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東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
竜人達の因縁
21/93

殺と恋:殺編

さつれんと読みます。

こんな風に一発で読めた方は誇っていいと思う。

出されたら俺はさつこいって読むと思いますが…

ユイは小高い丘で隙間の前に立っている。

周りにいるのは、八雲 紫、魂魄 妖夢、ハルヴィアの3人だ。

「んじゃ、行ってくる。」

まるで、買出しに行ってくる様な調子でユイは言う。

「待って頂戴。1つ渡し忘れていた物があったわ。」

紫は慌ててユイを止めた。

「なんだよ。」

やや不機嫌そうに振り向くユイに紫はカードのようなものを1枚渡す。

「《隙間すきま夢幻幻想郷むげんげんそうきょう」》よ。これを持って唱えれば私の家に転送されるわ。ただし1回きりだからよく考えて使って。」

「分かった。」

そういうとユイはカードを受け取ってポケットにしまう。

「気をつけろよ。」

そういうのはハルビィアだ。

笑顔で腰に手を当てている。

「敵地じゃ気をつけない方が難しいかもな。」

ユイは苦笑気味に答える。

竜人が戦場へ家族を送り出す時の鉄板の冗談だ。

こんな冗談が生まれるのも争いを繰り返していた竜人族ならではだろう。

妖夢はただユイを黙って見つめている。

そんな妖夢にユイは軽く手を振ると隙間に飛び込んだ。

「帰ってきた時の為に新しい着替え用意しといて!」

そんな言葉を残して隙間は閉じられる。

「じゃあ、お疲れ様。」

そういうと紫は新しく隙間を開いてその中に潜り込んでいった。

妖夢は少し悲しそうな顔をした後、

「では、失礼します。」

と言うとその場を去ろうとする。

「妖夢ちゃん、とか言ったか? よければ一緒に人里でお茶でもどう?」

と声をかけられた。

振り返るとハルビィアが妖夢の肩に手を置いていた。

「いえ、仕事が残っているので。」

そう言って断ろうとする。

「いつまでもその恋情を抱いてか?」

ハルビィアの遠慮のない一言に妖夢の足が止まる。

「何が言いたいんですか?」

警戒しながら聞くとハルビィアはカラカラと笑う。

「お前さんの恋のお手伝いでもしようかなってね。」

そう言ってハルビィアはウインクをする。

妖夢に断る権利は無かった…

-----------------------------------------------------------------------------

ユイはあるビルの屋上に立っていた。

足下には都会の夜景が広がっている。

「なにで光っているんだろう…綺麗ではあるな。建物は面白味のない形をしているが…」

きっと実用性のみを重視してこうなったんだろうとユイは自分に言い聞かせる。

「さて、侵入開始だ。」

誰にともなく呟くとユイは自分のいるビルの出入口へ向かう。

扉の前まで来ると漢字で「解」の字を浮かび上がらせると、扉を開けた。

ユイは幻想郷で日本語の文字を学んでいた。

竜人の文字でも良いが語彙の多さを考えるとそちらの方がメリットが大きかったので今は日本語を使っている。

ユイの灰色のパーカーが建物内の影と上手く溶け込んでいた。

ロビーと思わしきところまで来るとユイは跳躍して鉄骨梁の上に飛び乗った。

文字で刃渡り30㎝ほどのゲルカナイフ(クリリナイフ)を作り出すと腰にしまう。

鉄骨の上を器用に飛び回って情報を吐きそうな人間を探す。

その時、丁度怪しげな格好をした男が2人ユイの下を通った。

「幻想郷の支配なんて出来るのか? 向こうでは弾幕なんていう物騒なものを使うなんていうじゃないか…」

「なに、時代遅れた世界だからこそ簡単に今の兵器を使えばいつでも支配できるのさ。しかし、その場所がわからん…これでは手の打ちようがない。以前行方不明になっていた者達の何人かは幻想郷の事を細かく覚えていて証言に矛盾も一切ない。本当に忌々しい存在だよ。」

そんな話を耳に挟むとユイはしまっていたゲルカナイフを静かに引き抜く。

(まずは幻想郷のことを質問していた若い奴…)

そんなことを考えると鉄骨から一気に飛び降り空中で右肩から左の脇腹に向けてバッサリと斬っていく。

斬られた方は目を驚きに見開いてその場に倒れた。

「なんだ!?」

その音に幻想郷の説明をしていた人間が懐の中に手を突っ込もうとする。

しかし、時すでに遅し。

ユイに後ろから刃物を添えられていた。

ゲルカナイフは内側に湾曲した「く」の字が特徴で、首を切り落とすことに特化したナイフだ。

もともと狩猟に使われていたがその汎用性の広さから戦闘用としても使われている。

「何者だ!?」

「教えても意味は無かろう。」

脂汗をかきながら叫ぶ男にユイは静かに答える。

「…少しばかりお前さんが得意げに話していた『幻想郷の資料』とやらを自分の目で拝んでみたくてね。よければ場所を教えてくれないか?」

「…断る。」

「そうかい。じゃああの世の先祖にでも顔合わせてくるんだな。ロクな生き方も死に方もしませんでしたってな。」

そういうとユイは躊躇なく首に添えたナイフを右に動かした。

ゴトリ、と首が地面に落ちる音がする。

はぁ、とため息をつくとユイは遺体をそのままにしてその場を歩き去った。

どうせ血まで片付けなくてはいけないのだ。

掃除しようとしまいと同じだろう。

(新しい着替えをお願いして正解だったな。)

そんなことを思いながらユイは案内掲示板を見る。

しかし、「資料室」や「情報管理室」などの文字は見当たらない。

大方、この会社が真っ当ではない証拠だろう。

どうしたものか、と向かい側にあった長椅子に腰を下ろすと腕を組んで考え始めた。

その時、ロビーで大きな悲鳴が聞こえた。

(もうバレたか。)

考えれば当然だろう。

放置していたのだから。

「誰か警察を呼んでくれ! 事件だ!」

どこからか声が聞こえる。

(めんどくさい…)

そう思うとユイはフルフェイスマスクを文字で作り被る。

外からは目元以外が一切見えなくなる。

口のある部分にはドクロの顎がプリントされていた。

(これ多分どっかから引き寄せた感じだ…)

ユイの文字は作り出すだけではない。

呼び出すこともまた可能なのだ。

(ということは、)

ユイは「幻想郷資料」という文字を出現させてみる。

すると、紙が一枚出てきたがユイはすぐに焼却した。

自分の幻想郷の情報だ。

残しておいても意味はないだろう。

騒ぎは本格化し始めた。

別の通路では銃を持った警備員が走っていく。

潜入は長期になりそうな予感をユイは感じた。

ゆっくりと立ち上がると通路を歩き始める。

念のためゲルカナイフは魔法陣の中にしまっておく。

(それでも怪しいことには変わらないか。)

そんなことを思いながら部屋の看板を見て何か情報を管理している部屋がないか探していく。

「そこの黒いマスクをつけた奴! 止まれ!」

警備員の1人がこちらに銃を向けている。

ユイは面白がって立ち止まると振り返った。

「手を挙げろ!」

言われた通りに手を挙げる。

しかし、ユイの思った「手を挙げる」と警備員の思った「手を挙げる」は違ったようだ。

ユイは警備員の後ろに回り込むと警備員に手を挙げる。

ボクッ!

鈍い音がして警備員が崩れ落ちた。

ユイは警備員の首元を踏んでそのまま走り出す。

ポキリと嫌な音がして警備員は動かなくなった。

走りながらユイは地下の階層へ移動する。

(何かを隠す時に地の下に埋めるのはどんな種族だろうと同じはずだ。)

謎の持論を持ちながら…

ユイ君が結構エグい事しまくっております。

次は、妖夢とハルヴィアの恋話です。

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