解呪
白玉楼に戻ってくると永琳が鬼のような形相で待っていた。
「あなたは、なにをしたのか、分かってるんですか!?」
柄にもなく声を荒げて一言一言を抉るように言う。
「あと少しで出血多量で死ぬ可能性だってあったのよ!?」
背中にいた妖夢は鈴仙に回収された。
「…悪かった。でも、結果的に解呪に必要な物は持ってきたから。」
そう言ってユイはポケットから櫛と髪飾りを見せる。
永琳はため息を吐くとユイから髪飾りと櫛を受け取った。
「すこし調合してくるから待ってなさい。」
永琳は去っていった。
ユイはしばらくの間そこに佇んだ後、白玉楼へ戻っていった。
妖夢といつも修行している庭の縁側に座り込む。
体の痛みは感じるが、不思議と痛みとしては感じない。
ただ、感覚として感じていた。
妖夢の眠っている部屋へ向かう。
襖を開けると部屋の中心に置いてある布団の中で妖夢は眠っていた。
布団の脇に腰を下ろして妖夢の顔をじっと見つめる。
「ありがとう…」
自然とそんな言葉が口から溢れる。
ユイは自分の発言に驚いていた。
妖夢の額にそっと手を当てる。
「まったく、恥ずかしい事を言わせる…」
ユイはそういうと立ち上がった。
(部屋でおとなしくしていよう。俺の体だってそろそろ出血多量で死ぬ可能性だって無くはないしな。)
後ろ髪を引かれる思いでユイは部屋を後にしようとした。
しかし、襖の前で少し立ち止まってふりかえる。
「作るか…」
そんな言葉を残してユイは今度こそ部屋を去った。
まだ、白玉楼にいるはずのハルヴィアを探す。
「ハル姐。」
居間にいたハルヴィアに声をかける。
「ん? どうした?」
「『あれ』を作りたいから呪いを解呪したら手伝ってくれ。」
「なるほどね。誰にだい?」
ハルヴィアの問いにユイは淀みなく答えた。
「白玉楼の庭師さんに。」
ハルヴィアは笑うとこう言った。
「こりゃ、妖夢ちゃんは悩むだろうね。今までのものか、あんたのものか。さて、爪を研いで待ってるよ。」
ユイは頷く。
その後、永琳から薬を受け取るとユイはそれをさっさと飲み干した、
「ハル姐、準備完了。さっさと始めようぜ。」
「はいよ、それでこそ私の弟だ。」
ハルヴィアの笑い声が白玉楼に響いた。
誤解を招くようなものが多々ありますが気のせいです(本当に)。




