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東方竜人郷  作者: 寝起きのねこ
竜人達の因縁
17/93

お呼び出し

1日に2話も投稿する鬼畜の所業。

ユイは自宅で椅子に座り、上白沢かみしらさわ 慧音けいねから借りた歴史書を開いて紅茶を飲み、昼下がりを楽しんでいた。

「ほう。そんな出来事があったのか。あの白澤を紹介してくれた魔法使いには感謝だな。近隣だったのは驚いたけど。」

そんな独り言を呟くと、紅茶を手に取ろうと身を乗り出す。

その瞬、間図ったかのようにユイの前に隙間が開く。

ユイはつんのめって隙間に入り込んでしまった。

「んぎゃ!」

そんな間抜けな声をあげて向こう側に放り出される。

ユイは受け身をとって地面に転がった。

部屋はそこそこ広い畳の部屋だ。

境界の主、八雲やくも ゆかりの家ではない事は確かだった。

「あんにゃろ。今度は要件も言わずに目的地に放り込んだのか?」

その時、前から声が聞こえた。

「あら、流石にそこまでする訳ないじゃない?」

顔を上げると紫が意地の悪い笑みを浮かべてユイの顔を覗き込んでいた。

「ほう、じゃあどんなご用件を申し付けるんだ? こちとら昼下がりのお茶の時間を無駄にしたんだ。これでお茶に付き合えなんて言ったらはっ倒すぞ。」

ユイは体を起こしながら紫に聞く。

途中で畳に土足で上がるのはまずいと思ったのか靴を魔法陣の中にしまう。

「じゃあ、まずはお茶に付き合ってもらおうかしら。」

容赦のないパンチが飛ぶが紫は隙間を開いてそれを防いだ。

淑女レディーに暴力を振るわないで頂戴。」

紫がかぼそい女性の様に身をすくめる。

「なら紳士に暴力を振るわせるような言動を控えろ。で、何の用だ?」

紫に聞くが左手から声が聞こえた。

「私がお願いしたのよ。あなたに会わせるようにね。今回は紫は関係ないわ。」

ユイは今度は左手を向く。

そこには白玉楼の主人、西行寺 幽々子が座布団の上に行儀良く収まっていた。

「お前さんがいるって事はここは『白玉楼』っていう所か。」

「その通り。ようこそ『死者が転生を待つ玉楼』へ」

「どうも。来れて光栄だよ。」

彼女の前に置いてある机には何もなく、少し寂しい雰囲気を漂わせている。

机を挟んだ幽々子の向かいにも座布団が2つ並んでいるのを見かけたユイは1つに静かに腰を下ろす。

なお、座り方はあぐらなので、幽々子の様に座布団の中には収まらなかったようだ。

「紫もよかったらかけて頂戴。一応、彼の主人でしょう。要件ぐらいは伝えておきたいわ。」

それを聞くと紫もユイの隣に腰をおろした。

「紫さんは関係ないのに隣に座るのか?」

ユイは口角あげてを幽々子に問う。

「そうねぇ。紫が動く訳じゃないから。でもあなたに働いてもらうなら主人にも知ってもらわないといけないでしょう? 飼い犬が急に七面鳥を持って来ても飼い主は困るでしょうから。」

一理ある、ユイは頷いた。

「でも、竜人を犬にするな。俺は利用されても飼われたりはしないつもりだ。」

その言葉に紫がクスッと笑った。

ユイは無視して続ける。

「じゃあ、改めて何の用だ。」

「妖夢〜、4人分のお茶とお菓子を持って来てくれるかしら?」

「かしこまりました!」

遠くから返事が聞こえる。

「おい、人の話を聞け。」

幽々子はユイに向かって微笑んだ。

「お茶やお菓子がないと口っていうのはどうにも軽くならないのよねぇ。」

それが合図だったのように白玉楼の庭師、魂魄(こんぱく) 妖夢(ようむ)がお盆に湯呑みを4つ乗せて運んできた。

ユイに気付いたようで湯呑みを机におく手を止める。

「あなたは確か竜人の…」

声にはやや棘があるように聞こえるのは気のせいでは無いだろう。

「ユイだ。文句ならお前さんのご主人にでも言うんだな。俺は呼び出されただけだからな。」

幽々子は黙っており、そこからは何も読み取ることは妖夢には出来なかった。

「失礼します。」

妖夢が退室しようとすると幽々子がそれを止めた。

ユイを見ながらも妖夢は隣に用意された座布団に腰をおろす。

異変の所為か妖夢はユイに対して苦手意識を持っているようだ。

しばらくの間4人は無言で茶を啜る。

「あなたには2つ要件があるの。まず先に1つ目の要件ね。ある時、急にあなたに貸した魂が全部帰ってきのだけどあれはどういうことかしら?」

幽々子は湯呑みを傾けて一息ついてから切り出した。

それに対してユイはしばらくの間黙った後答えた。

「俺の知り合いが幻想入りしたんだ。ソイツの能力は『物体に神霊・付喪神を宿らせる程度の能力』。それを使ったんだ。」

「骨を依代にしたって事かしら?」

「概ねそういうことだ。」

それを聞くと幽々子は考え込む様なそぶりを見せた。

「じゃあ、代償の件は喋っても良いと言う事かしら?」

幽々子は柔和な笑みを浮かべながらとんでもないことを口にした。

しかし、ユイもそう来ることは分かっていたのだろう。

返事を返す。

「その問題をどうにかする為に2つ目の要件があるんじゃないのか?」

「関係ないかもしれないわよ?」

「そうなったらこの玉楼を分子状態(レベル)にまで粉々にするだけさ。もう少しかけらは大きかもしれないがな。」

そう言うとユイは不敵な笑みを浮かべる。

その様子に幽々子は苦笑気味に両手の平をユイに向けてかざす。

「分かったわよ。さすがに地獄の方で預かっているものだからそうやすやすとは壊させないわ。2つ目の要件はその代償に関することよ。あなたには妖夢の剣術指南をして欲しいの。」

「幽々子様!?」

驚いたのは妖夢だ。

「そんな話聞かされてません!」

「えぇ、今決めたもの。」

「そんな滅茶苦茶な!」

妖夢はなんとか幽々子に思い留まらせようと必死に言葉を紡ぐ。

「じゃあ命令よ。魂魄 妖夢。ユイに剣術を教えてもらいなさい。」

「…分かりました。」

命令とあっては断れないらしい。

「嫌なら別に拒否してもいいんじゃないのか? 俺だってそこまで剣術は詳しくないし、きっちり教えられる自信もない。」

のんびりとユイの声が響く。

妖夢はユイをにらんだ。

「命令とは主人のことを第一に思って行動せよ、と言うこと。そうなった以上断ると言うことは主人を裏切ることと同義です。」

「ほう、従者っていうのは面倒臭いんだな。」

相変わらずユイは飄々とした態度で妖夢の相手をする。

妖夢は無言で太刀に手をかける。

「悪かったって。だから獲物を構えようとするな。そういえば、俺は家からここに通うことになるのか? 期限とかは?」

「部屋はこちらで用意するわ。通うも住み込むも自由よ。期限は…そうね。あなたが1本取られるようになったら、なんてどうかしら?」

「長くなりそうだ…まあいいさ。紫さんは何か異論は?」

急に話を振られた紫は飲んでいたお茶に咽せた。

「…ないわ。」

なんとかそれだけを口にする。

「ナニやってんだか。じゃあ、そういうことで。」

こうしてユイの剣術指南が始まった。

今思ったけど、リアルタイムの事ここに書くと「そんなこともあったな」って思う人と「ナニ言ってんだ?」ってなる人がいるよね。

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