それぞれの為に
だめだ、ユイ君がめっちゃしょうもないものの為に戦ってるw
妖夢と屠自古は魔法の森の上空を飛んでいた。
「随分と辺境の地にあるんだな。結界の近くだから魔力も豊富だしただでさえ魔力が濃いのにもっと濃くなってる。」
「あの骨に刻まれていたのは結界の警備ですからね。安否を確認するにはそれは1番なんでしょう。」
やがて、2人は森と結界の接点の近くにやってきた。
「おい、いかにもな家があるぞ。」
屠自古が妖夢に声を掛ける。
「やはり何かありましたね。おそらくそこを拠点にしているのでしょう。」
そういうと2人は臨戦態勢に入り、家の前に降り立つ。
家の前ではハンモックが吊るしてあり、そこで男が寝ている。
妖夢が抜刀した状態でハンモックに近づく。
男の服装はダークグリーンのミリタリーキャップに灰色のフード付きパーカー、黒の長袖服に隙間の模様をあしらった黒いデニムパンツを履いており、靴はハイカットのスニーカーを履いている。
「起きろ。」
「…ん?」
男が目を開ける。
妖夢は静かに刀を男の喉元に突きつける。
「屠自古さん、捕まえました。」
「お前さんが誰かは知らんが、抜刀した状態で後ろは振り向かないほうがいいぞ。うっかり相手の喉元を搔き切るかもしれないからな。」
「余計なお世話です。」
そう言ってハンモックに目を向けるがそこにさっきまでの男の姿はなかった。
「どこに!?」
「こうやって逃げられることもあるしな。」
上から声が聞こえる。
2人が顔を上げると屋根のヘリに男が座っていた。
「俺は竜人のユイと言う者だ。随分と俺も鈍ったもんだな、以前は夜襲なら足音が聞こえる時点で起きれたもんだ。で、寝首を掻きに来た奴の顔を見れば、華の歳した少女2人だとは。」
ユイ、と名乗る竜人はため息と共に顔に片手を当てる。
「お前があの骨の術者か?」
「なんで友好的な態度を取らない阿呆の問いに答える必要がある?」
屠自古の問いにユイは問いで返す。
「あなたは不確定な要素を多分に含んでいるからです。もし友好的では無かったら首を持って行かれるのは此方だからです。」
ユイの問いには妖夢が答えた。
「なるほど、生憎ちゃんと問うてくれれば質問には素直に答えてやったのにな。」
「妖夢、こいつハナから答える気がなさそうだ。」
「えぇ、そのようですね。あまり手荒な真似はしたくは無かったのですが。」
「初っ端から手荒い真似してきたのはどっちだ?よく言うだろ、『人は第1印象が全てだ』ってな。」
「残念ながらこっちは半人半霊と亡霊なんだよ。だからその規定には入らない。」
「じゃあ。こう言い換えてやろう、『半人半霊と亡霊は第1印象が全て』なんt…」
ユイが言い終わる前に妖夢が切り掛かってきた。
「《妄執剣「修羅の血」》!」
鋭い斬撃がユイに向かって飛ばされる。
その攻撃にユイは無造作に右手をあげて攻撃を防いだ。
右手は無骨な鱗で覆われている。
「おいおい、人が喋っている間に攻撃はするなって。人型とはいえ一応竜なんだぜ。そう易々と斬れるとは思わんでくれ。鱗を出現させてる時だけだがな。」
「くっ!」
余裕綽々と言った様子のユイに妖夢は距離を置いた。
「ならこれはどうかな?」
いつの間にかユイの後ろにいた屠自古が雷を纏った拳をユイの首筋に叩き込む。
その瞬間ユイの真上に雷が轟音を立てて落ちた。
「なるほど、電気っていうのは凝り固まった筋肉をほぐす能力を持っているのか。痺れるのが難点ではあると思うが。」
そういうとユイは屠自古の襟首を掴むと屋根から地面に放り投げた。
「嘘だろ…」
なんとか空中で体制を立て直した屠自古はそんな言葉を呟いた。
「正直言って、こちらに戦意はない。用件があれば言ってくれ。」
「では、地に倒れ伏していただきましょう。」
「それは用件ではなく脅迫だ。脅迫と用件の違いが分からないお前さん方に俺は驚愕しているんだがな。」
ユイは妖夢とそんなやりとりをすると屋根から飛び降りた。
「取った!」
ユイの足が地面に着く前に妖夢がスペルを発動させる。
「《修羅剣「現世妄執」》!」
弾幕がユイを囲う。
「あっ、マズイ。」
そんな声を最後にユイは被弾する。
「よくやった、妖夢。これで一件落着だな。」
屠自古がそういた時。
「イッテェ…」
そんな声と共にユイは立ち上がる。
「なんで無事なんですか…」
「普通は被弾したら無事では済まないぞ。」
「一応訓練したからな。そう易々とは死なないつもりだ。」
「化け物だ…」
ユイはニヤリと笑うとスペカを発動させた。
「安眠の邪魔をされてこっちも気が立ってるんだ。悪く思うな。《竜将「盤上の戦略」》。」
飛び上がってレーザーと追跡弾で2人を着実に追い込める。
「危ない!《雷矢「ガゴウジトルネード」》!」
雷がユイの放った弾幕をいくつか消すがそこから逃げ出すことも出来ずに同じ様に弾幕を避け続ける。
「どうだ?盤上の遊戯の様に相手を反撃の余地無く『詰み』へ向かわせる。ここから逆転ができるなら見せてくれ。」
「あなたが盤上で遊びたいのなら私たちはその遊戯盤をひっくり返すだけです。《六道剣「一念無量劫」》!」
弾幕を纏った刀で妖夢が一閃すると弾幕が次々と割れていく。
勢いそのままに妖夢は弾幕の間をくぐり抜けユイとの距離を素早く詰める。
「なるほど。俺も随分慢心していたんだな。ちょいとばかし本気を出すとするか。」
次の瞬間ユイの姿が消える。
「どこに!?」
「後ろだ。」
妖夢の体が吹っ飛ばされる。
「っ!?」
ユイの前には灰色のコートを着た男が立っており右手の平を妖夢に向けて立っている。
コートの下には同じように灰色の迷彩戦闘服を着ている。
「お前も優しいね。」
ユイの手には2振りの剣が握られている。
「その様子ですと、斬りに掛かってそうでしたから。」
「《三太刀「命剣 伊邪那岐」》、《四太刀「冥剣 伊邪那美」》はなかなか便利な剣でね。」
「しかし、それを使うということは手加減する気がないということですよね?」
男は疑問形で聞いているが声の含みからして確定している事を知っているのだろう。
「その歯止めとして、《召喚「剣帝龍 太極」》で君を呼んだんじゃないか、太極。」
「剣を持って剣を制す、ですか。剣としては剣で戦いのですが。」
その時、屠自古がユイに向かって弾幕を撃つ。
「ぼーっとしてる暇があるのか!」
ユイと太極という男は慣れた様子で弾幕を躱し始める。
「後でな!お前さんは吹っ飛ばした方を頼む!」
「承知!」
そういうと太極は妖夢の方へ飛んでいった。
「さて、汝は如何程のものなりや?」
ユイが屠自古に問うたその時。
「《恋符「マスタースパーク」》!」
横から現れた巨大な七色のレーザーにユイは飛び退く。
「まだ仲間がいたのか。」
「主役は遅れて来るもんだろ?」
ミニ八卦炉をユイにむけて構えた霧雨 魔理沙が言う。
「しかし、あまりに遅れすぎると仲間が死ぬこともある。」
「だが、今回は間に合った。」
「今回が常に続くわけではない。」
「未来を見据えるのは大事な事だがそれを恐れて何もしなかったらそれこそ意味はない!」
「なるほど、一理ある。」
そう言うとユイは空へ浮かび上がり魔理沙に剣を向ける。
「安眠を妨害された代償。お前さんに払えるかな?」
「異変を起こす奴に安眠する資格はない!」
そう言うと魔理沙は箒に飛び乗り弾幕を撃ち始めた。
睡眠癖は誰から受け継いだんでしょうね?




