総大将の相対
霊夢を筆頭に飛び出した幻想郷勢だったが結果的に妖怪の山の手前まで押し返されることとなった。
紫は予測が的中しつつあることを感じていた。
「紫様。」
「分かってるわ、藍。」
その言葉を合図にしたかのように前線で爆発が響いた。
「敵のお出ましよ!」
紫は隙間を開くとその中に飛び込む。
隙間の先には地獄が展開されていた。
鬼たちが頭のみを潰され地面に這いつくばっており、真ん中にはキトラが立っていた。
「野郎ォォォォ!!」
勇儀が怒りに任せた拳を放つがそれはいとも簡単に片手で防がれる。
「軽いな。」
ただそれだけをキトラは放つと空いた手で勇儀を殴る。
その瞬間勇儀の体は冗談のように吹き飛ばされた。
「その程度でお仲間の敵討ちですか? 志は尊敬しますが実力が伴わなくてはお話になりませんね。」
キトラは拳をさすりながら勇儀に語り掛ける。
その周りには霧が漂っていた。
「喜んで負けてやるよ。萃香に勝ったらな!」
突如、霧が凝縮しキトラの後ろに手の平ほどの小さな鬼が現れた。
拳を構えてキトラに向かう。
「喰らいな! 最高密度の一撃必殺だ!」
萃香が拳を叩き込む。
「ふむ、相性が悪そうですね。」
キトラはそう呟くと軽く手を動かした。
「なっ!?」
次の瞬間、目の前に現れたダイヤモンドの壁に驚いた萃香は目を丸くする。
ためらった萃香の隙をついてキトラは首根っこを掴んで捕まえた。
「『どちらの方が』とは言ってませんけどね。」
キトラは暴れる萃香の鼻を軽く突く。
「離せ!」
「良いですよ。」
そういうとキトラは萃香を放り投げた。
その瞬間萃香は霧になる。
「あぁ、1つ言い忘れていました。あなたの枷を強力な磁石にさせてもらいました。」
ガツンッ!
金属のぶつかり合う音と共に元の密度に戻った萃香が地面と衝突する。
その手足はキトラの言った通りぴったりと閉じていた。
「ッ!」
日頃の装飾品がいきなり枷になったことに萃香は驚きを隠せない。
「常日頃から鉄を持っていると危険ですよ。外の世界ではそれがないと生活できませんが。」
萃香は無言で身をよじるが枷が壊れるどころか離れる気配すらない。
「『物質を操る能力』、私の能力です。」
「ふうん…『物質を操る程度の能力』、ね。」
その瞬間萃香の体が宙を舞う。
「あまり舐めた口をきくんじゃないぞ。」
キトラが口調をがらりと変えて萃香をにらみつける。
その体からは可視化できるほどの殺気を放っていた。
「傲慢。」
何処からともなく声が響く。
「己を無敵と豪語する。まるで霧の湖に住む氷の妖精みたいだわ。」
「何処にいるんですか?」
「ここよ。」
キトラの背中に隙間ができる。
そこから出てきたのは妖怪の賢者と最強の式神だ。
「貴方の耳に隙間を開いて囁いていたの。くすぐったかしら?」
キトラの周りが弾幕で覆われる。
辺りを見回すキトラの目の前に藍が現れた。
「幻想郷の安寧の為に死ね、《式神「憑依荼吉尼天」》。」
弾幕が動き出す。
キトラは鱗を出現させて一時は防いだがやがて耐え切れなくなったのか後方に吹っ飛ばされた。
しかしその先に待っているのは紫の隙間だ。
隙間を通ってキトラは紫の前にやってきた。
「あまり物騒な言葉は使わないで頂戴、藍。でも今回ばかりは貴方の存在は厄介ね、《結界「夢と現の呪」》。」
今度は紫の弾幕が展開される。
キトラの顔は歪んでいた。
「この際、どこかの漫画のキャラが言ってたみたいに消火器を口の中に入れてみるのもいいかもしれないわね。」
指の響く音と共に弾幕はキトラに向かっていく。
「どうやら…本気を出す必要がありそうだ。」
キトラは呟くと弾幕を避け始めた。
弾幕を避けるスピードは加速する。
ものの数秒しないうちにキトラは弾幕の檻から抜け出した。
「あまいあまい。」
軽く笑いながらキトラは紫の目の前に現れる。
「なっ!?」
「紫様!」
振り被ったキトラの拳を藍が受け止める。
「一度撤退してください! これ以上は戦えません。」
「…ごめんなさい。」
紫は泣きそうな表情で隙間を開き、勇儀と萃香を連れて隙間の中に入り込んだ。
この間に会ったこと
キトラ「死ぬしかないな! 八雲紫!」
藍「紫様!」
紫「ごめんなさい。(逃げる」
あっれ~?




