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ミチルとランチ

「そろそろお昼にしましょうか。」


ミチルに案内された店はクレープ屋さんだった。

ドアを開けると磨き抜かれたダークブラウンの床に、シンプルなテーブルと椅子が配置されている。

食事向けのガレットみたいな物も、生クリームやフルーツを使った甘いクレープもあって、オープンキッチンでクレープを焼くのは、背中にキュートな鳥の羽を持つ女の子だ。

ハーブティーと、それぞれハムとクリームチーズとレタスのクレープに、ハナビラドリのソテーに玉ねぎとバジルっぽいハーブを添えたクレープを注文する。途中でチェンジしつつ味わうクレープは、素朴な味でとても美味しい。


「ねぇ美波、コレって、マヨネーズを入れたらもっと美味しいわよね。」


小声で囁くミチルに笑ってしまう。


「マヨネーズすきだねぇ、ミチル。でもマヨってけっこう高カロリーなんだよ、食べ過ぎには注意しないと。」


「あら、大丈夫よ。森をひとっ走りすれば問題ないわ。」


そうでした。気を付けなきゃいけないのは美波だけです。


「そうだね。羨ましい…私は気を付けないと。」


「大丈夫よ、デザートも行きましょ。ケーキが食べたいわ。」


誘惑にあっさり流される事にして、ケーキ屋さんに向かう。

白い漆喰風の壁に、真っ白にペイントされたテーブルに椅子。ケーキ屋さんはとても可愛らしいお店で、窓枠や小物は全てブルーで統一されていて、とても素敵だ。

氷の入ったショーケース(透明度はいまいちだか、一応ガラス)に並ぶのは、スポンジケーキに生クリームやフルーツをトッピングした物と、チーズケーキ。

カラフルでとても美味しそう、ただ生クリームを口金で絞り出す技術はないらしく、シンプルなデコレーションだ。

チーズケーキと真っ赤なベリーのケーキを注文して、シェアして頂く。予想以上に美味しい。


「美味しいね。」


ケーキを楽しみつつ、テラス席から町行く人々を眺める。人間が一番多くて人種は様々、ヨーロッパ系が多いだろうか。目を惹かれるのは猫の獣人さんや、虎の獣人さんで、兎や熊の獣人さんもいるらしい。


「大きな町は人間が多くて、獣人も種族を問わず色々な人がいるのよ。寿命が近ければ、異種族間の結婚も珍しくないわね。」


種族が違っても結婚は可能だそうな。しかし生まれてくる子供は両親の内、魔力が強い方の特徴を受け継ぐので、混血の子供はいないそうだ。

町には学校法人もあって、色々な子供達が共に学ぶ。ハクロウ村ではルリさんが先生となり、子供達に教えているようで科目は読み書き、計算、歴史など。より専門的に学びたければ、王都へ行くのだという。


因みにこの国は、エルフの王をトップとするゆるやかな支配体制を敷いている。法律は同一だが都市には自治権があり、独自の法令も存在しているので、法律については日本と同じ様なものだ。

広大な大陸は全てが一つの国で、国民は税金を納め、国はそのお金で道を整備し、福祉政策を行い孤児院などを運営したり、貨幣を作ったりする。


寿命一万年以上と言われるエルフ達の治めるこの国は、長い間戦争もなく平和だという事だ。

権力のある賢王が治めれば、世界は豊かになり平和であるはずだ。現在の国王は在位三千年を超えるらしく、そもそもエルフという種族自体が争いを好まず、美術や音楽を愛する孤高の存在なので、彼等の蓄積された知識をもって国を運営すれば、こういう世界が出来上がるのだろう。

厳しい環境で苦しい生活を強いられる人がいないのも、平和につながっている。内戦を起こす理由がそもそもないのだ。また仮にエルフ達に戦いを挑んでも絶対に敵わない、圧倒的な魔力の前に他の全ての種族は無力だ。


「良くできたシステムだよね。国のトップが善人だという大前提は必要だけど、エルフの王様は投票制なんでしょ。平和主義の賢人の集団が選ぶトップなら、善人に決まってるもの。」


日本も平和な国だけれど、先の大戦を経験した人々はまだ存在していて、戦争は遥か昔の話ではない。戦争を知らない国民ばかりになった後、更に数百年の時を平和なまま重ねられるのか、正直なところ自信はない。

人類の歴史は戦争の歴史だ。


「この世界にも遥か昔は戦争があったしいわ。

その争いをおさめ、エルフの王が国を一つにしてからは争いなんてないけどね。」


どこの世界も欲にまみれた人は同じ様な事をしでかす訳だ。

今の平和は当たり前ではなく、色々な人々の努力の上に成り立っている。



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