ドラゴンの来訪③
夕刻までに、全ての荷物の積み込みが終了した。
輸送BOXは満杯だ。お別れの挨拶をして、美波はローザ様から連絡用の小鳥を頂いた。
何かあれば遠慮なく飛ばすようにという言葉と共に手渡されたそれは、銀のボディに真珠の瞳の可愛らしい小鳥だった。
「ありがとうございます、大切にしますね。
ローザ様も何か必要な品などあれば言ってください。いつでも作りますから。」
王都までこれだけの量を一度に運べるなら、美波の能力の利用価値も高まるはずだ。
改めてローザ様と握手を交わす。
「美波、今日は本当に楽しかったわ。また近いうちに会いましょう。冬籠もりの間も何か作るんでしょう?期待しているわ。」
ドラゴン化したソウキ様は、近くで見ると本当に美しい。硬質な鱗は銀粉を混ぜ込んだような煌めきを放っている。
「はい、ソウキ様。春になったらメープルシロップをご馳走出来ると思います。ご期待ください。」
女性三人がこんな会話をしているその横で、コクガ様はユーリに請われて、村の子供達にご自身の尾をすべり台として提供していた……
当然村の大人達は止めたのだが、コクガ様は子供がお好きらしく、自ら子供達を誘われたのだ。
「キャ~!すごい、すごい!コクガ様もう一回!」
大人になりかけのナギ以外は、ドラゴン相手に怯むこともなく大はしゃぎである。
若干腰が引けているナギは、ユーリに手を引かれ一緒に遊んでいるようだ。
可哀想に…微妙なお年頃のせいで、気を使いつつ遊ぶという苦行になってしまっている。
「フフフ、あの人は子供好きだから楽しそうだわ。
ドラゴンの長という立場を忘れて、自然に接してくれて嬉しいのね。ユーリには感謝だわ、あの子は小さい頃からコクガになついていて、自然に甘えてくれるから。」
ソウキ様はそう言って、子供達と遊ぶ夫を微笑ましそうに見守っているのだが、ローザ様は呆れ顔だ。
「ソウキ様、ユーリは別に深い考えがあって行動している訳ではないと思いますよ。
まったく誰に似たのか、小さい頃からあの子にはヒヤヒヤしっぱなしでしたもの…」
やはりローザ様も苦労されたようである、どういう育ち方をしたらあんな感じの仕上がりになるのか、ユーリの両親に問いただしたい所だ。
「ソウキ、ローザ、そろそろ帰ろうか。」
子供達と遊んで満足したらしいコクガ様が、二人を呼び寄せた。
三人にお別れの挨拶をして、風圧に備えて村人達は広場の縁に待避した。
まずはソウキ様が箱を掴んで飛び立った、続いてコクガ様が、ローザ様を背に乗せてから箱を掴み飛び立つ。
みるみる高度を上げていくドラゴンに、地上から手を振る。数回村の上空を旋回して、二頭のドラゴンは王都へ向けて飛んでいった。
その姿が小さくなるまで見送って、ようやく皆はほっとして顔を見合わせた。
「どうにか無事に終わったな、皆ご苦労。
さぁ、片付けてしまおうか。」
シロガネ様の言葉に、村人達は噴水広場へ戻っていく。
「楽しかったなぁ、久し振りにコクガとソウキに会えたし。ご馳走だったしな!」
「ユーリ…今日は本当にびっくりしたよ。今まで残念なエルフだと思っててゴメンね。
ユーリは勇者だよ……」
美波が言うと、ミチルもクロも、近くにいた村人達も頷いている。
「何だよ?俺のスゴさに気付いたのか?
やっぱりにじみ出ちゃうのかなー。俺くらいになると。」
残念なエルフのくだりを、まるっと無視したセリフである。やはりユーリは大物らしい、悔しいがこういう奴が何か大きな事を成し遂げたりするのだ。
周囲の人間は、その行動に振り回されるのだが……
まぁ、とにかく、ドラゴンの来訪という一大イベントを無事に終えることが出来て、一安心である。
西の空を赤く染める夕日が、今日は格別に美しい。




