40話
二週間が経つ。王都まであと数時間、索敵を最大にすれば人口が密集しているのがわかる。魔物の件はゴルゼフ領から離れると全くだった。ここまで来る間にも遭遇はしたが、ゴブが数匹荒ぶってただけだった。
『あそこはどれ程魔物が溢れているのか…早く国自体が手を打たないと後々面倒事になりそうだ』
この間に前回の敗因について考えさせられる。3年間もの間毎日一生懸命闘い鍛え抜いてきたが、召喚されてまだ半年足らずの奴にいいようにやられてかなり凹んだためだ。ここに来てようやく自分の見通しの甘さに嫌気がさす。
身体能力、魔力は半分になっているがそれでも人が至れる限界を超えてはいる。ただそれだけ....対人戦に必要な技術、判断、それに合わせた魔法等、足りないモノが多過ぎる。全てを凌駕するほどのステータスでもなく、何か飛び抜けて武術の才能があるわけでもない。ただの中途半端な状態が今の自分だ。
「チートだろう!」と言われるような能力と技術には全くもって歯が立たない。魔法で隙を見て撤退がいいところである。あの召喚者達は何処で身に付けた? たかだか半年であそこまで研鑽できるものなのか? 色々考えたが埒があかない。
「はぁ〜....」
「....?」
馬車の中でユキを撫でながら溜息が出る。最近多くなったのか、しきりにユキが心配そうにこちらをみてくる。
「なんでもない、なんでもない」
そう言って頭を撫でる。襲撃後からはだいぶ機嫌は良くなったが、少しよそよそしいと言うか距離感を感じる。いつもと行動は変わらないのだが....親離れ? それとも「カッコ悪いパパきらーい」的なやつかな? と、内心ヒヤヒヤしている。
『あぁ、結婚して引きこもりたい。異世界嫁と一緒にラブラブしたい。殺伐とした環境でオアシスを....』
最近は悩みが尽きない。
王都はやはり国の中心と言うだけあって、綺麗な城壁に大きな外堀を張り巡らしルドヴェル領都よりもかなり大きい。建物や石畳は大きく変わらないが中央にそびえ立つ荘厳なお城が、この国の中心と感じさせる。
中央の貴族街までいっきに馬車で移動し辺境伯別邸へと着いた。それでも最初の門から2時間、計三つの門をくぐった。街自体中央にかけて小高い丘になっていて、そこを中心として四つの丘が四方を固めている。それぞれの区画の中心部になっているようだ。
「長旅にお付き合い頂き有難う御座います。お帰り迄の間はどうぞ当家の別邸でおくつろぎ下さいませ」
「あいよ。お嬢の今後の予定を聞いてからな。じゃ無いと護衛できないだろ? 取り敢えずセオさんにはこちらから連絡しておくさ」
「宜しくお願いします」
お嬢には使ってるものは大体教えてある。まぁお嬢自身がいい子だからだが、下手に洩らすようなら魔法をかけるつもりだ。3人のメイドも同じように考えていたが忠誠心がヤバイので大丈夫だろう。多分....。
最悪バレてもいいかなと最近は思っている。どうしようも無くなれば泉に引きこもるだけだ。他の国に行ってもいいかもしれない。大陸上半分が緊張状態なだけで下の方は国家で同盟を組んで対抗しているのも俺的にはいい。
『もっと遠くまで、大陸中を一度は見て回りたいな....世界は広いこの大陸以外にも行ってみたいし....』
アランに連絡を取り、セオさんに現在の状況と到着の報告をお願いする。まだこちらの状況を把握してないのでわかり次第また連絡するつもりだ。
馬車から降り別邸へと足を向ける。流石に領の屋敷程大きくはないが、作りは同じようで落ち着きのある洋館だ。メイド一同が整然と並び出迎えるさまは壮観だが、気分が良いものではない。こう言う所が一般庶民なんだろう。
「お帰りなさいませお嬢様。長旅でお疲れとは思いますが奥様がお待ちです。お客人の方、私、別邸で家令を任されておりますジョセフと申します。お見知り置きを」
そう言って別室へと通された。やはり、ここでも美人のメイドが多い。視線が引っ張られてしまうが、以前のようにユキからの反応がない事に気がつく。
『あれ?ユキ具合でも悪いのかな?』
少し心配になり様子を伺うが別段変った所はない。
『親離れも近いかな? 早かったな....まぁ考えることも多い旅になったんだろう。良いこととして捉えよう』
別室で紅茶を頂きながら待機しているとジョセフさんが呼びに来た。奥様が呼んでいるらしい。一度で通してしまえば楽なのにと思ったが言わない。貴族様は大変だから。
通された部屋にはお嬢に色気と歳を加えたお姉さんがいた。鑑定で見ると40前だったのでビックリだ。
「初めまして。ようこそおいで下さいました。また娘の護衛をして頂き感謝致します。私、ルドヴェル辺境伯当主の妻、ビーチェと申します」
何故かずっとユキに視線がいっている。
「初めまして、護衛のタカユキです。この子はユキで一緒に護衛を務めております」
「....ユキです....」
「....我慢出来ません....」
不穏な言葉と共に物凄い勢いでユキが連れていかれる。
「ミル! ヴェリーテの小さい頃の洋服があったでしょ! 持ってきて!」
「畏まりました奥様」
何処かにユキを連れて行き、ジョセフとお嬢と共に部屋の中に取り残された。
「奥様はヴェリーテお嬢様があまり女の子らしくしなかった為、着せ替えがしたいのかと....申し訳御座いません」
「タカユキさんすみません。前も同じような事があって....少し長くなるかもしれません」
「構いませんよ。ユキにはドレスなどを着せた事がなかったので良い経験になると思います」
そう言ってまた待機する事になった。
1時間程で落ち着いたのだろう、ユキが綺麗なドレスを着て部屋に入って来た。
「....似合う?....」
「綺麗だよ。今度何かアクセサリーでも作ってあげるさ。もっと綺麗になる筈だよ。奥様。このようなドレスを着せて頂きありがとう御座います」
近づいて頭を撫でながら言うとユキが嬉しそうに目を細めた。
『ユキは何でも似合うな〜今度ミレイに何か作らせようかな? 裁ちバサミやミシンも作った方がいいかな〜』
「いいえ、どうせもう着ない服ですお気になさらず。そのドレスは、ヴェリーテの婚約発表の時に使ったものなんですのよ。丁度サイズも合ってよかった....記念にとっておいたけどユキちゃんに似合うならあげてもいいわよねヴェリーテ?」
「大丈夫です。これでユキさんもいつでも婚約出来ますね」
親子でユキをからかっているのか、ユキの顔が真っ赤になっていた。初めての表情で俺も少し驚いたが、嬉しく思う。どんな奴がこの子を貰って行くのか....パパは簡単には婚約を許しませんよ!
「では改めて、護衛の件有難う御座いました。そして話は聞いているかと思いますが、王子を連れて帰ります。王都は比較的安全のように見えますが、貴族間ではドロドロに話が拗れてきているのがわかります。明日、ヴェリーテに伴って王城へと向かって下さい。
王子をそのまま連れて来るだけですので、心配は要らないと思いますが警戒だけは怠らぬようお願いします」
「城内で狙われる事もあるのですか?」
「無きにしもあらずと言った感じでしょうか....貴族の娘1人死んでもそこまで事を荒立てれない状況ではあります。その小さな火種で国が荒れる可能性があると理解していただければ....」
『人が王城内で死んで小さなか....まぁこんな世界だ仕方ない。十分注意だけはしておこう』
「明日はユキを奥様の護衛に付けますのでご安心下さい。帰りは辺境伯家一同でお帰りになりますか?」
「そのようになるかと。当主の判断次第では王都別邸を放棄します。それくらい今の状況は逼迫しているのですよ。私達も此処までおかしくなっているとは思っていませんでした。
貴族間での調整が行われていたのでしょうが、一気に動き出したと言う感じですね」
「そうですか....では詳しい内容は当主様が帰宅なさった後でしましょう。私は一度席を外しますので。ユキ。護衛を頼む」
「....わかった....」
そう言って席を立ち気配を確認後、領都に戻り辺境伯邸に向かう。
いつも通りに応接間に通され、セオさんが入って来た。
「座ってくれ。先程君の家令から連絡を受けた。こちらにわざわざ来たと言う事は状況が芳しくないようだな?」
「ええ、奥様に先程お話を聞きましたが、当主様の判断次第で王都別邸を放棄するとも言っていました。これで大体の状況がセオさんならわかるかと」
「....まず間違いなく内乱が起きるだろうな....一応この家には代々家訓と同じように、危険に対応した方針がある。その一つが別邸の放棄だ。
分散している要所を一カ所....まぁ領都に集約する事で守りやすく、損害が少ないようにする。そう当主が判断したのであれば王都近郊もしくは王都で内乱の兆しがあるのだろう」
「避ける事は出来ないのですか?」
「それはやってるだろう....ただ、王がどう動くかだな....戦力の話はジョエルから聞いた事はあるか?」
「いえ。ただ、召喚者を帝国が貴族派に付けているのであればまずいかと....」
「この国にも召喚者はいる。どれだけ投入してくるかはわからんが、そこでの兵力は問題ないだろう。ただSランク共が問題だ。
王の護衛には2人のSランクがついている。帝国がどの程度のSランクを投入するかで勝敗は変わるだろう。」
「帝国には元々どれくらいいるのですか?」
「2人だな。こちらは3人だ」
「ん?セオさん。確認なのですがSランクは9人ですよね?」
「ん?あぁ....冒険者ギルドに在籍しているのは確かに9人だ」
「?....ではそれ以外にもいると?」
「誰から聞いたかわからんが、冒険者ギルドに所属して無くても戦力評価Sランクの者はいるぞ。ギルドが認定したものではないが国が認定している。帝国とはほぼ同じ評価だから、戦力が分かりやすい」
「以前レイリさんが帝国には手を出せないと言っていましたが....」
「それの内容を詳しく聞いたか?」
「いえ」
「多分500年前の事だろう。あれは帝都のみと誓約がある筈だ。元々は4柱の1人ゼンジが妻の墓を帝都に作った事からきている。
現在もその誓約が生きているかは分からんがな。多分レイリに上手く使われたのだろう。レイリもSランクの1人だからな」
「....はぁ....」
「Sランクにも上下はある。レイリでも下に数えられるくらいだ。しかも奴はジョエルから離れん。国にも所属しておらんから、動員もできん」
「一体何人化け物がいるんですか?」
「性格な人数は分からん。ギルド所属も合わせると40〜50人と言ったところか。大陸で分散しているからまだいいが、一局集中すると国が簡単に傾く。グリンゼラはSランクが王族に呆れて出た後だったから尚更だろう。それくらい戦力としては恐い」
「そうですか....なら尚更貴族の粛清をした方がいいでしょうに」
「時期を逸したんだ。グリンゼラが無くなるとは思っていなかったのだろう。そろそろとは思っていたがこの状況ではと言った感じだろうな」
「面倒ですね」
「市民の感情も組まないと次はそちらで国が傾く。王家も大変だろうに....ただ、今回は王家内部の問題もあるだろうが....」
「なんですか? 聞いていませんが?」
「王城には行くだろう? 見てくるといい。すぐにわかる筈だ。警戒だけは怠るな」
「わかりましたが....最悪の場合も想定しますので、誰も入らない広い場所はありますか?」
「それならホールを開けておこうパーティーを開くための場所だ。大きさも問題無いだろう」
「ではそこに誰も立ち入らない様にお願いします。そろそろ戻りますね。色々教えて頂き有難う御座います」
「構わん。息子の家族を頼む」
屋敷から出て直ぐにジョエルさんの執務室に飛ぶ。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。この前、水の方は届けて頂きましたが?」
水の配達はセリアが行っている。偶には違う人とも喋りたいらしい。そんなやり取りをしているとレイリさんがキョロキョロしながら現れた。
「ユキならいませんよ。それより、この前騙しましたねレイリさん」
「なんの事でしょうか?」
「Sランクについてですよ。帝国に攻め込めない理由や、娼館襲撃についての報復....ん?」
「私は事実しか言っておりませんよ? 確認は大事ですね」
思い返してみると言葉足らずなだけで嘘は言っていなかった。俺が勝手にそう思い込んでただけだ。
「....すみません。暴言でしたね」
「いえいえ誤解が解けたのなら結構です。」
勝ち誇った様に見えるレイリさんが憎らしい。ただ、危ない刃物も渡したレイリさんには絶対勝てない。それがスキルレベルの差であろう。
「それよりも。ジョエルさんトライデント王家の内情について教えて下さい」
「王都は....余り良い状況では無かったんですね。そうですね....お家騒動があるんですよ。ただグリンゼラと立て続けですからね....帝国が元々糸を引いていたのかもしれませんね。
ではタカユキさん、第一王子と第二王子どちらが国王に相応しいと思いますか?」
「人柄とか知りませんので....順当に行けば第一王子では?」
「第一王子は素行に難がありまして、第二王子が有力です。後楯も貴族派と国王派で割れています。原因はそこですね。」
第一王子は貴族派の後楯が、第二王子は国王派の後楯が、そもそもの原因は2人の母親の家柄が関係している。
第一王妃が貴族派、第二王妃が国王派。第三、第四と王子はいるが、後の2人は妾腹らしく継承権は無いに等しい。2人の王女もいるがアリスティンへ嫁に出しているそうだ。
「そうですか....ジョエルさん....だいぶ面倒な依頼を斡旋しましたね。」
「しっかりと内容を確認しないからですよ。まぁ良い経験になったじゃ無いですか。これから気を付ければ問題無いですよ。」
いい笑顔で言ってくるが全然笑えない。ただ、自分の愚かしさがよくわかった。面倒面倒言って避けている様で避けれていないのが今回の発端だ。救いなのは自分のいる場所が戦火に巻き込まれる前に気付けた事だろう。
「話は変わりますが、効果が出てきている様ですね」
ジョエルさんはもとより、レイリさんは10代後半に見えるお肌のツヤだ。
「ええ、私もレイリも喜んでますよ。ただ魔力枯渇が苦痛ですが....魔力も上がり続けていますし、止まるまでは行いますよ。」
「それはよかった。それで....もし良ければお願いを聞いて頂けませんか?」
「....良いですよ?タカユキさんからは色々頂いていますから。」
「では、レイリさんを貸して頂けないでしょうか?」
「「......」」
ジョエルさんはニコニコだがレイリさんからは殺気が飛んで来る。
「それは....どうしてですか?」
「戦闘技術を学ぶためです。毎日1時間で構いません。お願い出来ないのでしょうか?」
「それは....良いんですよもらってくれても。」
「旦那様!」
「冗談ですよ。折角若返っていってるのに嫁に行こうともしない貴方への当て付けです。1時間ぐらいでしたら問題無いでしょう。レイリできますか?」
「問題ありません。いつから始めますか?」
「明日からでお願いします。宜しくお願いします」
『レイリさんはたぶん嫁にはいかないだろう。ジョエルさんに仕えているのが本望って感じだし....」
殺気の弱まったレイリさんに戦闘訓練の内容を話し、王都の方に戻る。結構時間が経ってしまった。
元々居た別室にゲートで移動し歩いているメイドを捕まえる。お嬢の所に案内してもらうと、ユキと奥方と3人で紅茶を飲んで寛いでいた様だ。
「只今戻りました。当主様はまだお戻りになりませんか?」
「そうですね....少し遅いように感じますが....それよりも、そろそろお夕食の時間ですね。ダイニングの方へ参りましょう。」
当主より食事優先の奥様に連れられてダイニングの方へ足を運ぶ。ユキはまだドレスを着ているが、似合っているからいい。こんな感じで女の子らしい服装を前からさせればよかったと少しの後悔がつのる。
『あとは戦闘出来れば....ドレスで戦闘する必要はないな....』
ドレスアーマーなど一瞬考えたが、それなら普通の装備をさせた方が断然いい。下手に重くなったり動きづらくなったら致命的だ。
ダイニングは大きなテーブルとそれにかけられた純白のテーブルクロスが目を引く場所だった。光の加減も少し強めで、料理がよく見える様にしているのかもしれない。
席に着くと料理が運ばれて来たが、当主が来る前に食べてもいいのだろうか?
....バタッン....
「ただいま~!」
いきなり、セオさんを若くしたようなイケメンが扉を力いっぱい開け放った。
「ロイ! 行儀悪いでしょ!」
当主であっても奥様上位のようだ。奥様に怒られてすぐにシュンとなった姿が世の女性にはたまらないだろう。
「はい....ヴェリーテ! 無事に着いたんだね! よかったよかった」
「お父様おかえりなさいませ。一度席に着いてからお話致しましょう。」
娘にも弱いようで、いそいそと当主の席へと向かって行った。女性が強い家は怖いなと思いながら当主のロイさんに憐憫の眼差しをおくる。
「お父様。王都まで護衛してくださったタカユキさんとユキさんです。ギル叔父様は処断されました」
「そうか....タカユキ君、ユキちゃん。身内が面倒をかけたようだね....申し訳ない」
「セオさんから事情は伺っておりますので問題はありません。ここからは当主様も護衛対象に入りますので護衛を勤めさせて頂きます。後ほど二人護衛を追加しますのでお目通り願います。」
「あ~そんな取って付けたみたいに喋らなくていいよ~ロイでいいし~さっき見たでしょ? この家の中での私の立場なんてメイド長以下だよ....だから気にしないで。」
少し目が潤んでいるように見えるロイさんはとても優しげないい人だ。
「そうですか....ユキ~ロイさんが普通でいいってさ。いつもと同じ様に奥様達としゃべりなね~」
「....私はそうしてる。ヴェリとビーチェ....」
「そうか....仲がいいことで....」
『うん? ユキもこの家の女性のように強くなるのかな? もしかしたら尻に敷かれる....まぁ将来の夫君に任せよう』
そこからは食事を取りながら、どう言う経緯で依頼を受けたのか? ユキとの関係等色々聞かれた。ユキが奴隷だった事は初耳だったようで、かなり驚かれた。詳しくは話さなかったし深くは突っ込んで来なかったので助かった。あまり話すとユキの称号にまで飛び火しそうだ。
「ロイさん。今後の予定はどうなりそうですか?」
「それはねぇ....正直わからないんだよ。ただ、一週間以内に王都から出よう。何が起きるか分からない。貴族派の連中は自分の兵を多分近くまで来させてるっぽいんだよね。
それに対して王妃護衛のカシス君が少しお冠なんだよ....」
「カシスですか? その方はどのような....」
「Sランクの護衛だよ~王都では二人しか居ない。今日も王国の議会でキレてたね。貴族派連中も流石に顔を青くしていたよ」
「その場で切り捨てればいいのに....」
「そんなことしたら、国王派の貴族も離脱しちゃうよ。次は自分もかもとか思っちゃうし。国王派の貴族は善政をしている人ばかりだから、民からの信用もなくなっちゃうしね。難しいね~。結局は何か起こらないと対応に乗り出せないのが国側なんだよ。」
「そのための王子を連れての帰還ですか....」
「そう言うこと! だから明日から色々忙しくなるとは思うけど宜しくね!」
「わかりました」
食事と雑談が終了してから、アムスとアンチェを呼びに行く。準備は事前に出来ていたようですぐにロイさんと奥様に紹介した。奥様はアンチェに夢中で、ロイさんはアムスに夢中だ。
「君すごいね!獣人でも高位の出じゃないの?」
『どういうことだ?あの犬が高位だと? やっぱ扱いは最初に戻そう』
知らない事だったので、ロイさんに話しを聞くと。フルタイプの獣人はクルーガル獣王国では高位の家柄にしか生まれないらしい。そのため、アムスが高位の出であると思ったらしいのだ。
『ん、ない。絶対ない。こんなM男がそんなはずない。』
外交的にまずいかと思ったが、自分から今の家に居るんだ。問題ない。と考えて思考を放棄した。
『また厄介事に成らなければいいが....怖いから確認しておこう』
「アムス。お前貴族とかじゃないよな?」
「主よ。我は奴隷に落ちた身ぞ? 貴族の訳がなかろう」
何その言い回し。とか思ったが本人が否定しているのだから違うのだろう。まぁアンチェが悲しまなければそれでいいのだ。
ただ、現在アンチェは何処かに連れて行かれた。俺がこの屋敷に着いてからメリルを見ていない事に関係しているかもしれない。アンチェの安否が少し気がかりだが、一応挨拶関係も済ませたので今日は寝ることにする。
あてがわれた部屋に行くとユキがもう寝る準備をしていた。ただ、着ているものがおかしい。スケスケのネグリジェにエロいパンツだけだ。
「ユキどうしたそのかっこ?」
「ビーチェがくれた」
どもる感じが無くなってきているのは嬉しいが、奥様は何をくれちゃってんだろうか....
「そうか....寝やすそうか?」
「うん....タカ嫌い?」
「そんな事ないよ。まぁあまり肌は見せない方がいいかもな」
「そう....わかった」
結局そのまま一緒に寝た。もろにユキの体温が感じられて愚息が反応してしまう。本当に困った奴だ。風呂と違ったエロさは若い体には辛いものだ。




