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東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
竜人達の因縁
30/93

逆鱗

逆鱗に触れると祟りがくると言う…

祟りの前に殺されるとか言わないの(汗

ユイは森の入り口にて、キトラの兵達を木の上から見下ろしていた。

「多いな。」

気に上がって初めての一言がそれだった。

その言葉通り、森の周辺は大量の兵士達で覆い尽くされている。

「人間て繁殖力が強いんだな。」

「そりゃあ、個々が強く不老永寿の竜人はそんな事を気にする必要はないでしょ。」

そう返すのは元人間、現妖怪の創筆だ。

「竜人に性欲が無いみたいに言うじゃないか。」

そんな軽口を叩きながらユイは兵達の奥の方にいるマントを被った不審な部隊を発見した。

(やっぱりいたか。)

知らずのうちにユイの口からため息が溢れる。

「どうかした?」

「少しばかり面倒な連中がいる。」

その時ユイ達の後ろに降り立つ人影があった。

「なるほど…今日のキトラは随分と力を入れてるな。1番危険な『逆鱗げきりん』を持ってくるとは。」

師匠が冷静に部隊の名を告げる。

ユイの顔にうっすらと汗が滲む。

「俺を倒した数少ない奴らの1つだ。個々でも団体でも強い。そんなものに現代兵器を持たせたらそれこそ歩く災害だ。」

その言葉で創筆の背筋も自然と伸びた。

兵士達をいとも簡単に蹂躙してしまう姿を見れば彼がどれほどの実力の持ち主なのかは嫌でも分かる。

そんなユイをも倒してしまう部隊、「逆鱗」の力は計り知れない。

しかし、他の部隊が平均30人程度の所「逆鱗」だけは15人と数は少なめだ。

(勝てるかもしれない。)

「侮るな。奴らの恐ろしさは数じゃない。最高の実践経験とただ任務を淡々とこなす事のみに従事する姿勢だ。1人死のうと知った事じゃない。1人でも任務を達成できれば良いと言う死をも恐れない考え方だ。」

創筆の考えを握りつぶすようにユイは敵の細かい情報を述べていく内に改めて敵の強大さを思い知った。

「さて、予習が終わったところで開戦といくか。《魔天「道化師の仮面」》!」

ユイが叫ぶと大量の弾幕が現れ、兵士達を次々と倒していく。

初めて見る弾幕という攻撃方法に兵士達は混乱するばかりだ。

だが「キトラの竜」達は存在を知っていたのか落ち着いた様子で被弾を避ける。

「一撃必殺、使い回し可だ。」

そう言うと腰に下げた陰と陽を引き抜いて戦場へと飛び出した。

「いたぞ! 生け捕りにするんだ!」

銃を構えられたがユイは気にも止めずに「逆鱗」達へ一直線に向かって行く。

「逆鱗」達もそれを待っているのかそれを待つ。

「邪魔だ!」

ユイが飛び上がって「逆鱗」の1人に斬りかかる。

しかし、それを読んでいたかのように兵士はそれを避けると銃を発砲する。

「嘘だろ…」

それだけを呟くとユイは空中で身を捻ってなんとか銃弾を避ける。

しかし、後ろにいた他の「逆鱗」の兵士に銃弾を撃ち込まれた。

「ガァ!」

なんとか竜の鱗で貫通を防いだがその衝撃はユイを呻かせるのに十分な威力を持っていた。

(『魔法の黄金』でできた銃弾か…)

「逆鱗」に囲まれながらユイは他人事のように分析する。

「よくやった『逆鱗』。やはり君達に間違いはなかったね。」

軍服を着たキトラが拍手しながらいつの間にか「逆鱗」達の輪の中に入っていた。

「キトラァ!」

ユイが怒りに声を荒げる。

「おぉ、怖い怖い。だがこっちも君に用があってね。どうしても君を生け捕りにする必要があったんだ。」

そういうと手を叩いて鎖を出現させるとユイを縛り上げた。

「君の仲間はどこだ?」

キトラが聞く。

「…森の中だ。」

その答えにキトラはさも面白そうに眉をあげる。

「すまない。質問の仕方が違ったね。いけないいけない。幻想郷はどこだ?」

幻想郷。

その言葉を聞いた瞬間ユイの頭が真っ白になった。

(こいつ、俺がどこの差し金か知ってるのか。)

フリーズした頭でなんとかそれだけの考えを弾き出す。

「どうした? 答えないのか?」

「…知らん。」

次の瞬間、ユイの脇腹に痛みが走る。

「ガハッ!」

あまりの痛みにユイが吐血した。

「逆鱗」の1人がユイの脇腹を蹴ったのだ。

蹴った軍用ブーツには「魔法の黄金」の仕込みナイフが付けられていた。

キトラがユイに目もくれずに質問を続ける。

「君は幻想郷の住人をどれだけ知っている?」

「答える気は無い…ガアッ!」

今度は反対側の脇腹に痛みが走る。

同じように刺されたのだ。

「何が狙いだ…!」

拷問を屋外でやることの不自然さにユイは聞いた。

「なに、この森も支配しておこうと思ってね。幻想郷の前座に丁度良いとは思わないか?」

そういうと「逆鱗」が突撃していった森に向かって手を広げる。

創筆や師匠がいた木には誰もいなかった。

「狂ってやがる…ガッ!」

「口を慎め、『殺戮の魔天』。いや、『キトラの案山子』とでも呼んでおくべきか?」

そういってキトラはさも面白そうに笑う。

その声はユイを恐ろしく不快にさせた。

鎖に力を加えて壊そうとするが鎖はビクともしない。

「無駄だ。それは俺が作った超硬度を誇る鉄だ。簡単に壊されてたまるか。」

「ぐっ…」

キトラがゆっくりとユイの前に歩み寄ると顔を近づける。

「しかし、魂魄 妖夢か…少し調べたが白玉楼の剣士だそうじゃ無いか。君の話からすると彼女は弟子になったのかな? 」

そういうと、キトラはポケットから何かを取り出した。

ユイが付けていた妖夢のリボンだ。

「愛弟子に向かって君は最後になにを言ったのかな? 大体想像は付くさ。『そう易々とは死にゃあせんよ。』だろう? 君は自信過剰なところがあるからな。それに俺が鎌をかけた時の反応。君、もしかして彼女の事が好きなんじゃないか? それがこんなところで拷問の末に死ぬなんてね。もしかしたら正気を失うだけかも知れないけどね。何れにせよ幻想郷に関する事を全て吐いてもらうよ。」

そういうとキトラはリボンを放り投げた。

ひらひらと舞うリボンは銃弾の雨によりあっという間にボロボロになってしまった。

「さあ、拷問を続けよう。なあに、心配はいらないさ。ちゃんと情報をくれれば正気のまま幻想郷に返してやるよ。」

キトラは爽やかに笑う。

その声にユイの目から光が消える。

「キトラ…『逆鱗』…」

次の瞬間、ユイが顔をあげると、無邪気な笑顔をしていた。

その目に輝いているのは勿論、狂気だ。

ゲラゲラゲラゲラ!

ユイの豹変ぶりにキトラは勿論、「逆鱗」の兵士たちもギョッとした様に後ずさる。

「アァ…楽シイナァ…楽シイナァ! 殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル!」

そういうと空気が震え、大地が砕ける程、咆哮した。

「逆鱗」の1人が銃を撃つが銃弾はユイの咆哮で砕けてしまった。

ひとしきり咆哮するとユイはいとも簡単に鎖を引き千切る。

その目の焦点はキトラに向けられていた。

顔は相変わらず無邪気な笑顔のままだ。

「撃て!」

キトラの指示で銃弾がユイに向かって四方八方から飛んでくるがユイは陰と陽を振るって全て斬り落とした。

「ユイ、今回ばかりは止めないぜ。気が済むまで俺らを振るってあの腐った野郎をぶっ壊してやれ。」

陽が殺意をたぎらせた声でユイに言う。

「壊ス…? 壊ス…血ィ…血ィ…」

次の瞬間、息の合った動きで「逆鱗」が襲いかかってくる。

それらをユイは全て剣で叩き伏せる。

血を浴びてユイは笑顔を深める。

「殺ス…殺ス…アハハ! 殺ス!」

キトラに一直線に斬りかかる。

「そんな見えやすい軌道で斬れるとでも思っていたのか? 怒ったのか気が狂ったのかは知らないがそんなもので俺を殺せるとは随分と…」

しかし、言葉の途中でキトラの右頬を陰が擦り真っ赤な血が流れる。

ユイは首を傾げて笑う。

「血…アナタガ…1番綺麗ナ色ヲシテイルワネ?」

女性のような言葉遣いでケラケラと軽快に笑いながらキトラへの攻撃を強める。

「ぐっ…俺が…」

「オシャベリハ勝者ノ権利。アナタニソノ権利ハアルノカシラ?」

普段のユイとは到底思えない喋り方を続けながらユイは問う。

やがてキトラは森の入り口まで追い詰められた。

後ろではいつの間にか現れた創筆が木の上で弓を構えている。

「これで済んだと思うなよ! まだ、序の口でしかないんだからな!」

そう言うとキトラは大量の鉱石を作り出してユイに発射すると姿を眩ました。

しばらくの沈黙の後、ユイはその場に倒れかけた。

人の姿をとった陰と陽がいなければそのまま倒れていただろう。

「兵士達は?」

陰が創筆に聞く。

「全部倒したよ。残党は今頃彼の方が処理してるんじゃ無いかな。」

そう言って創筆は木の枝から飛び降りた。

「また酷い傷をこしらえてきたわねぇ。ほら、これ使いなさい。」

そう言うと創筆は陽に鳳凰の羽を渡した。

ユイに羽をかざすとあっという間に傷は消えた。

ユイの穏やかな息が聞こえる。

「なんだ、その気になればあいつでも『逆鱗』を倒せるんだな。」

そう言って「逆鱗」の死体を引きずって来るのは師匠だ。

「そんなもの引っ張って来ないでください!」

創筆が気味悪がって離れる。

「いいじゃ無いか。お、タバコ持ってるのか! 銘柄は『バイオレット』か。悪く無い。」

そう言うと師匠はどこからかライターを取り出して火を点け、一服する。

「そんなことより、魔法陣はどうなんですか?」

「作り終わったさ。お前さんが筆で生み出したものも含めてな。」

師匠がじとっとした目で創筆を睨む。

「…すいませんでしたね。」

創筆はそっぽを向いた。

ユイが眠っている中穏やかな笑い声が響き渡った。

次の日、転移し終わった森の中心でユイは創筆と師匠に別れの挨拶を告げていた。

「またな師匠、今度は地獄ででも会おうぜ。」

「普通は敵に言う言葉なんだがなぁ。」

師匠は苦笑気味に返す。

「創筆もいい仲間また持てよ。」

「はい。」

挨拶を済ますとユイは懐からカードを取り出した。

《隙間「夢幻幻想郷」》だ。

「さて、帰るか。」

掛け声とともにユイは発動させると隙間を開いた。

振り返ると見送りに来た2人の姿は陰も形も無い。

ユイは左手首に目をやるとそっと呟いた。

「妖夢はちゃんと修行してたかな?」

足を踏み出して隙間に入り込む。

いつもの奇妙な感覚を短い間感じた後、気が付くと紫の家に居た。

座卓では紫が茶を啜っている。

「おかえり、ユイ。」

「ただいま、紫さん。」

ユイは自分の故郷、「幻想郷」に帰ってきた事を実感して笑みを零した。

「さて、まず外の世界はどうだったのか聞きたいのだけど…その血に塗れた服をまず着替えてきなさい。」

その後、居間にやってきてユイの姿を見て藍が上げた悲鳴は辺り一帯に響き渡ったと言う…

色々と逆鱗に触れましたね。

キトラの最強部隊、逆鱗。

ユイの怒りで逆鱗に触れて。

血まみれのユイを部屋にあげたことで藍様の逆鱗に触れて…

あの狐の尻尾にダイb(殴

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