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東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
竜人達の因縁
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弾幕宴会

かっこいい幽々子様が出没。(こら)

白玉楼視点。

妖夢は白玉楼の中庭でユイからもらった刀「鈴音絶辰 心流」を振っていた。

斬り、流し、防ぎ、突く…

様々な動作の中で思考に浸る。

(ユイさんが捕えられた…その敵が攻めてきた…私は一体どうすればいいんでしょうか…)

刀の軌道がややずれる。

妖夢はそれに気づくと振りなおした。

「うまくいった。」

それだけを呟いて妖夢は再開する。

(状況が逆ならユイさんは私の救出を優先するんでしょうか?)

妖夢は自分の立場をユイに置き換えて考える。

それでも答えは出てこなかった。

妖夢は無言で刀を振り続ける。

その時、白玉楼の門から爆音が響く。

「何がっ!?」

中庭にまで響く揺れに妖夢はしゃがみ込んで振動に耐える。

青い刀身がカタカタと音を立てる。

妖夢は門に向かって駆け出す。

門は破壊され、焼け跡が石畳についている。

破壊された門からは銃剣を持った兵士たちが現れた。

妖夢は腰から白楼剣を引き抜くと持っていた竜刀と合わせて二刀流の構えを取る。

兵士達の方も妖夢に気づいたようだ。

銃剣を構えて突っ込んでくる。

「《餓王剣「餓鬼十王の報い」》!」

スペルカードを発動し自らも刀で斬りかかる。

兵士たちは弾幕には銃で処理をし、基本的には銃につけられた剣で攻撃をしてきた。

だが、剣だけの腕前なら日頃から鍛えられた妖夢の方が上だ。

次々と兵士たちを斬っていく。

(こんな血に染まった私を見たらユイさんはなんて言うんでしょうか…)

妖夢はぼんやりと考えながら作業のように刀を躍らせる。

やがて立っているのは5人の兵士だけになった。

他の兵士とは違う傭兵ような身なりに妖夢は警戒した。

沈黙が降り立つ。

どのくらいにらみ合っていただろうか。

傭兵たちが銃を構える。

「《獄界剣「二百由旬の一閃」》!」

弾幕を展開し、同じように斬りかかる。

しかし、傭兵たちは驚異的な跳躍力で妖夢の斬撃を避けると空中で身を捻り空いた背中に銃弾を撃ち込む。

妖夢は前転して銃弾を避けるが続けざまに打たれる銃弾がわき腹を貫いた。

「グッ!」

妖夢の目が大きく見開かれ反射的に手で傷口を抑える。

それでも銃弾が止まることはない。

妖夢は倒れそうになる体に鞭打ち走って逃げた。

傭兵たちは手でサインを出し合うと2人が妖夢を追った。

妖夢は荒い息を吐きながら逃げ続ける。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

段々と視界がぼやけてくる。

ついに妖夢の体力が底を尽き倒れ始める。

(ユイさん…ごめんなさい…半人半霊って死んでも…ここで暮らせるんでしょうか?)

しかし、倒れそうになる妖夢を誰かが支えた。

「こらこら、ここで死んじゃだめだよ?」

赤と紺のシンプルな袴を着た少女は苦笑気味に話しかける。

背中には弓を背負っており、腰には30本程の矢が入った矢筒が下げられている。

その時、傭兵たちがやってきた。

少女の姿を確認すると銃を躊躇なく構える。

「助けて…ください…」

妖夢は息も絶え絶えに助けを求めた。

「なるほどねぇ、竜人の兵士かぁ…よく頑張ったね。」

少女は妖夢の頭を撫でる。

そのまま、妖夢を地面に横たわらせると懐から筆を取り出す。

「そこの兵士さんたち、ストップ!」

少女は筆を兵士たちに突き付ける。

「それ以上踏み込むようなら…ここで肉体とはお別れしてもらうよ?」

少女は凄みのある笑みを浮かべる。

傭兵たちは銃の引き金を引いた。

しかし、銃弾は突如現れた竜によって防がれた。

「ふふん、《開眼「画竜点睛」》!」

少女が得意げに言う。

竜はそのまま傭兵たちに襲い掛かる。

「私は弱っちいかもしれないけど能力に関してはかなり強い部類にいるつもりだよ?」

しかしその声が傭兵たちに届くことはない。

竜の口の端からは足が見えていた。

「こらこら、食べるなら残さず食べなさい。」

竜は足を飲み込むと姿を消した。

「これでよし、と。」

少女はくるりと妖夢に目を向ける。

「大丈夫? ではないか。」

そういうと少女は懐から黄金色の羽を取り出す。

それを妖夢の傷口に当てるとあっという間に傷口はふさがった。

「…ありがとうございます。」

「どういたしまして。私は創筆って言うんだ。君は誰?」

「…魂魄 妖夢です。」

「妖夢ちゃんね、おっけー。とりあえず屋内に行こうか。」

創筆は軽々と妖夢を抱え上げると屋根の下に連れていった。

居間に着くと幽々子が驚いた様子で立ち上がる。

「妖夢!?」

「幽々子様、申し訳ありません。」

「あのままだと死にかけてたよ?」

「そう、ありがとう。」

妖夢は何とか自力で立ち上がる。

「門は破壊され白玉楼の守りはゼロに等しい状態です。幽々子様、妖怪の山で紫様と合流しませんか?」

幽々子は目を閉じて黙考する。

「…そうね。妖夢、あなただけ行きなさい。」

幽々子の答えに妖夢は驚いた。

「幽々子様!」

「私は死んでいるから殺されるようなことはないわ。兵士たちも冥界であるここを制圧すれば死者はどうにでもなると思っているのかもしれないけどそんな益はどこにもない。妖怪の山に行って兵たちを集中させるよりここで足止めした方が良いんじゃないかしら。」

「私もそれは賛成かな。残酷だけどその方がいいとおもう。生者のあなたでは逆に足手まといだわ。」

妖夢の目からは涙が零れる。

「分かり…ました…」

「ありがとう、妖夢。生きて帰ってきてね。」

「はい、必ず帰ってきます。」

幽々子は優しい表情で妖夢に感謝した。

3人で白玉楼を出ると3人の傭兵が待ち構えていた。

「3対3ですね。」

妖夢が刀に手をかける。

「いえ、3対1よ。」

幽々子は妖夢の言葉を訂正した。

「それに、私にはいくらでも仲間がいるもの。」

幽々子が言うと魂たちが傭兵に群がっていった。

「行きなさい魂魄 妖夢。私と共に戦うことは許しません。」

「…失礼します!」

妖夢は魂たちの中でもがいている傭兵の横をすり抜け飛び出した。

傭兵たちがそれに気づき銃を構える。

「あら、私のことをお忘れかしら?」

幽々子の声と共に魂たちが傭兵を解放し、散っていく。

「いい夜ね。蝶が楽し気に舞い、桜は花びらを散らし、梅はその紅を染め上げる。こんな日にこそお花見をするべきよね。でも招待状を出し忘れてしまったの。残念だわ。」

傭兵たちは幽々子に銃口を向け発砲した。

しかし、亡霊である幽々子に銃は効かない。

「こんな日にこそ道化師は大歓迎よ。いい暇つぶしになるんだから。《華霊「ゴーストバタフライ」》。」

密度の濃い花火のような弾幕が傭兵たちに襲い掛かるのを後ろに妖夢たちは妖怪の山に向かって飛び続けた。

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