5話
あれこれやってる内にもう一週間たった。最初から持っていたソイジ〇イもあと10本。それ以外は現地採取でまかなっているが味気ない、もう我慢ができない。最近ではゴブリンで上がるレベルが緩慢になってきているし。
「そろそろ行動を起こさないとな。」
魔法で一撃で倒せるゴブリンはいい経験値稼ぎになっていた。魔法は改良に改良を重ね今では瞬間発動できるものもある。その中でも対ゴブリンとしての低燃費魔法「ロックバレット」(面倒なので弾丸と呼称している)が最高の威力を発揮してくれている。
「塩の前にゴブリンの集落をまず潰すか。もしかしたら持っている可能性もあるしな。」
この一週間、ゴブリン狩りに勤しみながら集落の特定、他の魔物との戦闘経験も積み戦えるようになってきている。
実際に見える成果としてはレベルが15まで上がりHPも462、MPにおいては984まで上がりかなり強くなっていると自分でも感じている。
慣れてきた準備を直ぐに終わらせ、寝床にしている泉をあとにする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゴブリンの集落は泉から一時間ほど北に北上した場所にあり、距離にすると5kmくらいとかなり近場にあったことが当初は焦らせた。
泉のおかげで自分はゆっくり寝ることが出来るし、安全な生活をおくれている。
泉がなければ境界線もない、そんな場所での生活は正直不可能だ。境界線を越えたあとの環境は危険が多すぎる。
この一週間は順調なようで辛い時もあた。三体のゴブリンに勝てた事で少しの余裕を持ってしまい、自分から仕掛けて撤退する事3日。
それからは魔法も併用できるようになり、ゴブリン五匹を相手に余裕をかましていたら、後ろからグリーンウルフの群れに襲われたり。
目に見える範囲だけを警戒していたら頭上から1mくらいの蜘蛛に襲われ。黒いホーンラビットをなんの注意もせず攻撃しようとし、逆に刺され重症を負わされた。
全部自分の危機管理能力が甘いが故に招いたものであるが、元々は日本という平和国で28年も過ごしてきたためすぐには変えられない感覚なのだろう。
これらを克服するために魔力を感知する特訓、体内で魔力を回す魔力循環、副産物でHP消費で身体を強化出来る身体強化。
どれもまだ使いこなせてはいないが、なるべく早く使えるようになりたいと毎日努力している。
他にも発見はあり、HPが0になっても体は動かないが死ぬことは無い、レベルにより魔力枯渇後上昇率が決まっている、枯渇後意識がなくなるのは気力次第など色々とこの世界の法則というかなんというかが解り始めた。
結局何が言いたいかと言うと、どの経験や実験においても泉の水に助けられていると言うことである。今日も水筒いっぱいに水をくんで持ってきている。
今度から命の泉とでも呼ぼうかな。
「お、見えてきた。」
ゴブリンの集落は少し谷間のようになった開けた場所に作られている。そのため、周辺の丘上になっているところから丸見えだ。
「一気に殲滅した方が無難かな?」
集落には200近くのゴブリンがいるようで単騎で入るのは自殺行為である。
「よし、ハイドロボム!」
空気中から水素と酸素をかき集め圧縮して爆発させるハイドロボムは、最初の火種に使えなかった水素を転嫁することで爆発魔法に昇華させた。
...ズ..ドォーーン!...
音と同時に熱風が辺りを飲み込み、発動した本人も後ろに飛ばされる。
ゴロゴロゴロ...
むくりと立ち上がり、
「ま、まずまずじゃないか。」
強がってみても膝の震えが止まらないちょっと魔力込めすぎたかな?のレベルでは無かった。
大げさに書いているだけで実際は半径100m程が無くなった程度である。しかしさすが元日本人ビビるもんはビビる。
今度から使うときはもっと遠く狙いで使うかな...初めて使ったのがここでよかった...
命の泉付近では絶対使わないことをここで決めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
集落は跡形もなく吹き飛んでおり上位種の残骸が残っているだけで、普通のゴブリンは消し炭になったようである。
「失敗したなー。これじゃ塩があったかどうかもわからん。」
そう思いつつ何か無いかと探し回ること30分。鉄みたいなものが溶けて固まっているのを見つける。
「鉄...ではなさそうだな。何しろ青白い。放射性物質の塊か?」
危ないものかとは思ったがゴブリンが変に死んでるようなことも森の中で見たことはなく、判断材料としては弱いが最悪命の泉でなんとかなりそうだと簡単に解決した。
「鉄ほど重くないなアルミより硬いし...もしかしたら不思議金属ミスリルかな?」
重さ的に同量の鉄より軽いので前に考えた懸念は払拭された。
「とりあえず持って帰って貯めておこう。」
決断したら即行動、散らばっているのも含め集め始める。
結構な時間をかけ集めたものにバーナーの魔法をかける。
「おぉぉ...ハンダみたいだ。」
分離できるかと思い熱してみたが結構上手く行くものだ。
「よし!冷めたら帰るか。」
次に冷風を送る魔法をかけようと思い、頭なの中でイメージしていると。
...ヒュッ...
目の前に矢が刺さっていた。
慌てて飛んできた方向に体を向ける。
...ヒュッ...ザクッ!
「ッッッッッー!」
左腿に矢が刺さっており、判断が鈍る。
「「「「「フゴォー!」」」」」
目の前には五匹のオークが迫ってきている。
とりあえず距離を取ろう。このままじゃ嬲り殺しになる。
オークは思っていたよりも俊敏で思うように距離が取れずに棍棒での攻撃がかすった。かすっただけなのに身体が駒のように回り飛ばされる。
嘘だろレベルも上がってるはずなのにこんな簡単に飛ばされるのかよ!
魔法は直前まで使っていた為、魔力切れが近い。身体強化を使い一気に逃走する。
「ここまでくれば大丈夫か...あれだけ警戒が重要とわかっていてこのていたらくじゃ近いうちに死ぬことになるな。」
減ったHPとMP回復のためにリュックから水筒を取り出し、刺さった矢を無理やり引き抜き水を飲み干す。
今日は一度帰ってから考えをまとめよう。塩が欲しいはずがなんでこう上手くいかないかな。寄り道した俺にも責任はあるけど、ああいう場合になんとか出来るのなんていないだろ。
オークに先手を取られたことも咄嗟に反撃出来なかったことも。
色々なミスがあってもリカバリーできる自信が少なからずあったのに、現実ではただ慌てて逃走を選択した自分の情けなさがとても辛く感じた。
命あっての物種。逃走で現実問題なんとかなったからよしとするか...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日
十分に警戒を行いながらゴブリンの集落に足を運んだ。
「さすがにオークは居ないか。金属が無いな。あいつらが持っていったか?」
今回は仕方ない。でも、絶対あの豚野郎共をひき肉にしてやる。
オークの殲滅を誓い塩の確保も後回しに、またトレーニングと言うなの修行を行うことになる。
泉に戻りステータスの確認を行う。
タカユキ(ヒューマン)16歳
LV25
HP2670/2860
MP1230/1523
スキル なし
称号 見放されし者
これだけのステータスでも厳しい豚野郎って、かなり強いよな。一般成人男性の基準がLV1でHP60ぐらいだとすると。今の状態でも50人分はあるはず。実際あの時は上がったばかりだし今より低いとしても、さすがに強すぎないか?
それよりも今はどうするかか。現状の上がり具合からすると最低でも40近くレベルがあれば肉弾戦であしらえるはず。
このステータスは不親切すぎる!筋力とか載せてくれれば考えやすいのに。あと相手のステータスを見ることも出来れば言うことなし!
なら方針はレベル上げと魔法での対象ステータスの表示、自分のステータスの詳細化の実現だな。塩より身の安全。多分ゴブリン集落より離れているあの山に行くには絶対かち合うはずだ。なら今は我慢してトレーニング!