表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
覚醒
7/93

2日酔いと朝食

だいだいと書いてチェンと読む。

チェンって打っても「橙」にならないんだよね…

ここは地霊温泉旅館の部屋の一角。

部屋には昼間(?)であるというのに布団が敷かれそこにユイが横たわっていた。

「う〜、頭いてぇ…」

「全く、いつまで飲んでいたんですか?」

「朝まで飲んでいました…」

布団のそばには藍が座っており、物言いたげな顔をしている。

「しかし、鬼の話では酔っていた様子はないと聞いていますが。」

「酒の拷問に耐えさせられたこともあったからな…」

「ユニークな拷問ですね…」

「嘘だけど…」

しばらくの沈黙の後、藍がユイに容赦無い殺気を浴びせる。

「まだあの殺気を恨みに思ってるのか?」

「今のは嘘への罰です。」

「この2日酔いがすでに罰なんだが…」

「自業自得です。これでは連れて帰るのは明日になりそうですね。明日までには治しておいてくださいね。」

「んな殺生な…」

「治しておいでくださいね?」

「…うい…」

藍の凄みを効かせた笑顔にユイは肯定するしかなかった。

「では。」

そう言うと藍は部屋を出ようとした。

「あ!藍さん!」

「何ですか?他にも用事があるのでさっさとしてください。」

「えっと、服ありがとう。結構気に入ったよ。」

それを聞くと藍の表情はフッと緩んだ。

「どういたしまして。布生地は紫様が調達してくださったので帰ったらお礼を言っておいてくださいね。」

そう言って藍は部屋を後にした。

その後、ユイは酒気を抜く事に集中した。

とは言っても寝ているだけだが。

しばらくすると何かに覗き込まれている気がしてユイは目を覚ました。

文字通り目の前にこちらを見る2つの目があった。

「近い…」

そう呟くと目の主は顔を離した。

「おう、無意識娘か。」

「こいしだよ。お姉ちゃんから聞いたけど鬼と飲み比べして潰れたんだって?」

「まるで俺が負けた様になっているんだが…一応間違いでは無い。」

「おつかれ様。」

そう言うとこいしはにっこり笑った後、スキップで部屋から出て行ってしまった。

「…そういえばあの無意識娘、どこから入ってきたんだ?」

その問いかけは部屋の空気に吸い込まれて消えてしまった。

次に来た見舞客は勇儀だった。

「おう、元気か?」

「元気なら見舞になんて来る必要ないだろ…」

「それもそうだな。」

勇儀は豪快に笑ってその場に腰を下ろす。

「しかし、鬼である私を飲み潰す奴なんて随分久しぶりだな。」

「お前さんの方は2日酔いとか無いのか?」

「酔ってもその日だけだ。いつまでも酔いには溺れんよ。」

「もう、鬼と飲み比べはしない…」

「星熊盃の酒を薄いなんて言っといて今度はそれかい?」

「あの後、陽が昇るまで飲んでたんだからしょうがないだろ…」

「なら言わせていただこう、お前とは飲み比べしたくない。」

勇儀がきっぱりと言うと、ユイは乾いた笑い声を立てた。

「今度は飲み比べじゃなくて弾幕にでもするかね。」

「ほう?血の気の多いガキンチョは嫌いじゃないぜ。」

「そりゃどうも。」

なにやら含みのある笑いを交わした後勇儀は持っていた紙袋を土産に置いていった。

「なんだろう?」

そう言って紙袋を開けてみると、中には煙管(キセル)が入っていた。

煙草(タバコ)の葉と灰皿もご丁寧に説明書と一緒に入っていた。

「どうも。」

やや皮肉めいた口調で説明書の通りに煙管に火をつけて吸う。

なんとなく気に入って、しばらく咥えていた。

「以外に中毒性あるな。」

そう言ってユイは煙を吐く。

5分程吸ったところで煙草の葉が完全に灰になったので、ユイは煙管を灰皿の上置き、布団の中で寝返りを打った。

その後、うとうとしていたのかふと、気づくとさとりがこちらを見ていた。

「酒気の方は大分抜けたみたいね。鬼と飲み比べして勝つなんて一種の伝説よ。」

「そりゃどうも。でも2日酔いになったら栄光もへったくれもないんだよな。」

「ちょっぴり誇りに思っているのがバレていないと思っているのかしら?」

「否定はできないかもな。だが、意外とそういう芸当ができる奴は探してみりゃいるもんだと思うぜ。」

「心から言っているのが凄いわね。普通は思えないと思うわ。」

「さとり妖怪がいうなら間違いはないんだろうな。ところで、俺がここまで来た経緯を覚えていないんだが教えてくれないか?」

「あなが眠っていたところをお燐が猫車に乗せて運んできたのよ。あまりの酒臭さに最初お燐は酒に潰れて死んだのかと勘違いしたそうよ。」

「なるほど。酒を飲んで一眠りしようとしたところまでは覚えてる。」

「お酒は飲んでも飲まれるな、よ。」

「なんかの教訓?」

「いえ、外の世界の言葉らしいんだけど…」

「まあ、俺にとってはいい薬になったな。酔いを緩和する薬もあればいいんだが…」

「永遠亭にはあるかもしれないけど、ここからは遠いわね。」

「永遠亭?まぁ、ないものを要求はせんよ。」

「ありがとう。お大事にね。」

そういうとさとりは去っていった。

「寝るか。明日藍さんに怒られるのも面倒だしな。」

そう言うと布団に横になり、眠りに落ちた。

次の日…

藍が迎えに行くとユイは部屋の台所で朝食を作っていた。

「何しているんですか?」

「飯作ってる。ニジマスのしじみ風味焼きだ。」

「2日酔いはどうなったんですか?」

「冷めた。流石にどうなるかと思ったけど。だから、酔いを飛ばしやすい食材を使ってる。」

「鬼以上に飲んでその後朝まで飲んでいたら普通はまだ酔いは抜けません。」

「お生憎様。鬼の報告の通り俺は酔ってもシャッキリしてるタイプの竜人だからな。しっかり者だろ。」

「自分で言ったら意味ないじゃないですか。」

「飯食う?その様子だと朝食ってないだろ。あとそこの無意識娘。バレてる。」

その声に見えない何かは自然な様子で逃げ出そうとする。

しかし、扉の前には藍がいて外にです事は出来ない。

観念したのか、古明地こいしが姿を見せた。

「すごいね、普通の人には分からないのに。」

「お前のふわふわした空気がこの落ち着いた部屋の空間に馴染んでいなかったから気づいただけだ。周りも同じような空気なら俺も気づかん。だからだろ、お前さんが無意識の時によく街にいるのは。無意識でいながらもどこかで自分の雰囲気に近いものを持っているって言う意識があるからじゃねえの?。」

「…そうかもね。」

そう言うこいしの表情はどこか影を帯びていた。

「で、そこにいる猫。誰かは知らんがいるのはバレてんだ。お燐ではないな。黒い子猫だ。」

チェンの事?でもここにはいませんよ?」

「いや、いるね。」

そう言うとユイは軽く飛び上がり天井を殴った。

その音に驚いたのか、天井から何かが落ちてきた。

「橙!?」

「ほれみたことか。」

どうやら、床に落ちた衝撃で気絶しているようだ。

「ユイ、もしさっきので橙が死んだらどうするつもりですか。」

藍は厳しい表情で問う。

「猫には9つの命があるんだろ。別に困りはしないさ。そいつは一体何者なんだ?」

「私の式です。」

「そう。そいつは悪かったな。」

そう言うとユイは皿を4つ食卓に並べた。

「なんのつもりですか?」

藍が怪訝に問うとユイはちょっと得意そうにこう言った。

「お前さん方の分。一応把握している限りでは俺含め4人いたから作ってみたんだ。ほれ、食った食った。」

そういって座布団に座るとユイは自分の皿を持って食べ始めた。

いつの間にか、こいしもユイの隣に座って目を輝かせている。

「まず橙をなんとかしてください。」

「分かったよ。」

そう言うとユイは仰向けになっている橙の横に座ると、息があることを確認した。

そして橙の腹を勢いよく押す。

「がはっ!」

その途端橙は息を吹き返した。

「いっちょ上がり。気管がなんかで詰まってたな。」

そう言うと何事もなかったかのように食事に戻る。

じっとりと藍が睨んでくるが知らん顔だ。

「はぁ、後でちゃんと言っておかないと『ユイにはあまり近づくな』って。」

「…藍様?」

橙の意識が戻ったのか藍に声をかける。

「なんでもありません。ご飯食べましょう。」

そう言うと藍達も食卓に着き朝食をとり始めた。

その後、無意識のうちに3人の胃袋を握ったのをユイは知らない。

またもや関節話となってしまった…

一応、次回はちゃんとユイは地上に送り返します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ