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プロローグ
あの時の事はよく覚えている。
白い文字で「手術中」と書かれた赤いランプが灯る部屋の前で、僕はお婆ちゃんの手を握りそのランプが消えるのを待っていた。
お婆ちゃんの手は温かかったが小刻みに震えていた。
その時は、何故震えてるんだろうと子供ながら不思議に思ったが今となっては当然のように思える。
自分の子供が死ぬかも知れないという不安や、まだ見せてはいけないと涙を必死に堪えていたのだから。
部屋の扉が開き病院の先生が俯いて出てきたのが見えた。
先生はお婆ちゃんと一言二言言葉を交わし、また部屋の中へと消えた。
次の瞬間、お婆ちゃんの顔を見ると堪えていた涙が頬を伝うのが分かった。
僕は思った。
「あぁ……パパとママは死んじゃったんだ」と……。