再びコザクラ町へ
翌日はコザクラ町から迎えが来てレンガ・シール・懐中電灯を馬車に積み込み、美波も同乗して町へ向かった。
直接町へ行きパネルヒーターの設置と、馬車用のライトと門番や警察官の防寒具の作成を行うのだ。
町に着いたら、役場の担当者にレンガとシールの使い方を説明して設置してもらう。
「こんな感じで設置して下さい。シールは足りると思うんですけど、レンガはもし足りなければ帰る前に作りますので、言って下さいね。」
レンガは主に人間の男性が、箱ごと担いで運び設置するらしい。シールは屋根の上での作業なので、羽のある鳥系の方々が担当する。
ちなみに結構色々な種類の鳥さんがいて、鷲や鷹などのワイルド系からインコやカナリアなんかの綺麗系まで幅広い。皆さん腰につけたバックにシールを詰めてどんどん屋根に貼っていく、だいぶ慣れたつもりだったが、このファンタジー感一杯の光景には見とれてしまった。
ここで疑問を解消しておこう。ハナビラドリは食べるのに羽のある人がいるのはどうしてかと言えば、人間とチンパンジーは何が違うの?という質問と同じ答えらしい。
これは他の種族に関しても同じらしいので、そういうものとして理解するしかなさそうだ。
美波は次に警察署に行き、一人一人に合わせて防寒用のブーツ・コート・つなぎを作っていく。
体型に合わせて作るのでフィット感は抜群だ。
同じく門番達にも三点セットを作っておく。
その後は病院と役所にパネルヒーターを設置して、最後に孤児院へと向かう。ここで外出していたフェラリーデ様と合流した。
「お疲れ様です、美波さん。休憩しなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。レンガとシールは作ってきましたし、馬車も例の改良をしたので揺れなくて快適でした。」
ハクロウ村の馬車は秋祭りでちょっとした話題になっていたので、今日迎えに来てくれた馬車も改良したのだ。ちなみに公共の馬車は全て改良済みで、ライトもつけてある。
「ありがとうございます、助かりますよ。
では、行きましょうか。」
フェラリーデ様の案内でメインストリートから脇道に入り、孤児院へと向かう。
暫く歩いて見えてきたのはレンガ造りの二階建ての建物と、大きめの庭を持つ立派な孤児院だった。
「今は十七人の子供が暮らしていて、世話係の職員が六人で運営しています。
大きな子供達は今学校へ行っていますが、先日の秋祭りの際のボールのプレゼントと寄付に、お礼の手紙を書いたそうですよ。村に届けて下さいね。」
フェラリーデ様によるとここには親を病気や事故で亡くしたり、何らかの事情で育てられなくなった子供達がいるらしい。成人するまでは学校に通ったり生活全般の面倒をみてくれるそうだ。もちろん条件が合えば養子になる子もいる。
費用は王都からの予算と寄付金でまかなっていて、子供達は不自由なく生活しているそうだ。
「人間の子供が多いんですか?獣人の子は大人になるまで時間がかかりますよね。」
「そうですね、今は十五人が人間の子です。獣人は寿命が長いかわりに子供が出来にくいので、孤児になっても親戚が引き取る事が多いのです。
今いる二人は事故で親を亡くした猫人の兄弟で、遠くの町にいる親戚が迎えに来るのを待っている状態です。」
成る程、そう言われればハクロウ村の子供も六人だ。千年生きるとはいえ、数年おきに子供を産んだら大変な事になってしまう。
「そうなんですか、何か私に出来ることがあれは言って下さいね。」
その後職員と挨拶を交わし、要望のあった所にパネルヒーターを取り付けていき、ついでにビーズクッションもプレゼントした。
村からのお土産として卵ボーロと野リンゴのコンポートを渡して、子供達からのお礼の手紙を受け取る。
「シロガネ様に渡しますね、春祭りでも寄付が出来るようにするつもりなので、今後もよろしくお願いします。」
丁寧なお礼の言葉を頂き孤児院を後にして、フェラリーデ様の執務室へ向かう。
「ありがとうございます、美波さん。
疲れたでしょう、お茶をどうぞ。」
勧められたハーブティーを頂きながら窓の外を眺める、どうやら屋根にシールを貼る作業は終わったようだ。
「レンガは足りたでしょうか、馬車に積めるだけ乗せてきたんですが、町全体でどれくらい必要か見当がつかなくて…」
「今のところ大丈夫そうですよ。先程すでに八割は設置したと報告が入っていますから。」
どうやら大丈夫らしい、ほっとした美波はバックからお土産を取り出す。
「よろしければ後で召し上がって下さい。
昨日森で見つけた野リンゴのコンポートです、冷やしてこのまま食べても良いですし、ヨーグルトやパンに合わせても美味しいですよ。」
机に並べられた六つの容器には、大きめにカットされた野リンゴのコンポートが黄金色に輝いている。
「野リンゴですか、珍しいですね。とても綺麗で美味しそうです。ありがとうございます。」
喜んでいただけて何よりだ。
「雪が積もれば来年の春までお会いできないと思いますがお元気で。フェラリーデ様には本当にお世話になりました、ありがとうございます。」
「こちらこそありがとうございます、美波さん。
今年の冬はお陰で楽に過ごせそうです、それに上手くいけば来年の冬は雪が降っても行き来できますよ、楽しみですね。」
フェラリーデ様に見送られ来年の再会を約束してお別れする、じきに雪が降るだろうコザクラ町ともしばらくお別れだ。
ちなみに帰りは町の警察官に送ってもらい、ピンクの馬で村に帰った美波だったが、慣れない乗馬に翌日ひどい筋肉痛悩まされる事になった。




