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崎守さんは姉が好き  作者: たまや
1/1

崎守家の日常

いつからだろうか。

私、崎守奏が意識をし始めたのは。

本の昔、それとも最近。そんなことすらわからない。

それに今はどうだっていいわけで。

私は姉が好きなのだから。



「奏ー、ちょっときてー!」

朝早く、鳥がさえずりぽかぽかと暖かい陽気。私を呼ぶ声は姉の葵である。その声に軽い返事を返してから立ち上がり隣の部屋へと向かうと姉さんは右手を差し出し口を開く。

「こっれ美味しいよ!!めちゃんこ甘い!惜しいけど葵にやんよ!」

そう言って差し出された右手には食べかけのプリン。半分ほど食べられた容器が握られていた。

「食べかけって……」

「なーに?嫌なのかよー?なら洗えばいーだろ!」

不機嫌気味になる姉さんはそっぽを向きテーブルのスマホに手をかけるとそのまま寝転がってしまう。

「ん、ありがとう。容器は返すね」

「いや、いらないからな!?捨てて!?」

そんなやりとりを終えてから私は自室へと戻った。


姉さんは昔から優しく喧嘩なんてしたことがなかったほどにおしとやかで、けど口は男性のようないわゆるボーイッシュというやつなのかもしれない。そんな姉が昔から私は大好きだ。それは人としてではない。

「姉さんの食べかけのプリン…私にはそれだけでも高級なものへと変わる。姉さんとの関節キス…いただきます」


姉さんの使用したスプーンをねぶりはぶり堪能しながら口の中にプリンを放り込み惜しみながらも容器をゴミ箱へと捨てた。私は変態ではない。ただ純粋に姉さんが好きでたまらないだけ。人としてではなくちゃんとした好きな人。付き合いたい。つまり恋人になりたいわけだ。


2、姉さんは天然


私は姉さんによく聞かれることがある。

内容はくだらなく馬鹿げたもの。学習しないのかこの姉は。と、思う節もあったが今となっては愛おしく、その言葉を言われることを待っている。私を見つけた姉さんはパタパタと忙しなく腕を振って私を呼ぶ。

「奏ー!!やばい!ほんとやばいから!どーしよ、スマホ消えた!!しらねーか!!?」


姉さんはよくスマホを無くす。ただ、姉さんはうっかりだが外におき忘れたりはしないわけで、事件はすぐに解決へと道を進める。


「知らないよ?なんなら姉さんの右手のスマホで掛けてどこにあるか確認してみたら??」

「あ!そうだな!奏さすがー!よし、と。私の番号はっと…」


小さく口横から舌を出しながら真剣にスマホへと番号を打ち込んでいく。いつも姉さんは気づかない、スマホをすでに持っていることを。姉さんはおじいちゃん特有の眼鏡を頭の上に掛けてしまい見失う現象に近いことをよくしてしまう。そんな姿もアホ可愛い。


「姉さんその手に持っているスマホは誰の?」

「ん?そんなの私のに決まってんだろー?」


姉さんのすごいとこは自分のものだと気づいているのにもかかわらず頭が混乱しているのか気づくのがとにかく遅い。こういう場合は教えるのを諦めて自然解決を見守るのが私。数十分後、気づいた姉さんの声が家中に響いたことは言うまでもない。


3、姉さんは狙って発言している?


「姉さんは彼氏つくらないの?もう20歳になるんだよ?そろそろ男性を欲したりしないの?」


自分で言っていて胸が締め付けられる。実際は作ってほしくない、私だけをみていてほしい。それなのに私の口は姉さんを心配に思い勝手に口を開いてしまう。姉さんは私の目を見つめてニッコリと笑った。優しい顔つきで見つめられると照れてしまうが必死に堪える。私は姉さんの口から発せられる言葉に期待と不安を抱きながら姉さんを見つめ返す。


「彼氏?んー私はいらないかなー?だって私女の子の方が好きだもん」

「へっ?」


いけない、変な声が漏れ出してしまった。あまりにも衝撃的な返しでしょうがない。私の表情は見るまでもなく大変な笑顔だっただろうか。私の変な声を聞いた姉さんは小悪魔のような笑みを浮かべると私に接近すると耳元で囁いた。


「知ってるー奏。女の子同士でも最後までできるんだよ?にししっ」

「…!?ねっ姉さん!?何を言って…」


姉さんの不意打ちに後ずさりし距離を取ってしまう。それをみた姉は口を尖らせ、つまんないなーと微笑している。姉さんは時にこんな不意打ちをしてくる時がある。要注意しなければならない。逃げなければもしかしたら私は…と今日も悶々しながら寝る羽目になる私でした。


4、姉は頼る


「かっ奏様!!どうかお金を貸してくださいませ」

「いいよ、五万で足りる?」


私は姉さんの手のひらに五万円を置いた。すると置いた五万を怯えるかのように振り払う。五万円は宙をひらひらと舞、ゆっくりと床に着陸。


「貸してほしいんじゃないの?」


「いや…そんな簡単に貸してくれるなんて思わなかったからさ…つーか、五万て…そんないらないし!?」


「別に貸すなんてどうでもいい。姉さんのためならあげるよ?私は使わないし。姉さんが使った方がお金も役割を果たせるよ」


そういうと姉さんはぶんぶん首を左右に振り、私の言葉を否定した。


「そんなのだめだ!!…貸してもらおうとした私が言うのもおかしいけど奏がバイトして貯めたお金を簡単に人に、姉ちゃんにあげたりしたらだめ!せめて何か見返りを求めたりとか…!」


「いいの…?見返りなんてもらって」


姉さんは私の言葉を聞くと、うむ!と王様のように自信良く首を縦に振った。


「見返りはおまけだからちゃんと借りた額は返すし、安心して」


「わかった。…じゃあ見返り…してほしいこと言うね?」


「おう!どんとこい!」


私は思い切って冗談めかしく本当にしてほしいことを頼むことにした。小さく息を吸い、吐く。深呼吸したのち姉さんの目を見つめ口を開いた


「キスして」


「おう!」


「いいの!?舌絡めるよ!?」


「私でいいなら…ってそんなことでいいのか?」


私の頼みに一切怯まない姉さんはじりじりと距離を詰めてきた。やっぱりいいと言おうとするが時はすでに遅い。床に押し付けられ、マウントを取られた。上には姉さんの綺麗な顔立ち。目を背けるように視界から姉さんを消そうと頑張るも近づいてくる姉さんの顔が眼前いっぱいに広がる。まつ毛が長い、いい匂い、落ち着く安心感……姉さんの唇が私のと重なる時ガツン!と鈍い音がした。


「あっちゃーごめんな奏ー?私キスしたことないから歯ぶつけちまった!さ、気を取り直して再トライ!」


「いっいや…もういいからーー!!!」


全速力でその場から立ち去り自室へと篭る。

先ほどの状況が脳裏をぐるぐると回りドキドキが治らない。…姉さんはやり手なのかもしれないと感じた一日だった。


5、姉さんと買い物


「本当に見返りが私の買い物に同行するでいいのか?」


「いいよ、むしろ嬉しい」


私がいつもの調子で発すると、姉さんは頭を優しく撫でてハニカム笑顔をみせた。向かったのは新宿、人が多く混み賑わいを見せる所。私は姉さんに新宿に来た理由を聞いてみる。

「姉さん私が貸したお金を何に使うの?」


姉さんは一瞬たじろぎ、後頭部を二、三回かくと恥ずかしそうに口を開く。

「いっいや、あの…最近会社で昼食時に値段の高いランチ食い過ぎてな…。今月買う新刊の本何冊か見逃してるんだよ…」


「新しい本がほしかったんだー。だったら新宿まで来る必要なかったんじゃないの?」


不意に疑問に思ったことを口にすると、姉さんは準備していたかのようにセリフを口にした。


「んー、遠出すれば奏と一緒にいられる時間増えるからかな」


「そんな理由…嬉しいに決まってる」


私は人目も気にせず姉さんに抱きついた。周りから見たら仲の良い姉妹に見えるだろうけど私は姉さんに恋をしている。実らない恋、それはわかっているけど今はこの時間を大切にしたい。私と姉さんは1日を思いっきり楽しんだ。


6、姉さんはゲーム好き


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