剣と拳
記念すべき第60話
強敵のいないキトラは虐殺の限りを尽くした。
無表情で淡々と襲い掛かる敵を倒す。
「おらぁぁ!!」
正面から攻撃を仕掛けてくる鬼。
キトラが軽く腹を殴ると鬼は腹に穴をあけて死んだ。
弾幕を撃ってキトラの足止めを企てる妖精。
能力でナイフを飛ばすと妖精は体を真っ二つ引き裂かれて死んだ。
その時キトラは歩みを止める。
少し間を置いたところに妖夢が立っていた。
手には《竜刀「鈴音絶辰 心流」》を構えている。
「キトラさん、あなたの攻撃はここまでです。」
妖夢はキトラに話しかける。
「ほぅ…君が『殺戮の魔天』の恋人さんかな?」
キトラは妖夢の握る神髄太刀に目をやりながら聞く。
「……。」
妖夢は無言で刀を正眼に構えた。
「世界は変わったな。男女平等化が進み、幻想郷でも男女関係なく弾幕勝負をする。」
キトラはそんなことを呟くと妖夢に向かってゆっくりと歩き出す。
「『蒼思奏愛』ですか…」
そういうとキトラは妖夢に拳を放つ。
それを妖夢は刀で流した。
それをはじめから読んでいたかのようにキトラは妖夢の太刀に腕を絡める。
刀を奪われじと妖夢は刀を下に下げる。
キトラも妖夢が何をしようとしているのか分かったようだ。
大人しく刀を放す。
2人は互いを警戒して一旦距離を取った。
「…あなた、強いですね。」
妖夢はキトラを見据えながら話しかける。
その間も刃は構えたままだ。
「もちろん。何も頭だけじゃない、戦闘力もある程度無くては『七賢人』なんて務まりませんよ。」
「それでも…ユイさんには敵いませんよ。《人符「現世斬」》!」
妖夢は弾幕を繰り出して自身も刀を持ってキトラに斬りかかる。
「たとえ『殺戮の魔天』を倒せずともあなたを始末することぐらいはたやすいことです。」
キトラは妖夢の繰り出す斬撃を完全に見切って躱していた。
周りから飛んでくる弾幕も簡単によけている。
どんなに鋭い斬撃を繰り出しても簡単によけられてしまうことに妖夢は焦りを感じていた。
「ふむ、のびやかに剣を動かしますね。攻撃に無駄がなく、防御も出来る。こちらから切り込むのは今のところ厳しそうです。」
キトラは余裕綽々といった様子で交わし続ける。
しかし、その目は確実に攻撃を打ち込める隙を虎視眈々と狙っていた。
「ふッ!」
キトラは妖夢の腹に掌底を打ち込む。
「グフッ!?」
予期せぬ攻撃に妖夢は眼を見開く。
「今は、ですよ。でもその『今』はもうずいぶん『前』になります。」
「クッ!」
妖夢は一旦距離を置くとその場に膝をつく。
キトラはそれを追うような真似はせずじっと妖夢を見据えた。
「そんな小細工に引っかかるとでも?」
「……。」
妖夢は黙ったままだ。
「では言い当ててあげましょう。空に仕掛けたその刃、まるわかりですよ。斬撃を空間に残したんですかね?」
狙っていた罠を言い当てられた妖夢は動揺する。
キトラはそれを楽しむように顎に手を当てた。
「ふふふ、戦っていた時間は筆遣いより短い間ですが手ごたえは貴方の方が上でしたよ。」
そういうとキトラはナイフを投げる。
(ここまでか…ユイさん、すいませんでした。)
しかし、キトラが投げたナイフはすべて妖夢の目の前で消えた。
「何やってるのよ、戦い始めたころのあなたの時間を見せてあげましょうか?」
目の前にはキトラのナイフを片手にまとめて持っている咲夜の姿があった。
「いいナイフね。鋭いし、練度も高い。よかったら紅魔館でナイフの調達係になってみない? お嬢様に根回ししとくわよ?」
「咲夜、敵を勧誘しないで頂戴。あくまでも敵は敵よ。」
「その通り、私のミニ八卦炉もあいつは敵だっていってるんだぜ。」
霊夢と魔理沙もキトラの前に立ち、それぞれの獲物を構える。
「それはしょうがないわね。じゃあ、さっさと黒幕を倒すとしましょう。」
そういうと咲夜は妖夢を抱え起こす。
「皆さん…!」
「はいはい、そういう感動はあと。今はあいつを片付けるわよ。《霊符「夢想封印」》!」
霊夢が叫ぶとお札が飛び出し、キトラの周りを囲う。
「喰らえ!《恋符「マスタースパーク」》!」
七色のレーザーがキトラを貫く。
「《幻象「ルナクロック」》、止まったときの中であなたはどれだけ理不尽に耐えられるのかしら?」
咲夜だけの世界で無数のナイフがキトラを囲う。
スペルカードを連続で3つ喰らったキトラは堪らず吹っ飛ばされた。
「さて、追いかけるわよ。押し込められた前線を上げないといけないんだから。」
そういうと霊夢はキトラを追いかけて飛び立った。
「まったく、あいつも素直じゃないな。妖夢のことを1番心配しているくせに異変解決の方が優先度が高いと言わんばかりに行動するんだから。」
魔理沙も霊夢の後を追っていった。
「ほら、いつまでもぼーっとしてないの。あなたに必要な時間は1秒もないのよ。」
咲夜も飛び立つ。
妖夢は刀を握りなおすと3人を追って飛び出した。




