穢れなき勝負
短い!
次回もまた短めです。
申し訳ない。
「《付喪符「憑神宿器」》!」
ハルヴィアと豊姫の勝負はいきなり始まった。
背後から、様々な付喪神が現れ弾幕を振りまきながら豊姫に向かっていく。
付喪神達はなんの規則性もなく豊姫の周りを飛び回る。
しかし、依姫は付喪神や弾幕をごく自然に避ける。
「ふふふ、こんなものですか。」
豊姫が笑いながら言う。
しかし、豊姫が目をやるとそこにハルヴィアの姿はなかった。
「遅いねぇ。」
豊姫の背中を合わせる様にして豊姫の背後をハルヴィアは取る。
豊姫は振り向かずに閉じた扇子をハルヴィアの喉へ突き付けようとする。
しかし、それを容認する程ハルヴィアも甘くない。
首を傾げて避けると、豊姫に回し蹴りを叩き込む。
豊姫もそれを読んでいたのか、ふわりと跳び上がってそれを避けた。
下にいるハルヴィアを見ると、左目を瞑ってこちらを見上げていた。
「随分と余裕ですね。」
豊姫が声をかける。
「ん? 癖でな。感情を抑えながら戦うってのは案外難しくてね。冷静な判断力を失ってむやみに攻撃して、罠にはまったら抜け出すのは大変だろ? 私なりの小さな枷さ。」
豊姫は扇子を開く。
鳳凰の絵が美しく描かれている。
「月の首都を粉々にしたのにそうやって扇子に書いてくれるなんて月の連中は優しいね。」
「ですが、あなたのことではないと思いますよ。」
豊姫は微笑むとハルヴィアに向けて軽く扇子を振った。
次の瞬間その扇子からいくつもの竜巻が放たれ、ハルヴィアを襲う。
「翼持ちに風で勝とうなんて1000年以上早いぜ。」
ハルヴィアは右手を翼に変えると、竜巻に向かって羽ばたく。
風と風がお互いを打ち消しあい、真空が生まれた。
バンっ!
空気が戻る音と同時にあたり一帯に暴風が吹き付ける。
「風ってのは意外と厄介でな。私より歳食ったジジイ、ババアでも完全に操るのは不可能と言われている。完全に掌握が出来るのは天狗ぐらいだろうよ。」
そういうとハルヴィアは風を利用して、豊姫に接近する。
豊姫は扇子を閉じて応戦しようとするがハルヴィアの方が速かった。
ハルヴィアの拳が豊姫の腕に当たる。
豊姫は衝撃をうまく流せず、地面に叩き返された。
「万能な生き物なんてそれこそいないさ。月の民でも鳳凰でもな。」
ハルヴィアは弾幕を放つ。
豊姫も流石に危機感を感じ始めたのか顔に焦りが見えた。
なんとか避けながら隙を伺う。
豊姫はハルヴィアと距離を取ると扇子を開いた。
大きく振り上げ、振るう。
巨大な旋風がハルヴィアに降りかかった。
「ぐっ…」
その凄まじさにハルヴィアはその場で体を守る。
突風によるカマイタチが顔を抉る。
風が止んだときそこにはボロボロになったハルヴィアが立っていた。
あちこちから血を流し、皮の服を染め上げている。
「…分子レベルにまでバラバラにする筈の扇子なんですがね。なんで生きているんですか?」
「…無鉄砲で阿呆な弟がいるからだ。」
そう言うとハルヴィアは上を見上げる。
地球が、空に浮かんでいた。
「想いだけでなんとでもなれば苦労はしませんよ。」
「だが、それに見合うだけの力は持っているつもりだ。」
ハルヴィアは付喪神を呼び出す。
「付喪神達よ、あの澄ました月の使者のリーダーの顔をぶっ飛ばしてやれ。」
付喪神達は豊姫に飛びかかる。
しかし、全て防がれてしまった。
「この程度でなんとか…」
豊姫はハルヴィアに目をやる。
しかし、またハルヴィアの姿は消えていた。
豊姫の肩に手が置かれる。
後ろを振り向くと顔を血塗れにしながらも笑っているハルヴィアの姿があった。
「チェックメイト。」
そう言うと、ハルヴィアは豊姫の腕を締め上げる。
手から扇子が溢れ落ちた。
ハルヴィアはそれを素早く踏み、豊姫の抵抗の手段を奪う。
「扇子自体は確かに恐ろしい代物だろうな。だが、その分実践格闘がお留守になってるな。どちらか片方だけに力を入れてもあまり効果があるとは思えん。効果があるのは、自分より実力が下の奴だけだ。私も随分と舐められたものだねぇ。」
ハルヴィアはそう言うと閉じていた左目の瞼を開けた。
「勝負あり、さね。」
ハルヴィアは豊姫を解放すると扇子を拾い上げ、丁寧に払ってから豊姫に返した。
「さて、これでそれぞれ1対1になったわけだがどうする?」
ハルヴィアが問う。
「そうですね、総力戦でどうでしょう? 私もこの展開は予想していませんでしたし。」
豊姫が答える。
「総力戦か…乗った。ただ、しばらく休憩しようや。疲れたよ。」
ハルヴィアは妖夢を連れてくる。
「お疲れ様です、ハルヴィアさん。」
「うんにゃ。しばらく、休んでから決着らしい。妖夢ちゃんも体力回復しときな。」
そう言うと、ハルヴィアはその場に寝転び、大の字になって眠ってしまった。
「…図太い神経しているんですね。彼女は。」
いつのまにか依姫がハルヴィアの顔を覗き込みながら呟く。
「切り替えがしっかり出来る人なんでしょう。」
妖夢は苦笑気味に返すとハルヴィアの隣に座り、体力の回復に努め始めた。
だんだんあとがきで書くことが無くなってきた…




