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エルフが村にやってくる

いよいよフェラリーデ様達の視察当日である。

王都から派遣された方と二人、馬でいらっしゃるそうで朝九時には到着する予定だ。ちなみにこの場合の馬は地球の馬とほぼ同じサイズの生き物で、違うところと言えば毛色くらい。水色とかピンクなんかのパステルカラーの子がいたりする、一番多いのは白い子だけれど。


約束の時間が近づいて、美波はシロガネ様とミナトさんの三人で村の入口で待機していた。

シロガネ様は高齢ではあるけれど人間の九十才とは比べ物にならないくらい頑健な方なので、無理をしている訳ではない。普段は若い頃よりは足腰が弱くなった為、狩りなどから引退されているだけで日常生活にさほど支障はないのだ。

美波としてはシロガネ様はミナトさんを次期村長にと考えていて、経験を積ませるためにご自分は最終決定のみにされているのではないかと睨んでいる。

しばらく待っていると、道の彼方に馬が見えてきた。水色の馬でやってきたのはフェラリーデ様ともう一人、エルフのトレードマークの長い金髪に細長い耳、明るいグリーンの瞳の儚げな美貌の女性だった。


「おはようございます、今日はよろしくお願いしますね。こちらは王都からの使者でローザ様です。」


馬から降りたフェラリーデ様から紹介されて、握手を交わし挨拶をする。


「はじめまして、よろしくお願いしますね。

噂はフェラリーデから聞いています、楽しみにしてきました。」


ローザ様は甘やかなソプラノでそう告げて、にっこりと微笑まれた。目が眩みそうな美しさだ、さすが美男美女ぞろいのエルフ、外見だけでなく内面から滲み出る知性や気品に圧倒されてしまう。


「こちらこそよろしくお願い致します。

ご期待にそえると良いのですが……」


馬を村人に預けて二人を村の中へ案内し、建物に入る前に屋外の設備について説明することにして、まずは噴水広場に向かう。


「これが屋外用に作った照明です。噴水と家の軒下の分は常設で、この上にあるのは秋祭りの後の宴会用に取り付けた物です。夜になったら是非ご覧ください。」


二人に説明しているとフェラリーデ様から質問が。


「美波さん、これは何ですか?柿の様に見えますが。」


指差す先には、昨日村人達が頑張って作業した干し柿小屋があった。


「あれは村のシブガキの木の実の皮を剥いて干した物です。冷たい空気の中で干すことで渋みが無くなり甘いドライフルーツになるんですよ。

昨日干したばかりなので、完成するのはだいぶ先になりますが。」


美波の答えに二人とも興味津々だ、エルフは甘いものがお好きなのだ。試食してもらいたいが、残念……

するとローザ様の様子がおかしい、何だかソワソワしている。


「あの、ローザ様。もしかして魔法で時間を進めたり出来ますか?」


ギクッ!と、音がしそうなリアクションで振り返るローザ様。フェラリーデ様はちょっと呆れている様子、もしや秘密だったか?

焦る美波にフェラリーデ様は目で大丈夫と合図する。


「隠している訳ではないのですよ、ただ本来は学術的な研究に使用する物なので、食欲に負けて使うのはあまり一般的でないというか、何というか……」


なるほど、つまり上品なエルフの役人としてはちょっと……という事か。

生温かい視線を四人から浴びて、ローザ様は決まりが悪そうだ。


「まぁ、そういう事なら美波。一本分なら試してもいいんじゃないか。」


シロガネ様が笑いを堪えながら言うので、美波は小屋の中から吊るした柿を一本分、七個の柿が結ばれたロープを取り出した。


「ローザ様、私もこちらの材料で作るとどうなるのか興味があるので、よろしければ試していただけますか?

柿の回りに糖分が結晶化して、白い粉をまぶしたようになれば完成です。」


「そ、そう?そういう事ならやってみましょうか。」


何だか可愛らしい方だ、最初に感じた恐れ多いという感情は薄れて親しみを感じてしまう。

ローザ様が何か唱えながら手をかざすと、みるみるうちに柿が変化していく。良い感じだ。


「そのくらいで良いと思いますよ、食べてみましょうか。」


発案者として、また正しい味を知る唯一の人間として、美波が一番に味見をすることになる。


「ん、上出来ですよ。とても甘いし水分量も程よく残っていて固すぎなくて、とっても美味しい!」


あまりに美味しそうに食べる美波に、四人もつられて手を伸ばし口に運ぶ。


「まぁ、何て濃厚な甘さなんでしょう。ねっとりと舌に絡みつく果肉の食感も素晴らしいわ。生の柿とは全くの別物ね。」


食レポみたいな感想を悶えながらもらすローザ様、喜んでもらえて嬉しいけれど、エルフのイメージが崩れていきます……残念なエルフさんだ。

干し柿は他の三人にも好評で、完成が楽しみになる。ついでに言うと、残りの二つの干し柿はローザ様が全て平らげました。


次に村の東側へ向かい、プール用の遊具と露天風呂を案内する。浮き輪は救命用具にもなると説明すると関心を持たれた様子、更に露天風呂に興味を示されて今夜試すことになったようだ。

畑のビニールハウスについても説明し、質問攻めにあう。エルフはベジタリアンなので、冬場に新鮮な野菜が食べられるのが相当に嬉しいらしい。

この冬の実験が成功すれば、革命的かもしれない。


続いて美波のドームハウスへ案内し、室内に施した設備と外壁の特徴について説明する。

完全に個人的な好みで作り上げた家だか、デザイン機能共に気に入ったようだった。自宅用のバスタブや床暖房、靴を脱いで生活するスタイルにも驚かれたし、パネル型のヒーターにも興味を持たれたようだ。

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