子犬との出会い
鳴き声を追いながらしばらく探すと、少し木々のまばらな開けた場所に出た。
「見つけた!やっぱりワンコだ!」
そこには純白の子犬がいた。サイズはトイプードル程か、しっぽを巻き込んで震えている。
周りを取り囲むように猿らしき生物がいる。サイズは日本猿程だろうか、ただし色がピンクだ。しかも淡くて綺麗な桜色のやたらとファンシーなお猿さんである。
「キュ~ン」
「その子をいじめないで!」
そう言って、子犬の体を例の膜で包む。
「お前誰だ。見かけない奴だな。」
一際大きな猿が話しかけてきた!!確かに喋る動物を希望してはいたが、実際に話しかけられると驚く。
「あの、通りすがりの者ですが、その子まだ小さいし怯えているので、助けてあげたいなぁと、思って、ですね。」
まさか話し合いになるとは思っていなかったので、ちょっぴりトーンダウンしてしまう。
「子供とはいえ、我らの縄張りを犯したのだから、制裁を受けるのは当然の事だ。
部外者は黙っていてもらおうか。」
ボスザルらしきその猿はそう言ってこちらを睨むのだが、色だけでなく顔立ちもかなりラブリーである。
ぬいぐるみとして売り出せば小さな子供が夢中になる事間違いなし、という感じのそれはそれは可愛らしいお猿さんなのだ。
毛並みはフワフワだし、丸い目は真っ黒で大きく、手はモミジの様。ラブリーすぎて顔とセリフが一致しない。
「あの、確かに私は部外者ですし、その子も悪い事をしたのかもしれませんが、まだ子供の様ですし、震えてますし。謝罪して許して頂く訳にはいかないでしょうか。」
「ふむ。我らもそこの人狼が非を認め謝罪するのであれば、許すのもやぶさかではない。」
お前は武士かっ!どういう設定だ一体。違和感が
凄すぎるぞ、このラブリーモンキーめ!
心の中でつっこみつつ子犬に話しかける。
「ねぇ君、聞いていたでしょう?悪い事してしまった様だから、この方達に謝って許してもらおう?
ちゃんとごめんなさいって言える?」
そう問いかけると白い子犬は、美波を見つめて小さく頷いた。
「ごめんなさい。遊んでいるうちに道に迷ってしまったの。わざとじゃないけど、悪い事してごめんなさい。」
「そうか。故意でないなら許そう。
人狼族の村ならその道をまっすぐ行けば戻れるはず、一人で戻れるか?」
「あっ、でしたら私が!責任を持って送り届けます。お姉さんと行こうか?抱っこしても良い?」
すかさずアピールする美波である。計画性など欠片もない申し出だ、ただただこの白くてフワフワでプルプルしている小さな生き物を愛でたいだけの、軽い変態である。
そんなイタイ25歳独身女の心の中など知らぬいたいけな子犬は彼女を見上げて答えた。
「うん。一緒に行ってくれると、僕うれしい。」
フリフリ。くぅ~~っっ!しっぽがまたラブリー!
あまりの愛らしさに心を撃ち抜かれたようである。