鳳凰舞踏
ガツンッ!
妖夢の刀とキトラの拳がぶつかり合う。
ギリギリと妖夢の刀が拳に押されている。
妖夢はそれを何とか流すと白楼剣でキトラの腹を狙う。
それをキトラは余裕を持って躱すとお返しとばかりに妖夢の腹に蹴りを入れた。
「グッ!?」
腹に走った激痛に妖夢が一瞬力を緩める。
その機を逃さず、キトラは追撃に拳を打ち込む。
激痛に気を取られていた妖夢はその追撃を捌くことが出来なかった。
こらえきれずに地面に激突する。
地面に叩きつけられた妖夢は衝撃で動けなくなっていた。
(今度こそ…終わりでしょうか…もう、創筆さんも、霊夢さんも、魔理沙さんも、咲夜さんも…)
「ほれ、なに悟ったように勝手に人生終わりにしようとしてるの、立ちな! まったく1番の助っ人を忘れるんじゃないよ!」
そんな声と共に妖夢の体は抱き起される。
「…え?」
全身を深紅に染めたハルヴィアが妖夢を抱えていた。
「ヒーローってのは遅れてやってくるもんだろう? という訳で参上したよ!」
ハルヴィアは妖夢の顔を覗き込んで笑う。
「ハルヴィア…さん?」
「おうとも、天下のハルヴィアさんだよ。」
妖夢はキトラの方に顔を向ける。
キトラはハルヴィアの神霊達に苦戦している様だった。
「状況が飲み込めたようなら立ちな! どうせならくたばるまで進化の恩恵というものを実感しようじゃないか。」
妖夢はゆっくりと、刀を杖代わりにして立ち上がる。
「さて、行こうか。」
そういうとハルヴィアは鳳凰に戻る。
妖夢も息を整えて空中に浮かぶ。
そのままキトラに向かって2人は進み始める。
妖夢が3度も目の前に現れたことでキトラは露骨に面倒くさそうな顔をした。
「懲りないな、白玉楼の庭師。」
口調もかなり変化している。
「えぇ、時折私には不死鳥が取り憑いているんじゃないかと思うことが自分でもありますよ。」
「なら、まずその不死鳥を何とかする必要がありそうだ。」
そういうとキトラはまとわりつく骨の神霊をバラバラにする。
その後、一直線にハルヴィアに向かって突撃していく。
ハルヴィアもそれを予測していたらしく、ナイフを放ってキトラから距離を取る。
キトラはナイフを簡単に弾いて勢いをそのままにハルヴィアに向かっていく。
「それを待っていた。」
ハルヴィアはニヤリと笑うと首をかしげる。
「ッ!?」
次の瞬間キトラの左肩に剣が突き刺さっていた。
「ガァァァァッ!!」
あまりの痛みにキトラが叫ぶ。
「やっとだ…やっと悲鳴をあげたな?」
ハルヴィアがゆっくりとキトラに近づいていく。
ゆっくりと剣をキトラの肩から引き抜いていく。
ハルヴィアが完全に剣を引き抜いたところでキトラは素早く空中で後退する。
「『物体に付喪神・神霊を降ろす程度の能力』か…神霊で固められている以上私の能力が通じないと見た。」
「ご名答だ、このくそったれ。1432と2974の恨みをここで晴らさせてもらうよ!」
そういうとハルヴィアは両手を広げる。
その周りには大量の付喪神たちがうごめいていた。
「《篭目「4258768」》!」
付喪神たちが自由に動き回って弾幕を撃ち出す。
一見適当に振りまいているように見えるがその弾幕たちは確実にキトラに狙いを定めて接近してきた。
キトラはナイフを出現させてそれを凌いでいるがそれも時間の問題だ。
後ろから迫ってきた蝶弾に気が付かずにキトラは地面に叩きつけられた。
「すごい…」
キトラを翻弄するハルヴィアの姿に妖夢は驚いた。
当のハルヴィアは妖夢に近づく。
「ほれ、妖夢ちゃん。あんた自身の手で蹴りを付けてきな。」
ハルヴィアは妖夢の背中を軽く叩いた。
「私の仕事はここで終わりだ。アイツに恨みをぶつけられた時点でかなり満足してるからね。」
そういうとハルヴィアは戦場へと戻っていった。




