ハクロウ村にて
村の入り口へ近づくと、大柄な男達が数人こちらへ向かってきた。
狼じゃないのかと思ったら、まさかのケモミミで人型である。太くて立派なしっぽもついている。
『うわ~っ、変身できるの?そしてケモミミ~!』
美波の頭の中はもうパラダイスだ、夢にまで見た喋る狼で大満足だったのに、更に変身可なのだ。(人狼族って時点で気付けよ。という冷静なつっこみは聞こえないらしい)
近づいてきた男達は、美波の腕の中のハクを見て安堵の表情を浮かべた。
「ハク!何処へ行ってたんだ。心配して皆で探したんだぞ。」
「ごめんなさい、森へ遊びに行って道に迷って、人猿さん達の村に入っちゃったの。
そしたらお姉ちゃんが、助けてくれたの。」
「人猿族の縄張りに入ったのか?大丈夫だったか?」
「うん。すごく怒られて、僕ちゃんとお話出来なくて泣いてたら、お姉ちゃんが人猿さん達にお話ししてくれたの。
ごめんなさいって言ったら、許してくれたよ。」
男達は美波に頭を下げた。
「ありがとうございます。人猿族は縄張り意識が強くて、村の入口以外から入ると酷く怒るのです。
ハクを助けてくれて、本当にありがとうございます。
良ければ村へどうぞ、ハクの両親も礼を言いたいでしょう。」
そう告げた男性は黒髪に黒い耳としっぽで、元の世界ならヨーロッパ系の20代後半、ワイルド系男前だった。
他の男達も様々な耳の色だか、みんな身長が2メートル近く逞しい、更に美形揃いだ。
変身したら、どの位のサイズの狼なんだろうなどと考えつつ、ワクワクを隠し笑顔で答える。
「いえ、大した事はしていません。人猿族の方も話したら分かって頂けましたし。
ハクとは仲良くなれたので、ご両親には是非お会いしたいです。」
彼等の案内で村の中へと入る。入口からのびる幅2メートル位の道を行くと、ちょっとした広場になっている。
中央がには噴水があって、中心の水の吹き出し口を囲む様に狼の意匠の像がある。口から水を出す子狼のデザインで、すごく可愛らしい。
広場の周りには家々が建ち並び、玄関先のテーブルでお茶を楽しむ女性達や、走り回って追いかけっこをする子狼の姿が見える。
家は木造で、シンプルながら可愛らしいデザインだ。
「お姉ちゃん、もうすぐだよ。」
ハクはまだ抱っこのまま、ご機嫌である。
美波とハクと先程の黒耳のお兄さん、クロはハクの家へと向かっている。