ビー玉
頬を撫でる心地好い風が、満開に咲き誇る桜並木の桜の枝を揺らし淡い桃色の花びらが舞い散る。その舞い散った花びらが、足元の風景を冬の真っ白な雪化粧からまるで桃色の絨毯のように変える。
目の前に広がる景色に、僕(岡谷珪汰)はそう思った。
またこの季節だ……。
あの日から何年目の春を迎えるのだろう。四歳の春に両親が事故死したから八年になるか。長い月日が経ったものだ。
僕も中学生になり入学の日を迎えた。
できればお婆ちゃんにも入学式を見に来て欲しかったが、お婆ちゃんは高齢であまり無理ができない為見に来ることはできない。
僕は花びらの絨毯の上を買ってもらった真新しい靴で歩いていく。上には雲一つない空が広がっていた。
学校に着くと沢山の新入生が列を作り、式が始まるのを待っていた。僕も急いでクラスと出席番号を確認し列に並ぶ。
僕は小学校の頃、教室の片隅に一人でいたから特別仲のいい人はいなかった。
式も終盤に差し掛かり、在校生代表の挨拶が始まった。
読んでいるのは生徒会長だろうか、二つしか違わないのに僕なんかよりずっと大人に見える。挨拶が終わり、いろいろとこの後の説明があり式は終わった。
僕達はそれぞれのクラスに分かれホームルームを終えた。
みんなが親と帰る中、僕は一人玄関へと向かう。
無事終わって今から帰るとお婆ちゃんに連絡しようと携帯を開いた。すると、何件か着信がきていて、一件は留守電が入っていた。
その留守電を聞いた瞬間、僕は自分の耳を疑った。
僕は走った。足には自信は無かったががむしゃらに走った。そして辿り着いた一件の病院、僕は荒くなった息を整え中へと入る。
受付で部屋を聞き、その部屋へと向かう。