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東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
竜人達の因縁
24/93

宿敵と救世主

てんやわんやな回です。

組織のリストを魔法陣の中に戻すとユイは部屋を出る。

部屋を出て扉を閉めると部屋の中から煙の匂いが漂ってくる。

ユイが資料に火を着けたのだ。

そのまま同じように他の部屋にも火を着ける。

やがて最後の部屋の扉を開ける。

そこは今までとは違う開けた部屋になっていた。

ユイは無言で臨戦態勢に入る。

そのとき、部屋によく響く声が響き渡った。

「よく来たな『殺戮の魔天』。」

部屋の真ん中でタクティカルベストを着た男が純金の直剣をもって立っていた。

黒い半袖を着ており、黒いチノパンツを履いている。

「…随分前に捨てた名だ。」

ユイは正面から相手を睨みつける。

その目は鋭い刃を連想させた。

男は動じずに手にした直剣を構える。

「挨拶をさせて貰おう。貴様が人生最後に聞く挨拶だ。俺の名はリュティエルセス。その首、俺に寄越してもらおう。」

「リュティエルセス…おたく、『首刈り』のリット(ギリシャ神話のミダス王の息子。剣で勝負を仕掛け、負けた者の首を刎ねた。)か。」

リットと呼ばれた男は無言でユイへの攻撃を始める。

ユイも魔法陣から「陽剣 太陽龍」と「陰剣 太陰龍」を呼び出して剣戟に応じる。

(なるほど…かなりの手練れだ。)

ユイは相手の剣を流しながらリットに問う。

「誰の差し金だ? ここの組織のトップか?」

「どうだろうな。知りたかったら倒してみたらどうだ?」

「じゃ、遠慮なく。」

そういうとユイは少し距離を置くと両手に持っていた剣をリットに向かって投げる。

もちろんリットはわずかに体を傾けただけで2本の剣を躱す。

「そんな程度か?」

その問いにユイは新たに「命剣 伊邪那岐」と「冥剣 伊邪那美」を魔法陣から取り出すと応酬を再開する。

あまりの猛攻にリットは防戦一方だ。

あるところまでユイは押すとユイは声をあげた。

「やれ。」

「承知。」

「おうよ!」

リットの後ろから声が聞こえる。

「何を…」

リットの声は最後まで続く事はなかった。

ザンッ!

何かを切る音がした後リットが倒れた。

後ろには憑神の姿を取った陰と陽が己の剣を持って立っていた。

その刀身からは血が滴っている。

「きっちり始末付けたか?」

「言われなくても殺ってあるさ。」

ユイが声をかけると陽が返した。

「そうかい。」

そういうとユイは「命剣 伊邪那岐」と「冥剣 伊邪那美」を魔法陣にしまうと部屋を出るために歩き出した。

その時黒い影がユイの後ろに立つ。

ドスッ

「ガハッ!」

いつの間にかリットがユイの後ろから腹に直剣を貫通させていた。

陰と陽に斬られた傷が見当たらない。

「どういう…」

「言い忘れていた。俺の能力は『己の細胞を操る』こと。細胞レベルで自分のクローンを作れるんだ。」

「…こりゃ…1本取られたね…お見事…」

リットは直剣を無造作に引き抜く。

ユイの腹に穴が開いた。

次の瞬間赤い液体がその傷を隠す。

ユイは糸が切れたように崩れ込んだ。

「「ユイ!」」

陰と陽が近付こうとするが、リットがユイの首筋に直剣を構える。

「動くな。一瞬でも動けばコイツの首が飛ぶ。いいご主人だよな。『きっちり始末付けたか?』だったか。確認不足だな。そこにあるものが全て現実だとは限らないのに。」

そういうとリットは直剣を上段に構えるとユイの首に勢いよく振り下ろした。

しかし、その剣が折れるのを見てリットは驚愕した。

「どういうことだ!」

「竜を単騎で倒せると思うな。思い上がった『首刈り』。」

次の瞬間リットの体が部屋の端まで宙を舞った。

ユイはゆらりと立ち上がる。

その首は鱗で覆われていた。

「今まで単騎で竜を倒した奴は世界でも数える程度しか無い。そいつらでさえ倒せたのは小竜程度のチミっこい竜だ。人間如きにこの首をくれてやる気はない。まだそこまで堕ちちゃおらんよ。」

リットは素早く起き上がる。

「チッ!」

次の瞬間リットが10人に増えた。

「殺してやる! 1人でも残ればこちらの勝ちだ!」

10の声が木霊となって部屋に響き渡る。

「うるせえうるせえ。これ以上お前のお遊びに付き合ってられるか。ただ最後に1つ。聞かせてもらおうか。お前さんの差し金は『キトラ』でいいんだな?」

「勝ってもいないのにそれを聞くのか?」

「まあそうだ。あとはお前さんを消し飛ばすだけだからな。」

「馬鹿馬鹿しい!バラバラにしてケルベロスの餌にしてやる!」

「あぁもういい、滅べ。《還元「混沌の嵐」》」

次の瞬間部屋に灰色の渦が現れる。

「なんだ!?」

「あまり使いたくなかったんだがなぁ。コイツは俺の中にある魔力を全部吸い取って魂ごと混沌へと『還元』する。じゃあな、『愚かな首刈り リュティエルセス』。天国でも地獄でも無いもうひとつの死の世界を楽しんで来い。もっとも、魂も消滅するがな。」

そういうと10人のリットは1人残らず塵となった。

後にはただ光とも闇ともつかぬ混沌が足元に広がっているだけだ。

「陰、陽。無事か?」

ユイが声をかけると混沌の上を陰と陽が歩いて来た。

「無事です。」

「こっちも大丈夫さ。それよりもお前の方が危ないだろ。魔力切れ。」

その瞬間、ユイは頭を抱えた。

「ほら、言わんこっちゃない。」

「世界がひっくり返ってる。気持ち悪い…」

そういうとユイは吐いた。

嘔吐物が混沌に飲み込まれていく。

それを見てユイはあまりの気持ちの悪さに意識を手放した。

「やっぱり起こしたみたいですね。陽、右側を抱えあげてください。私は左側を抱えます。」

「お前の意見に従うのは納得いかねえがまあいいさ。」

そういうと2人がかりでユイを持ち上げる。

「陰、お前の『陰極を操る程度の能力』でユイの腹を癒せないか?」

「無理です。あなたは陰陽性質表を見たことないんですか? 私は防御はできても癒すことはできません。それに恐らくリットのあれは『魔法の黄金』。古代ローマ時代は『帝国の黄金』と呼ばれ、竜人でも強制的に直すことは不可能な剣です。」

「そうか…」

その時部屋の外から警報が鳴り響く音が聞こえた。

ドタドタと兵士のやってくる音も聞こえる。

「まずいですね…」

扉が音を立てて開けられる。

数秒の間に3人は銃を持った兵士に囲まれてしまった。

「構え!」

銃口が陰と陽に向けられる。

2人はユイを1度降ろすと自分の剣を抜刀した。

「待て。」

その時、声が聞こえた。

兵士の一部が割れその間を何者かが歩いてくる。

「これは…《還元「混沌の嵐」》を使ったか。となるとユイ君は今、おやすみの時間かな?」

「貴様ぁ…」

「陽、落ち着け!」

今にも斬りかかろうとする陽を陰は必死に押しとどめる。

男はケラケラと楽しそうに笑う。

スーツを着ており、胸には赤いネクタイを締めている。

一見普通のサラリーマンのようだ。

唯一おかしなところを挙げるとしたら、左目が閉じられていることぐらいだろう。

閉じられた左目には斬られた痕が残っていた。

「アイツを…ユイを「磔の牢獄」に閉じ込めておきながら何の用だ! キトラ!」

「名前を覚えてくれていたのかい! 嬉しいね! でも君のご主人様に左目を奪われた事も事実なんだよ、陽君。実は幻想郷なるところと協定を結びたいと思っていてね。日本国にありながら独立を名乗っているんだ。よければ協力してくれないかい?」

「ぶっ殺す!」

陽が首に青筋を立てながら尚も斬りかかろうとする。

「断る。私達もユイもお前のような奴に貸す力はない。」

陰は冷静に返す。

「そうかそうか。そんなに君達は死にたがりだったかな? 残念だ。命は大切に扱わないとね。」

キトラは心底残念そうに言った。

右手を挙げると兵士たちが銃を構え直した。

「じゃあ、この辺で私は失礼するよ。この後に商談が待っていてね。取引先に失礼な印象を与えてしまう。あぁ君達、彼らの肉は一片も残さないでね。では。」

そう言ってキトラは軽く頭を下げると扉に向かって歩き出した。

その途中で手を1回叩くと混沌と化していた部屋は一瞬で元通りに戻った。

兵士達はキトラが扉を出て行くまでは待った。

キトラが出て行くと声が響いた。

「撃て!」

次の瞬間、銃が一斉に火を吹き、銃弾が3人に迫ってきた。

「もうダメか…」

「現代兵器の前ではあっけないなぁ。」

2人はそんなことを呟きながらも剣を構え銃弾を弾いていく。

しかし、その言葉の通り徐々に押され始めた。

その時、凛と響く声が2人の耳に入った。

「《開眼「画竜点睛」》」

次の瞬間竜が現れる。

突然の出来事に兵士達は一瞬唖然とするが落ち着いたように銃を竜に向けて撃つ。

しかし、硬い鱗に全て弾かれた。

竜が吠える。

そこからは一方的な虐殺だった。

尾を叩きつければ兵士が潰れ、爪を振れば兵士が斬れる。

まもなく兵士たちは全員地面に倒れた。

蹂躙が終わると地に伏せる。

こちらへの攻撃の意思は無いようだ。

「…大丈夫?」

その時、陰と陽は傍に少女が立っているのに気が付いた。

青ぶちのメガネをかけ、赤と紺の袴を着ており、脹脛ふくらはぎの下まで届くヒール付きの革ブーツを履いている。

「助かった。ただ、私らの主人が『魔法の黄金』で重傷を負っている。何か治癒を促進できるものがあれば頂きたい。」

陰が答える。

陽は竜とじゃれ合っていた。

「そうか、『魔法の黄金』か…ところでこの人、竜人?」

「そうだ。」

「じゃあ、すぐに傷が塞がらないわけだね。《開眼「画鳳点睛」》」

少女がスペルを唱えると空中から鳳凰が現れた。

突然の出来事に陰が警戒する。

「待って! 敵じゃないから!」

「…鳳凰なぞ呼び出して何をする気だ。」

「この子に癒してもらうの。」

そういうと少女は鳳凰に近寄る。

「よかったら、羽を貸してくれませんか? あそこの竜人さんの傷を癒したいんです。」

鳳凰は頷くと体を震わせた。

羽が1枚、体から離れる。

少女はそれを受け取ると鳳凰に向かって頭を下げた。

ユイの傷口に羽をかざすとぱっくりと割れた傷があっという間に塞がってしまった。

「あなたは一体?」

ちょう 創筆そうひつ。それが私の名前。これ以上此処には留まれないわ。鳳凰と竜、どっちに乗りたい?」

創筆と名乗る少女はそういうと、ニッコリと笑った。

えっと…1話で沈んだ悲しいキャラが一体。

ユイさんの宿敵が一体。

なんか伝説の動物を出現させるやばい少女が一体。

この小説チートキャラ多く無い?

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