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東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
竜人達の因縁
32/93

開花

久しぶりの本編。

少し感覚を忘れているので、誰これ感が否めませんがお許しください。


追記

ユイ君の師匠の能力が少々おかしかったので訂正しました。

ハル姐が「ユイと同じ能力」といっていたので被ってないとおかしい訳でして…

ユイは妖夢と木刀を両手に向かい合っている。

次の瞬間、無言で妖夢が斬りかかった。

それをユイは軽く木刀を傾けただけで流すと、もう一方の木刀で妖夢の脇腹に斬撃を叩き込もうとする。

しかし、妖夢はそれを落ち着いて対処するとカウンターを叩き込もうとする。

それがユイの狙いだった。

カウンターを更にカウンターを仕掛けて妖夢の木刀を弾き飛ばし、突きの動作で妖夢の喉元に木刀を突き付ける。

「勝負あり、かな。」

そういうと、ユイは木刀を退かした。

「…まいりました。」

妖夢も挨拶を返すとユイに弾き飛ばされた木刀を拾った。

「お前さんは反撃をする時に重心を傾ける癖があるな。その重心を崩されると一気に戦況が逆転するから、気を付けろ。」

「分かりました。」

妖夢と恋仲となってから3日程になる。

ユイは未だに妖夢とどう接していいのか分からずにいた。

妖夢からは「今まで通りで良い」と言われたがいまいち踏ん切りが付けられない。

自然とため息が口から滑り落ちる。

「ユイさん?」

「ん? あぁ、なんでもない。少し休むか。」

そういうとユイは縁側から立ち上がる。

木刀を掴むとゆっくりと動きを確かめるように木刀を振る。

(この感覚は嫌いじゃない。でも、時折不安になる。やっぱり寿命の違い、だろうか。)

竜人族は寿命で死ぬことがない。

妖夢がいくら他の人間より長く生きられるとは言っても、やはりユイと共にいられる時間には限りがある。

いずれは妖夢を見送らなくてはならない時が必ずくるだろう。

決して超えることの出来ない種族の違いがユイを不安にさせていた。

「どうすれば良い…」

小さな声でユイは自問する。

剣戟は突風を起こすまでに加速していた。

不老はいつでも解除できる。

しかし、だからと言ってどうにでもなる訳ではない。

結果、自分の体が動けなくなっても生き続ける。

それに、本来の老いが降りかかってくる可能性もある。

それを見て妖夢を心配にさせるのも酷な話だろう。

思考が同じ所を回ると分かるとユイはふう、と一息ついて動きを止めた。

「え…」

周りを見たユイは驚愕した。

空間に無数の裂け目ができている。

その奥には混沌とした世界が広がっていた。

「ユイさん…これはどう言うことですか?」

「あらあら、ここにきて新しい能力の開花かしら?」

そんな声とともに現れたのは大妖怪、八雲 紫だ。

「私や月の桃半神のようね。」

「桃半神?」

「月に住む『綿月わたつきの 豊姫とよひめ』の事よ。少しからかった事があるの。」

紫は若干苦い顔をする。

なにかしらのトラウマがあるのだろう。

「正直、こんな能力はいらん。」

ユイは吐き捨てる様に言う。

「あら? それはどうして?」

紫は意外そうに聞いた。

「空間を操った所で何か便利になる訳でも無いだろう。俺には魔法陣があるしな。それに、前例があるなら後例はいらん。」

そう言うと、ユイは自分の作った裂け目を力任せに殴って破壊していく。

「なんで、裂け目を壊せるのかしら? 普通は閉じるのだけど。」

「どんなものにも『破壊点』と言うものがある。物でも生き物でも、時に精神にも。そこを殴って破壊しているだけだ。」

紫の問いにユイは答えた。

いつの間にか裂け目は消えている。

「その能力。もしも、成長させたくなったら私の所にいらっしゃい。」

「おそらく必要ない。」

それを聞くと紫は残念そうな顔をする。

「そう。」

そう言うと隙間を開いて紫は消えていった。

「…凄まじい能力ですね。」

妖夢がやや固まったような口調で言う。

「原理はなんとなく想像がついた。空間に力に加える。ただそれだけだ。」

ユイは縁側に腰を下ろした。

「空間を裂くなんて…」

「いや、お前さんが前に使っていた剣術とそんなに変わらんよ。この前、別世界の妖忌から聞いた。『空気を斬るのに50年』。おそらく上位互換みたいなものだろう。」

ユイはため息を吐くと大きく伸びた。

「裂け目の向こうはなにが広がっているのかなんて誰もわからんだろうに。」

そう呟くと木刀を手に取り立ち上がる。

「再開しようぜ。」

妖夢はそれに無言で従った。

午後になり、ユイは白玉楼を出て人里にあるハルヴィアの喫茶店に向かった。

「いらっしゃい…ってなんだいユイじゃないか。」

「おう。」

ハルヴィアは厨房でコーヒーを淹れ始めた。

ユイはカウンターに座ってハルヴィアの様子を眺める。

「ハル姐。」

「ん? なんだい?」

「……」

ユイは何故か黙り込んだ。

「何かあるからこのカウンターに座ったんだろ? 支離滅裂でもいいから話してみな。」

そういってハルヴィアはコーヒーをユイの前に置く。

「少し前に妖夢と恋仲になったんだけど…」

「ほう、そりゃめでたい。」

「妖夢の恋人としてどう接していいのか分からないんだ。もちろん師弟としてはうまくやってる。ただ、どうにもそれの延長線にしか感じられないというか。妖夢を恋人としての線で見ることができないんだ。」

そういうとユイはマグカップを口に運ぶ。

ハルヴィアはしばらく考え込むような様子を見せた。

「ん〜っとさ。ユイは妖夢ちゃん以外に誰かと実質的な恋人になったことってある?」

「いや、ないな。」

「ならそれでいいんじゃないか?」

ユイは首を傾げる。

イマイチ分かっていないようだ。

「だからさ。お前さんが師弟の延長線上としか見れないなら、それを恋人としての線にしろって事。分かる?」

「なんとなく。」

「よろしい。つまり、態度を変えないことがあの子の為にもなるって事さ。なにか変化があったらそれこそ妖夢ちゃんも困るだろうよ。」

「変わらずに接し続ければいいってことか?」

「そういう事。」

そういうと、ハルヴィアは自分用に淹れていたコーヒーを一口、口に含んだ。

「それでハル姐、もうひとつ話があるんだけど。」

「なんだい?」

「新しい能力らしきものが出来たんだけど。技術とかじゃなくて本物の能力で複数持っている奴がいたっていう事例はある?」

その途端ハルヴィアがむせた。

「大丈夫!?」

「誰の所為だと…」

そこまで行くとハルヴィアは胸を叩いた。

「で、能力がもうひとつ生まれたってか。ちなみにその能力は?」

咳が落ち着いたところでハルヴィアは聞く。

「ん〜と、よく分からないけど、それっぽくいうなら『裂け目を操る程度の能力』かな? 原理は簡単、隙間に力を加えるだけ。」

そういうとユイはカウンターでそれを実践してみせた。

「正直どう使えばいいか分からなくて。」

「そうだな…実は1つだけ前例のある人物がいる。しかもユイの能力と同じだ。」

そういうとハルヴィアは人差し指を立てた。

「ただ、あまりソイツは能力をいい事に使わなかった。」

「そうか、ちなみに名前は?」

「お前さんが1番知ってる脱俗した竜人。」

「…師匠?」

「その通り。だけども、その能力は捨てたって話さ。『裂け目を操る程度の能力』と、『能力を喰らう程度の能力』を持ってたらしいよ。」

「…師匠は、何をしたんだ?」

「ユイから見て5代前の七賢人の殺害。」

ハルヴィアはしれっとそんなことを言ってのけた。

「師匠が…七賢人を…殺した…?」

ユイは驚愕する。

「なんでも、能力を得る為だったらしい。あんたが生まれるずっと前になるね。私も実際に見ていないから分からないけど」

「でも師匠がそんなことをするはずが!」

ユイは席から身を乗り出す。

「まあ落ち着きな。あんたの師匠はちゃんと良心ってものを持っていた。そのあとに脱俗して1人になったのさ。あんたが弟子になるまでね。」

そういうと、ハルヴィアは微笑んだ。

「あんたは、七賢人は正義って思っている節がありそうだな。でも七賢人が腐っている時代もあった。それが5代前だ。それを、アイツはその腐った奴らを全員殺したのさ。一時期は英雄として担ぎ上げられたが分かってたんだろうね。竜人の集落から姿を消したってことさ。」

ユイは自分のマグカップを覗き込む。

「師匠については分からない事が多かったし、正直知ろうとも思わなかった。」

「それを望んでいたんじゃないか? まずは、師匠のことより自分のことを心配しな。」

そういうとハルヴィアはマグカップを傾けて一息にコーヒーを飲み干した。

「ほれしっかりしろ、彼女持ち。私も彼氏でも探そうかね。なるべく長寿の彼氏を。」

「望みが高いな…」

ユイは苦笑する。

(こんな所でいつまでも悩んでいる訳にはいかないか。師匠の事とか色々あるけど、今を大切にしないと。)

ユイは決意を表すようにして、マグカップを手に取るとハルヴィアと同じようにコーヒーを一息に飲み干した。

「ごちそうさん。」

「はいよ、お粗末さん。いつでもおいで。」

そういって手早く会計を済ませるとユイは喫茶店から外に足を踏み出したのだった…


<組織のビル>

「ユイはまだ見つからないのか!?」

薄暗い部屋の中でキトラが部下達に当たる。

「申し訳ありません。ただいま早急に…」

それ以上その部下の言葉が続くことは無かった。

キトラが能力で部下の頭に巨大な杭を落とす。

部下は血だまりに沈み、そのまま動かなくなった。

「『あれ』を捜索に出せ!」

「『逆鱗』ですか?」

「違う! 〇〇だ!」

キトラが邪悪な笑顔を浮かべる。

「〇〇なら、ユイも手を焼くだろう。」

キトラが首を回す。

そこには、一見本物にも見える磔にされたボロボロのユイの絵 が実物大の大きさでライトアップされていた。

「俺を楽しませてくれよ? 殺戮の魔天?」

キトラの笑い声が夕方の都会に響き渡った。

師匠の過去を少し暴露。

さすが鬼龍の師匠、能力とかが御都合主義…

そして伏線がひとつ死んだ話でもある…

なんの伏線か知りたい方は第30話「戦場」から探してみてください。

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