ハクの村へ
「じゃあ、行こうか。」
そして再度ラブリーモンキー(勝手に命名)に向き直った。
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。
部外者の私の申し出を受け入れて下さった事、感謝致します。」
美波は深々と頭を下げてそう言った。
「頭を上げられよ。謝罪は受け入れた。
その子を無事に村まで送り届けて貰えれば、それで良い。」
やはり武士である、後で思い出したら確実に笑いが止まらなくなりそうだ。ここは早めに退散した方が良さそうだ。
そう判断するとラブリーモンキー達に一礼し、子犬を抱いて村へと向かう事にする。
改めて腕の中の子犬を見つめる、純白の毛並みは子犬らしく柔らかくフワフワで、まん丸の青い瞳で見上げてくる姿はたまらない。
「大丈夫だった?ケガとかしてないかな?」
「うん、平気。僕びっくりして鳴いちゃったけど、何もされてないよ。」
「そっか、良かった。
お姉さんは美波っていうんだけど、君のお名前は?」
「僕、ハクっていうの。人狼族だよ。お姉さんは人間?」
「そうだよ、ハク。でも私、ついさっき他の世界から来たばっかりだから、ここの人間と自分が同じ種族かどうかは分からないなぁ。」
ハクの村へと歩きつつ話すうちに、ようやく異世界転移してきた事を思い出したらしい、モフモフ恐るべし。
ハクは美波を見つめ、首をかしげる。
「異世界?他の世界から来たの?お姉さん一人で?」
「うん、そうなの。ちょっと色々あってねぇ。
さっき森の中で気付いたらハクの声がしたから、あわてて向かったんだよ。だからまだこの世界の事、全然分からないんだよね。」
ハクは大きな目をキラキラさせて、しっぽを振っている。
「じゃあさ!僕の村にいれば良いよ!父様と母様にお願いしてあげるよ。助けてもらったし、ね?ね?」
子供らしい好奇心に満ちた目だ、違う世界の話を聞きたくて仕方がないらしい。
微笑ましく思いつつ、美波は答えた。
「そうね、私もこれからどうしようか考えていた所だし、ハクのご両親と村の人達が良いって言ってくれたら、しばらく泊めて貰えると嬉しいな。
この世界の事、ハクが教えてくれる?」
「もちろんだよ!お姉ちゃんの世界の事もお話ししてくれる?」
う~ん、やっぱり可愛いなぁ。
喋る狼、しかも真っ白子狼って、もう無敵だよね。
などと脳内でハクにばれたら怯えられそうな事を考えながらしばらく歩くと、木で出来た門が見えてきた。
神社の鳥居位はあろうか、立派なかまえの門である。狼の意匠の彫り物がしてあって、かなり凝った造りだ。
柵などは無くオープンな感じで、あくまで村の入口である目印ですよ。といった感じ、本当に平和な世界の様だ。
「お姉ちゃん、ここだよ。ありがとう!
父様と母様に紹介するね!」