オーダー入りました!
「 確かにビーズは美波が作ったものなので、何処にもない珍しい品ですが、その値段で売れるでしょうか 」
不安そうなミチルに決定的な一言が告げられた。
「 ミチル、私このドレス金貨一枚で買うわ。
借りていって王都で着て見せるという話だったけれど、一目惚れなの、どうしても自分の物にしたいわ。買い取らせてくれないかしら 」
ローザ様の勢いにミチルは固まっている。
「 ミチル!どうするの?」
美波につつかれて、ようやく気付いたらしい。
「 ええ、かまいません。というか、本当によろしいのですか?デザインも縫製もこの村の仕事です。
王都の一流のお針子さん達には程遠いと思います 」
美波にしてみれば、このドレスの出来は素晴らしいと思うのだが、王都のお針子さんがパリコレなんかの常連のトップデザイナーだとすれば、こちらは田舎の仕立て屋さんだ。 萎縮するのも当然だろう。
「 そんなことないわ、デザインも縫製も素晴らしいもの。心からこのドレスが欲しいの 」
ローザ様は真剣な面持ちでミチルに告げた。
「 ありがとうございます。では、金貨一枚でお譲りします。予定通り他のエルフの方々の反応も教えていただけますか?」
ローザ様は快く了承してくれて、宣伝も約束してくれた。
「 よかったぁ、ミチルのデザインはやっぱり素敵だもんね 」
ミチルはとっても嬉しそうだ、しっぽを振りまくりである。一番の自信作と言っていた物が、美しい物を沢山見て目の肥えたエルフに評価されたのだから無理もない。
「 ねぇミチル、私にもドレスを作ってくれないかしら。このビーズを使ったドレスを着て、コクガとデートしたいの 」
ソウキ様、やけに静かだと思ったら、そんな事を考えていたんですね……
コクガ様はすかさずソウキ様を抱き寄せて、デコちゅーをかましている。
安定のリア充っぷりである。
「 俺がプレゼントしよう。美しい君が更に美しくなるドレスを作ってもらおう、今から楽しみだよ 」
どうやらミチルの返事は不要らしい、オーダーする事は確定である。
「 よ、よかったね、ミチル。ソウキ様のドレスを作れるなんて、光栄だよね!」
またしても、あまりの急展開に固まっているミチルを、肘でツンツンする美波……
「 あっ、そうね!私でよければ是非作らせて下さい。身に余る光栄です 」
その後が大変だった。女性のみでミチルの家に移動してソウキ様の採寸を行い、フィッティングの為に美波が原寸大のトルソーを作成する。
次に本人の希望を聞きながらミチルがデザイン画を描き、ビーズの見本を見せて色の好みも伺う。
絶対に二着目をオーダーするというローザ様の分も、同様に採寸とトルソーの作成をしていたらもう夕方である。
「 まぁ、もうこんな時間。まだ話し足りないわ、ソウキ様今夜は泊めてもらいましょう 」
ローザ様が爆弾発言をかます。
何を言っているんでしょうか、このエルフさんは?
ドラゴンの長とその妻、王都の役人であるエルフですよ?
友人の家で盛り上がって、今日は泊めてねっていうのとは訳が違うんですよ!
迷惑という意味ではなく、なんの準備もしていない事に青ざめる美波とミチルをよそに、ソウキ様もかましてくれた。
「 そうね、良い考えだわ。いうかしら?二人とも 」
「 えっ、あの、勿論です。
ちょっとシロガネ様に報告してきますね 」
了承以外の答えがあるだろうか、いや、ない!
慌てて走り出そうと美波が立ち上がった時、ノックの音が響いた。
「 開けるぞー、ミチル!あっ、いたいた。
あのさ、コクガが話が終わってないだろうから、今夜は泊まるってさ。今みんなが準備してるから、夕飯はピザだぞ!六時に公民館に集合な、俺はコクガと露天風呂に入るんだ!じゃ、よろしく!」
ユーリよ……相変わらずのとんでも発言だ。
「 えーっと、じゃあ私は、念のためシロガネ様の所へ行ってきますね。何処に泊まっていただくのか確認も必要ですし……」
「 ねぇ、美波。ピザって何かしら?」
ローザ様、そこですか…ブレないエルフさんである。
「 ピザっていうのはパンの生地を薄くのばして、トマトソースを塗って好みの具材をのせて、チーズをのせて焼く料理です。
大きく焼くので、大勢で食べると楽しいんですよ。
この前やってからちょっとしたブームなんです 」
楽しみね!と手をとりあうお二人をミチルに任せて、美波はコートを着るのも忘れて走るのであった……




