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東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
竜人達の因縁
39/93

寄越せ

ユイくんが王道を繰り広げます。

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「おい、いるか? 答えが出た。」

「聞こえているわよ。夫は踊り疲れたみたいでちょうど暇だったの。」

随分と角ついたしゃべりが消えている。

「で? 答えは?」

「俺に妖夢やハル姐を守る為に、奪う力を寄越せ。」

「あら、素敵ね! それでこそあなたを選んだ甲斐があるわ!」

声は楽しそうに聞こえる。

「いいわねぇ! 愛の為に奪う力を求める、堪らないわ!」

興奮したように声が響く。

「ただし、主導権は譲らない。お前さんの力を支配する。」

「別に構わないわよ。」

「えらく素直じゃないか。」

「私の力を支配できた奴なんて私の夫だけだもの。」

「さっきも聞いたが夫って誰だ?」

「あら、知らないのかしら? 無理もないわね。高い山を隔てた世界だもの。私の夫はシヴァ。ある国の最高神よ。」

シヴァ神。

インド神話の最高神で、創造、終末、踊りと司っているものは多い。

「あなたかつて生活していたあそこにも多少のものは流れ着いていると思うわよ。阿修羅とか。元々私たちの暮らしている世界のものだったの。概念としてそっちに流れたみたいだけど、その概念が形を持ったのね。戦の化身、阿修羅。」

「じゃあ、お前さんは一体何者なんだ?」

声の主は少しの沈黙の後こう答えた。

「カーリー。一般にそう呼ばれているわ。他にもパールヴァティだとかドゥルガーだとか色んな名前で呼ばれてるけど、私はこの呼ばれ方が1番好きね。殺戮、破壊の神を担当しているわ。戦にそういったものは付きものだもの。あなたも心当たりはあるでしょう?」

それを聞いてユイは集落の時代を思い出した。

斬って、斬って、殺す。

「なるほどな。で? なにがお望みだ?」

それを聞くとカーリーと名乗る女神は蛇のような笑いを響かせた。

「現金な竜人さんね。私は別に何も求めないわ。ただ、次の殺戮の為に力を与える。愛する為に奪う。素敵ね。矛盾してそうで理にかなっているわ。あなたがもっと早く生まれてたら私の夫にしてたのに。」

カーリーは残念そうに言う。

「残念ながらあまりお前さんはタイプじゃないかもな。」

「あら残念。でも気が向いたらいつでも言ってちょうだい。歓迎するわ。」

「不倫じゃねえか。」

「それもそうね。じゃあ、あなたに力を与えましょう。でも、しばらくはあなたの行動を見せてもらうわ。特にあのキトラって子との戦いに興味があるの。もっと私を楽しませて。」

「力はいつまで俺に貸すつもりだ?」

「私の気が向くまで。あなたが死ぬまで貸すかもしれないし、3日かもしれない。」

「上々。」

ユイはそう言った。

「頑張って頂戴、『殺戮の魔天』さん。」

「その呼び方はやめろ。」

しかし、その場にカーリーの気配は無かった。

意識が浮上する。

徐々に痛みが身体中を走る。


<白玉楼>

「っっっがああああああ!」

叫び声をあげるような痛みとともにユイは目覚めた。

「大丈夫。落ち着いて。」

布団の脇にいた鈴仙がユイを押しとどめると注射針を取り出す。

腕に針が刺さり、ユイは意識が朦朧とした。

(あら、あの兎さん。第1の関門ね。)

ユイの頭の中に声が響くと眠気が消えた。

その様子に鈴仙が目を丸くする。

「なんで睡眠剤が効かないのよ!」

更に注射針を腕に刺そうとする鈴仙の肩に手を置く。

「紫さんを、呼べ。」

有無を言わさぬ口調でユイは鈴仙に言った。

鈴仙は頷くと部屋を出て行った。

「…あれ? 痛くない。」

少し違う。

痛いが倒れる程ではない。

動こうと思えば動けるし、なんなら剣も振れそうだ。

傷口からは相変わらず血が滲み出ている。

「力…」

自然とそんな言葉が口から出てくる。

その時、鈴仙に連れられて紫と永琳が部屋に入ってきた。

永琳はユイを布団に戻すと包帯を解いて様子を見る。

「血の勢いが強くなっている! 鈴仙、麻酔!」

「いや、いらん。痛くない。」

「そんなわけないでしょう!」

尚も、麻酔を打とうとする永琳をユイは手で制す。

「紫さん、隙間開いて。」

紫は怪訝そうに眉を潜める。

「どこへ?」

「月。」

簡素な回答に紫は絶句する。

「あなた、なんでハルヴィアと妖夢が月に向かったのか分かってるのかしら?」

「分かってる。」

「じゃあダメよ。そこでおとなしくしてなさい。2人を信じて。」

(お困りかい?)

その時ユイの意識が少し離れれたところに立たされる。

「この子は大丈夫よ。」

突然の口調の変貌にその場にいた全員が驚いた。

「あなたは?」

「カーリーよ。素敵な名前でしょう?」

そう言うとユイ、否、カーリーは艶やかに微笑んだ。

「…多重人格?」

鈴仙が呟く。

「失礼な兎ね。私はちゃんとこことは別のところにいるわよ。」

カーリーが子供のように頬を膨らませる。

「インドの神様…ですよね。」

紫が思い出したように言う。

「ご名答! あとで生首でもあげるわ。」

「遠慮しときます。」

紫は慌ててカーリーから目を離した。

「じゃあ、事情を説明するわね。」

そう言うとカーリーはユイに取り憑いた経緯を説明した。

「あのままじゃ、この子の彼女。死ぬわよ。」

カーリーは最後にそう締めくくった。

ユイの意識が引き戻される。

「そう言うわけだ。隙間を開いてくれ。」

「…やっぱり無理よ。」

頑なな紫の返事にユイはため息をついた。

「そうか…すまん。」

そう言うとユイは立ち上がり虚空を叩く。

裂け目が空中に現れた。

「なら、俺の独断で行くだけだ。」

「待ちなさい!」

永琳が止めようとするがユイは迷いなく裂け目に飛び込んだ。

裂け目が音もなく閉じられる。

こうしてユイは1人で月へ行く事となった。

ハル姐達の存在意義(泣

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