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東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
竜人達の因縁
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向かい風

長らくお待たせしました。

本当に申し訳ない。

そして待っててくれた方(絶対にいない)、ありがとうございます!

藍はキトラとの戦闘で苦戦を強いられていた。

何より厄介なのはキトラではない。

その周りで戦っている「キトラの竜」達だ。

隙を隙を見てはこちらに銃を撃ってくるのでキトラばかりに集中することが出来ないでいた。

「くっ!」

「よそ見はいけませんね。」

そういうとキトラは藍の腹に拳を打ち込む。

油断していた藍はその一撃をまともに受けてしまった。

「がッ!?」

驚いた藍は後ろに一歩引く。

しかし、その間をキトラが一歩詰めて攻撃を続ける。

キトラの攻撃は弾幕ではなく肉弾戦。

中距離の弾幕戦を得意とする藍には明らかに不利な状況だった。

「まだまだ!」

藍は何とか体勢を整えるとキトラの攻撃を捌き始める。

打ち出される拳を流しながら隙を伺う。

「今だッ!」

藍は一瞬の隙をついて拳を叩き込もうとする。

しかし、次の瞬間何処からともなく飛んできた銃弾を躱さなければならず、攻撃は届かなかった。

再びキトラと藍は膠着状態に陥る。

その間にもキトラの攻撃は手数を増やし、藍は徐々に押されていた。

藍もその動きについて行こうとするが多彩な攻撃方法の前にはそれも無理な話だった。

再びキトラの攻撃が藍を捉える。

慣れない肉弾戦で体力を減らしていた藍は為す術もなく吹っ飛ばされた。

吹っ飛ばされた先では創筆が何とか藍をキャッチする。

「ふぅ…危ない危ない。でも暢気なことは言ってられないんだよねぇ。」

創筆の言う通り吹っ飛ばされた藍を追ってキトラがこちらに向かってきていた。

「スペル発動、《幻影「花鳥神鬼楼」》!」

創筆が唱えると花の形をした米弾と鳥の様な形をした中弾が規則的にキトラを狙う。

キトラは焦った様子もなく安全に弾幕を避けていく。

しかし、紫の弾幕よりも軌道が複雑なのかあっという間によけられることはなかった。

その間に創筆は筆を使って馬を生み出す。

「この狐さんを隙間妖怪のところに送り届けて。」

藍を馬の背中に乗せながら創筆は馬に囁く。

馬は一度いななくと妖怪の山に向かって走り出した。

「これで良し、と。」

振り返ると丁度キトラが弾幕を突破したところだった。

「やってくれたな。」

「やってやったよ。」

キトラの言葉を切り替えす創筆。

筆を構えてキトラを警戒する。

「自分の戦力を減らすことに意味なんてないだろう。」

「えぇ、でも自分の命を懸けてもみんなには生き残ってもらいたいので。」

創筆の言葉遣いはいつの間にか敬語に変わっている。

戦闘開始だ。

「《天眼「偽真の道釈画」》!」

スペルを唱えて弾幕を出現させる。

「精々あがいてみますか。」

そんな独り言をつぶやくと創筆は空に飛びあがった。

それを追ってキトラも空へ飛び出す。

「弾幕戦は私の得意分野。すぐにでも墜落させてあげましょうか。」

更にクナイ弾、鱗弾、ナイフを展開して空を彩る。

波のように不規則に迫りくる弾幕をキトラは紙一重で避け続けていた。

「ちッ! しぶとい!」

そんな愚痴をこぼしながら創筆は空の中を逃げ回る。

「《開眼「画鳳点睛」》、《開眼「画凰点睛」》!」

創筆が唱えて筆を振るうとそこには2羽の鳳凰がいた。

鳳と凰はわずかに違う。

雄を「(ほう)」雌を「(おう)」と言い、創筆はそれの違いを描き出すことが出来た。

「あの竜人を塵も残さず滅ぼして頂戴!」

鳳凰は左右からキトラに突撃し、鋭い爪を体に食い込ませる。

「クッ!」

キトラはもがいて何とかしようとするが鳳凰の爪が抜けないのか苦悶の声を上げる。

「こいつッ!?」

キトラは創筆を睨む。

焦った様子のキトラとは対照的に創筆は得意顔をしていた。

「師匠の修行はもっとえげつないですからね~。あまり舐めてかかると死にますよ?」

鳳凰の締め付けが強くなる。

「グッ…!」

キトラは苦痛のあまりうめき声を漏らした。

「舐めてはいないさ…だが舐めるなよ、このキトラを!」

キトラは鳳凰たちの上空に何かを出現させた。

「ッ!?よけろ!!」

創筆が叫びも虚しく鳳凰たちは上から降ってきたダイヤの銃弾を頭に喰らって墜落した。

「炭素、水素、酸素、窒素、硫黄…」

キトラは服を軽くたたきながら言う。

「タンパク質は主にこれで構成されている。そのタンパク質を私の体と一体化させればどうなるか。逃げることはできない。」

「鳳凰の爪か…」

創筆は悔しそうに歯をかみしめる。

「さて、あとは君だけだ。ほかにも何か召喚するつもりかい?」

「召喚じゃない、『創造』だ! 《開眼「画竜点睛」》!」

創筆がまた筆を走らせ竜を創造する。

「所詮は二番煎じ、何を呼び出そうと無駄なことよ!」

キトラは竜の頭上に飛び乗った。

しかし、創筆が飛ばしたレーザーにより、やむなく避けることになった。

「私に構ってる暇がありますか?」

次の瞬間、竜の口がキトラに迫る。

「なっ!?」

口が閉じきる直前に身を捻って躱すが完全には躱すことは不可能だった。

「グァッ!」

キトラの指先が消えていた。

「まずは指先。これで多少の足止めは出来ますかね。もっとも、援軍が来るかどうかはわかりませんが。」

創筆は弾幕を展開する。

「歴史の深淵に消えなさい、この邪竜。」

キトラにあらゆる弾幕が突き刺さる。

クナイ弾、米弾、蝶弾…

数えればキリがない弾幕が優しく、しかし確実にキトラの体力を削っていった。

「そうですねぇ…ユイ兄さんがあれくらいの硬さなら手加減しなくてもいいですね。」

創筆はさらに容赦なく弾幕を展開する。

「言ったはずだ…キトラを舐めるな!」

キトラが弾幕の中から抜け出す。

竜の頭に飛び乗るとその脳天に拳を叩き込む。

竜は頭を赤と共に散らした。

連鎖反応のように体もバラバラになっていく。

あまりのことに創筆は唖然とするしかない。

「そんな…どうして…」

「『どうして』か特別に教えてやろう。竜人は力任せの攻撃をすることは実はほぼない。力任せに戦っているようで実は相手の弱点を確実に突こうとするのが本来の竜人の戦い方だ。だから。」

キトラが創筆の後ろに一瞬で回り込む。

その移動速度は創筆が捉えることはない。

「お前との戦いも無駄なだけだ。」

そういうとキトラは創筆に手刀を叩き込む。

意識を失った創筆はそのまま地面へと落下していった。

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