沙は慌てて引き留めた。
「まてまて、それの目星を付ける為に私たちはここに来たわけだろう?」
「そんなの決まっているじゃないの。この鈴奈庵には誰が出入りしているのか忘れたわけじゃないでしょうね?」
霊夢は小声で訊き返す。
魔理沙は沈黙すると考え始めた。
「あぁ。やっぱりあの連中か…」
「残念だけど認めるしかないわよ。」
「分かってるって。」
そういうと魔理沙はため息をひとつ吐いた。
「どうやら黒幕が分かりそうよ。ありがとう。」
霊夢は小鈴に礼を言うと今度こそ鈴奈庵から飛び出した。
その後、赤い妖精たちを倒しながら進むとそこには命蓮寺が立ち塞がっていた。
「やっぱりここなのか?」
魔理沙が後ろから顔をのぞかせる。
「他にどこがあるっていうのよ? 幻想郷でここまで目立って『平等』を推し進めているのは聖しかいないわよ。」
「まあ、それもそうだな。」
そういって2人は軽い調子で命蓮寺に潜入した。
「ちょっと待ったぁ!」
2人が庭に入ったとき、声が響き渡った。
見るとそこには読経するヤマビコ、幽谷響子が立っていた。
「勝手に侵入しないで!」
「何を言っているのかしら? あんな厄介な思想をばら撒いといてただで済むと思っているのかしら? おかげで商売あがったりよ!」
「いや、お前のところは年中参拝客は零だろ。」
霊夢の言葉に魔理沙が突っ込む。
「ってそんなことはどうでもいいのよ! 小鈴は『危険思想』って言っていたわ! とにかく退治するのみよ!」
そう叫ぶと霊夢は戦闘態勢に入る。
「何をしているのかしら?」
突然、降ってきた声に3人は目を奪われた。
「まったく、騒がしいったらありゃしない。」
無形物のトラツグミ、封獣 ぬえがトライデントを手に降りてきた。
「あんたのところのお寺が変な思想をばら撒いているって聞いて退治しに来たのよ!」
「あら、それはお疲れ様。でも変な思想っていうのは頂けないわね。私たちはその教えを人に教えるだけであってそれを広めるのはただの人間よ。」
「だったらその教えの根幹であるあんたの親玉を倒せばすべて万々歳ってことだな。人間万歳だ。」
魔理沙が八卦炉を手で弄びながら言う。
「親玉? へぇ…なるほどね、そういうことか。」
魔理沙に言葉にぬえは何かを察したようだった。
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべるとこういった。
「響子、その2人を通してやって。」
「えっ? あっはい!」
そういうと響子はぶつぶつと経を唱えながらどこかへと消えて行った。
「今日のところは黙っておいてあげるわ。ただし、聖に手を出すなら話は別だけどね。」
そういうとぬえは鼻歌を歌いながらその場から消えた。
「…あいつは何をしたかったんだ?」
「まあ別にいいじゃないの。これで遠慮なく聖をぶっ倒すことが出来るわけね。」
「さっきのぬえの話を聞いていなかったのか?」
「えぇ、もちろん聞いたわよ。あいつのご主人をぶちのめしてもいいってことでしょう?」
「……。」
霊夢の得意げな顔に魔理沙は絶句した。
「さぁ! 妖怪退治と行きましょう!」
「まったく…やれやれだぜ。何をどう解釈したらそんな答えが出てくるんだ。」
そういいながら魔理沙も後に続くように歩き始めた。
「聖! この博麗の巫女様が来てやったわよ! さぁ! あの危険思想をやめてもらおうかしら!」
霊夢は空に飛び上がると本堂に向かって叫んだ。
どたどたと騒がしい物音がした後にしばらくして魔界僧、聖 白蓮が外に姿を現した。
「はて、何か御用でしょうか。」
「すっとぼけても無駄よ! あんたが危険な教えを人里に広めている黒幕ね!」
「すいません、本当に思い当たる節がないのですが…」
「だってよ。博麗の巫女さん。」
箒にまたがって霊夢と同じところまで上がってきた魔理沙が頭を掻きながら話しかける。
「しかし、人と話すときに物理的に上から目線であるのはいただけませんね。神道であれ仏教であれ道教であれ人と話すときは同じ目線に立って話すという教えは一貫しているはずなのですが…」
聖も空に上がって霊夢と目線を合わせた。
「異変の首謀者に目線もなにもあるものですか!」
そういうと霊夢はお札をばら撒き始めた。
「うおい! 私がいることも忘れないでくれよ!」
魔理沙は慌てて四方八方にばら撒かれたお札を回避し始めた。
「《妖雲「平安のダーククラウド」》!」
不意に聖の後ろから弾幕が現れ、霊夢に攻撃を始めた。
「ぬえ!」
「黙っててください。博麗の巫女、言ったよね? 『聖に手を出すなら話は別』って。」
「あんたも共犯って訳ね! 邪魔する奴はぶっ倒すまでよ!《霊符「夢想封印 散」》!」
2人の弾幕勝負を聖は黙って傍で見つめていた。
「おっと聖さん、あんたによそ見をしている暇はあるのかな?」
いつの間にか魔理沙が八卦炉を聖に向けていた。
「悪いけど、これも霊夢の為だ。少しの間私とお前で暇つぶしでもしようじゃないか。」
「争いは好きではないのですが…」
「ぬえはこのままじゃやられるぞ。ただ、その時お前が加勢に間に合えばどうかな?」
「はぁ…分かりましたよ。少しの間、あなたの言う暇つぶしに付き合ってあげましょう。」
聖も魔理沙に向かって弾幕を発射し始めた。
数分後…
聖とぬえは地面に伸びていた。
「ふぅ…なかなか接戦だったな。」
「よく言うわよ。まだスペカが何枚も余っていたでしょ?」
「まあな。そういうお前だって『夢想封印』類だけでぬえを倒したじゃないか。」
そういうと荒れ地となった命蓮寺の庭で2人は顔を見合わせて笑いあった。
ということで大胆にも戦闘シーンは大幅カット。
恐れ多くも今回は霊夢さんに引き立て役になっていただきました。




