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東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
竜人達の因縁
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激突

おかしい…もっと能力同士がぶつかるようにしたかったんだがなんとも味気ないものになってしまった。

とてつもない音と共にキトラの作った巨大な鉄鉱石がユイの頭上に降り注ぐ。

「ははは! どうだ、『殺戮の魔天』! そろそろ降伏する事をお勧めするぞ!」

キトラの声が響き渡る。

「余計な…お世話だ!」

そう言うとユイは落ちて来る隕石に「砕」の竜人文字を貼り付けて回り、更に砕けた鉄をキトラに向かって飛ばす。

しかし、キトラも七賢人だ。

並大抵の竜人よりもよっぽど強い。

飛んでくる鉄を全て躱してみせた。

「甘い甘い! お前も落ちぶれたな!」

「くっ!」

ユイはキトラの落とす隕石を足場に空中からキトラに接近する。

陰と陽、時に太極にも変身させてキトラに斬りかかる。

だが、その度にキトラの能力で出現したダイヤモンドなどの固い物質の壁で防がれる。

陰と陽、太極なら簡単に斬れるが、その一瞬の間にキトラが後方に飛び退いて様々な鉱石を撃って来るのでなかなか攻撃を当てる事が出来ない。

「ユイ、このままじゃキリがない。」

「分かってらぁ!」

そう言うとユイは空中に飛び上がり自分の背後に大量の文字と弾幕を出現させる。

その目は澄んだ赤に染まっていた。

「《修羅「緋色の色眼」》!」

そう叫んだ瞬間、文字が思いつく全ての刃物へと姿を変え先に動き出した弾幕の後を追ってキトラに向かっていく。

キトラの目が大きく開かれる。

「この程度で…」

全てを言う前に轟音が鳴り響いた。

「滅べ。『5番目の車輪』。」

ユイは呟くと文字で出来た武器を消す。

文字の後には鉄のドームが出来ていた。

「っ!」

ユイが剣を構えたその瞬間ドームが割れ、キトラが出て来た。

空中に飛び上がり、ユイを見下ろす。

「お前がそんな隠し芸を持っていたのは驚きだ。だが、俺の方が一枚上手だった様だな。」

そう言うとキトラは右掌を天に向ける。

次の瞬間巨大な剣が現れユイに向かって振り下ろされる。

「なっ…」

あっという間に剣の刃は地面に食い込んだ。

「…ほう。よく躱したな。」

剣のすぐ右横にユイが立っている。

ユイの左腕が縦に半分となっていた。

白い骨が肉の間から見えている。

黒いリボンの一部がひらひらと地面に舞い落ちた。

「妖夢…ごめん。向こうで会うまでに剣術…磨いておいてな…」

ユイの周りがドス黒い気で覆われる。

次の瞬間辺りが消し飛んだ。

ユイを中心に半径10m程度のヒビが入る。

「まずい。狂気に飲まれるな!」

陽が必死にユイに呼びかける。

「大丈夫。自我はあるさ。」

落ち着いたユイの声で剣たちはホッと胸をなでおろした。

「ふん…空気だけ変えても所詮、磔の牢獄でのブランクは取り返せん!」

「返せるよ。」

ユイが淡白に返す。

「貴様を殺してその血肉を喰らい尽くしてやる。」

静かなまでな怒り。

それがユイの中に渦巻いていた。

魔法陣から「命剣 伊邪那岐」、「冥剣 伊邪那美」を取り出す。

「久しぶりにやるか、4刀流。」

ユイはお手玉の様に剣を器用にジャグリングしながらキトラに近づいて行く。

「その傷で俺を倒せるかな?」

そう言ってキトラは鉄の壁を作る。

不純物が一切入っていない純鉄の壁だ。

しかし、完全に遮断する前に壁はバラバラになった。

「何!?」

「邪魔、邪魔、邪魔。」

そういうとユイは壁の欠片の向こうから右の口角を持ち上げてキトラを睨みつける。

その口からは小さな鋭い牙が見えた。

独特のステップを踏みながらキトラに接近して斬りかかる。

剣の振り方も上下左右、軌道も十人十色ならぬ四剣四色な動きをするので、キトラの体には傷跡が増えていった。

「ほれ遅い。前右、後上、横中、前左。」

楽しげにユイは剣の軌道を口に出しながらキトラを着実に追い詰める。

ユイに銃を向ける兵士は創筆が弓矢で狙って倒した。

戦況はユイ達が優勢だった。

「ふふふっ、何も俺はお前に『磔の牢獄(あそこ)』にぶち込まれた事を怒っている訳じゃない。俺の弟子からもらった物を貴様に壊された事に俺は怒ってんだ。2974年も耐えてきたが今回ばかりは限界だ。死をもって償え。」

「ほう、あのリボンは弟子の物だったか。だが、何故リボン1つにそこまで執着する? 所詮はただの師弟ではないか。」

その言葉にユイの心臓は1度だけ強く脈打ち、心に困惑が広がる。

そのせいでユイは一瞬だけ動きを止めてしまった。

その隙をキトラが見逃す筈が無い。

懐から何かを取り出し、ユイに押し付ける。

「ガァァァ!」

ユイの身体から煙が上がりその場に崩れ落ちる。

離れたキトラの手にはスタンガンが握られていた。

「象すら時に心肺停止させるスタンガンだ。気絶しなかっただけ驚きなんだがな。」

「チッ!」

ユイは舌打ちをすると立ち上がろうとする。

しかし、体に力が入らないのか動けないでいる。

「ま、これでバイバイだ。楽しかったよ、『殺戮の魔天』。」

そういうとキトラは後ろを向いて本陣へ歩いていった。

その瞬間銃声が鳴り響く。

悲鳴が響き渡った後、銃声が止んだ。

キトラは後ろを振り向いて目を丸くした。

人の姿に戻った陰と陽が己の本体を手に兵士の血溜まりの中に佇んでいたのだ。

「…おや、ユイくんは素敵な仲間がいるんだね。」

「勘違いしないでください。あくまで、我々はユイの武器です。血を求むのならそれを叶える。抑止を求むのならそれを叶える。ただそれだけです。」

陰が冷たい声で答える。

その様はまさに「陰を司る」かの如く黒く鋭い気を放っていた。

「今は引き下がらせて頂く。機会があればお会いしよう。お互いに血のベールを被って。」

不協和音で陰と陽はそういってユイを抱え上げると、まほろばの森へ戻っていった。

「ユイさん!」

戻って来ると、創筆が心配そうにユイの元に駆け寄ってくる。

「大丈夫。意識はある。体が動かないだけだ。」

ユイは答える。

その時、師匠がユイにやって来た。

ユイの傷を興味深そうに観察している。

「…師匠、あと何日かかる?」

「早くて2日だ。」

「分かった。2日だな?」

そういうとユイは体を起こした。

「傷が悪化するから寝ていてください。」

創筆が注意するがユイは聞かない。

「治す方法ならあるさ。師匠、俺の力の戒めを解いて貰える?」

「はいよ、了解した。」

そういうと師匠は指を鳴らす。

ユイは「治」の竜人文字で左腕半分をあっと言う間に回復させてしまった。

「あと2日耐えればいい。ただそれだけだ。」

そういうとユイは体の力を抜いて体力の回復に務め始めた。

今度の予定は未定。

うっそだろお前!

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